花巻くん1 | ナノ

「聞いてないわ」
 花巻貴大は唸った。
 何を唸ることがあるかというと、他でもない、青葉城西高校バレーボール部のことである。
「あんなの、反則だろ」
 バレー部に入ることは、花巻にとっては高校に入学する前からほぼ確定事項だった。そのために青城に来たのだし、レベルの高いバレーができるのだとうずうずした。何より、バレーをやらなければ身体を持て余すに決まっている。
しかし。
「あんな、小学校から幼なじみです、みたいなの、ずるくない?」
「まあまあ。チームメイトでしょ」
「俺も、幼なじみのセッター作っとくんだったなぁ」
「ばーか」
 北川第一中学校と言えば、大会ではかなり名の知れた中学だ。花巻の代では、セッターが抜群に上手くて、相手のブロックはかなり翻弄されていたとか。確かエースの評価も低くなかった。

 及川徹と岩泉一。

 その2人が青城に来たのは、そんなに意外でもない。北川第一から青城に来る生徒は多いし、青城はそこそこバレーも強いから、自然な選択だろう。
「でもさ、なんていうか、たかが部活って雰囲気じゃないからさ、……ほら、オレって結構適当だから」
「でも、花巻結構上手いじゃん。その2人って、そんなにすごいの?」
「うーん」
 及川は言わずもがな、1年生ながら先輩や監督に意見し、その的確さに誰もが舌を巻いている。花巻もアドバイスをもらったことがあり、すごいやつだな、という感想を抱いた。
 気迫が違う。
 目指すところが違う。
 そういう印象を受けた。
 対して、岩泉はと言うと、身長にしてはスパイクのコントロールが素晴らしく良いし、パワーも申し分ない。なんなら、パワーでは負けている。
 ただ、レシーブは花巻の方がまだ出来ているという自信があった。
「まあ、うん。どうなのかな。セッターとの息の合ったコンビって意味では、オレは及ばないけどね」
 花巻と同じ中学だった生徒と共に昼食を取りながら、バレー部について愚痴る。
それが、ここ最近の花巻の昼休みの日課だった。









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