花巻くん4 | ナノ


 松川がBチームのスタメンとして練習試合に出た。Aチームはほぼ3年生の実力者で埋まっており、Bには及川や岩泉など次世代レギュラーが顔を揃えていた。そこに松川が加わった。
レギュラーに選ばれない花巻は、いよいよ、部活を辞めることを考え始めていた。誤解なきように言っておくが、部活を辞めるという選択肢は、花巻にとっては最終手段だった。部活はやり通すもの。つらくても苦しくても、最後まで。レギュラーに選ばれようが選ばれなかろうが同じ。それが顔に似合わず花巻に染みついた部活根性で、それを曲げるのは、本当に、ありえないことだと思っていた。しかし、自分でも驚いたことに、松川が試合に出たことは、花巻にとってはかなりこたえた。
「花巻」
 練習後、松川が話しかけてきた。部室のロッカーで各々が着替えるなかで、よく会話するのは松川だから、おかしなことではない。けれども、今日はあまり話す気が起きなかった。
「なに」
 タオルで身体を拭うふりをしながら、目を背ける。どんなふうに振る舞えばいいのかがわからなかった。
「明日の練習後、飯行かね?」
「えーっと……」
 花巻は言い訳を探した。こんな気持ちで、行けるわけがない。
「明日はちょっと……」
「だめか。及川と岩泉も誘ってるんだけど。じゃあ、明日じゃなくてもいいや。また今度、誘うわ」
「…………わりーな」
 及川と岩泉、という言葉に、なおさら行けねーわ、と胸の中でひとりつぶやく。


 翌日、花巻は部活を休んだ。









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