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和田原瑞穂は、つくづく自分とは正反対の存在であると沢田綱吉は今正に黒板で数学の問題を解いている彼女を見てそう思った。

和田原瑞穂。彼女は正に「才色兼備」という言葉が似合っている。テストは毎回学年一位で、その点数もほとんど満点だ。間違えた問題もほとんど凡ミスで、難問にもひっかからない。現に、今彼女が解いている問題もどこかの高校の入試で実際に出された問題らしく、ほとんどの生徒が解けていないが彼女はチョークをとめることなくスラスラと模範解答を書いている。

次に、彼女は運動神経も抜群であり、おまけに体力もある。この前、男女合同で行ったシャトルランでは運動部の女子や男子もいるなか、かなりいいところまで残っていた。流石に、性別の壁はあったのか運動部の男子、それもサッカー部や野球部といった男子達には劣っていたものの。サッカーをやらせれば男子も抑えてゴールを決め。バスケをやらせれば素早いドリブルで相手を抜かし、シュートを決め。野球をやらせれば、ホームランを決め。とにかく、何をやらせても彼女はヒーローだった。自分がいるチームでも、彼女がいれば負けないといったらその凄さが少しは分かるだろうか。

そして、彼女は容姿も整っていた。彼女の髪は明るい茶色で、光の当たる角度によっては透き通るようにも見える。顔のパーツ、どれをとっても綺麗で、まるで人形のようだった。日本人形ではなく、西洋の人形のような。

更に、彼女は性格も明るく、大らかだったため、いつもクラスの中心だった。案外ノリがよい彼女は、クラスの皆からの無茶ぶりにも明るく答える。前も、分かる人には分かるのだろう、某バスケ漫画のキャラの技を真似ていた(そして、しっかり決めていた)。

彼女の父親も確か、どこかの会社の社長らしい。どこか、は言っていなかった為、本当のところは分からないが。並盛の中でも、高級住宅街と有名な場所の豪邸に暮らしているらしい。そこから通う彼女の姿を見たと、クラスの男子たちが話していた。




天は彼女に二物も三物も与えてしまったらしい。二物どころか、ひとつも持っていない自分に少しでも分けてほしいと切実に思う。

「さすが和田原だな、正解だ」

そんな考え事をしていたら、いつの間にか彼女は解答を書き終わっていた。もちろんそれは正解で、急いで何も書いていなかったノートに解答を写す。後で見るかはおいといて、だ。




難問を解いて見せたにも関わらず、彼女は微笑みすら見せなかった。



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