お宅訪問
リクオside
『それじゃあ、また明日ね?』
「うん、また明日!」
僕はみのりちゃんが歩いて行くのを見ながら静かにため息を付いた。
まさかみのりちゃんが僕の好きなお菓子を聞いてくるなんて思わなかった。
誰かにあげるらしいけど、一体誰にあげるんだろう…?
…あの笑顔が、いつかは誰かのものになってしまう。
そう思うと、ズキンと胸が痛んだ。
―そんなの嫌だ。
あの優しげな笑顔が…
誰かのものになるなんて考えたくもない。
あの笑顔が僕だけに向けられればいいのに…―
誰かにこんな感情を抱くのは初めてで。
カナちゃんもみのりちゃんも好きだけど…
みのりちゃんの"好き"は"愛しい"と言う意味の"好き"だと気付いたのは何時だったか。
カナちゃんを身を呈して守り、守れない自分が嫌いだと自分に溢した彼女が愛しい。
でも、今はまだこの気持ちを伝えるべきではない。
僕はそう直感的に感じた。
だから、想いを伝えるべき時まで…
彼女を僕の手で守ろう。
僕はそう決意をし、帰路へついた。
どうか、もう彼女が傷付かないように…―
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