退けぬ想いの行く末
「尊ー、不霊夢ー。」
ある休日の昼下がり
草薙殿の店でアルバイト兼、現在留守番を任されている尊の元に一人の少女が手を振りながら駆け寄ってくる
「やあ、なまえ。」
『おお、なまえじゃないか。今日もキミは元気そうだな。』
「えへへ、尊と不霊夢もね。不霊夢は身体、もう何ともないの?」
『ああ、私は至って元気だ。気遣ってくれてありがとう、なまえ。』
「ううん、どういたしまして。」
そう言いながらなまえは私の頬の部分をつんつんとつついてくる
ボーマンとPlaymakerのデュエル後、消滅したと思っていた我々イグニスは何のバグか消滅を免れ、紆余曲折を経て戻ってくる事が出来た
突然戻ってきた私を見て尊は勿論Playmakerや彼が探し出してきたというAiも驚きを隠せずにいる中、彼等の仲間であるなまえはわんわんと泣きながら私に……もとい、尊のデュエルディスクへと泣きつく様子を見せる
そんななまえの姿に元々抱いていた愛らしいと思う気持ちが好意へと変わるのにさして時間が掛かる事はなく、私はAIでありながらなまえを好きになってしまった
しかし、この想いをなまえに告げた所で迷惑以外の何物でもないのは理解している
だからこの想いは私の胸の中だけに隠しておこうと思ったのだが…
「おー、なまえじゃん。遊びに来てたのか?」
「あ、おかえりAi。しかし本当に大きくなっちゃったねえ。」
「別に大きくなった訳じゃねえっつーの。まあでも、こっちの方が何かと便利だしな。」
そんな軽口を叩きながらAiは手荒になまえの頭を撫でる
……そう、AiはSOLtiSを使用しているのだが人間と同じようになまえへ触れる事が出来る彼に私の胸の内は曇天のように曇り続けているのだ
Aiがなまえを妹のように可愛がっているのはよく理解しているが、それでも私の心中は荒波のように穏やかではいられなかった
「さて、Ai達が戻ってきたから僕らも留守番は終わりだね、不霊夢。…不霊夢?」
『……尊、折り入って相談があるのだが…』
この相談をすれば尊に迷惑を掛けてしまうのは重々承知しているが、私にも後に退けない想いというものがある
申し訳ないと思いつつ、私は尊に向かって低身低頭、ある事を頼み込む為に頭を下げたのだった
退けぬ想いの行く末
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ことり様リクエストの不霊夢夢。 主人公が人間、Aiも出てくる不霊夢夢です。纏めきれなかった為、彼が抱いた羨望の理由に続きます。