0ー1


_あの春。晴れて東大に合格した私は、初めての一人暮らしに、期待を膨らましていた。

あ、前の両親のことは大好きだったよ。君も知っているはずだよ。長月徹と、妻の綾子。私が物心ついた時には、もう両親は定食屋を経営していて、毎日忙しそうにしていた。意外と繁盛していたんだよ、2人の店。地域の人が結構来てたり、お父さん...今は他人だけど徹さんの前の職場の人が食べに来てたりしてて。私もよく手伝ってたなぁ、懐かしいや。

...そんな顔せんでも、ちゃんと話すから大丈夫だって。もう隠したりしないから。

2人は毎日忙しそうだったけど、本当に私のことを助けてくれた。模試の結果が伸び悩んだ時も、ストレスで痩せてしまった時も、思わず八つ当たりしちゃった時も。献身的に私をサポートしてくれた。本当に、感謝しきれないくらい。そんな2人だから、東大を志望したし、合格出来たと思う。それに、今だって我慢できてると思うんだ...はいはい、君がそんな表情しないの。


で、続きだけど。え、どうして東大を志望したのかって?...うーん、それは少しでも2人に恩返ししたかったからかなぁ。2人とも忙しかったから、少しでもお金稼いで楽にさせてあげたかったし。それに、日本最高峰の場で勉強できたら、夢実現にもっと近付くかなって。大学はあくまで、夢を実現するための通過点でしかないけど、その通過点をどう利用するかで、やっぱり実現できるか変わると思うんだよね。


で、さっきの話に戻すと。私は、当時東京から離れた県に住んでいたから、大学進学に至って引っ越す必要があったんだよね。そう、夢の一人暮らし!


あー、でもそれ話した時、徹さんが号泣し始めて本当にびっくりしたよ。「俺も瑞穂と一緒に暮らす!」って。店のこともあるのに、アンタはダメでしょってお母さんがなだめてくれたおかげでなんとかおさまったけど。

徹さん、今思い返せば結構な親バカだったなあ。1回、部活の男子の先輩が家まで送ってくれたんだけど、その時も号泣されたよ。「彼氏か、彼氏なのか?!」ってね。その先輩、確かに仲良かったけどお互い恋愛感情なんて全くなかったんだけどね。その先輩、好きな人いたみたいだし。









...あぁごめんごめん、最近なんか涙腺弱くなっちゃって。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -