01 「お前とは付き合えない。」 そうきっぱりと断られてしまった、高二の冬。 正直いうと、バスケは好きじゃなかったし、選手みんな汗だくだし、ただなんとなくどこのマネージャーも空いてなかったからって言う理由でマネージャーをした。本当は野球部がやりたかったんだけど、今になってしまえばどこよりも熱くてどこよりもそばで見守りたいと考えてしまうほどバスケバカになっていた。それを教えてくれたのは、私の片思いの相手、笠松だった。 彼はいつも最後まで残って練習して、チームのために努力してきたのを私はいつも見ていた。最初は鍵はマネージャーが閉める約束だったから何時まで残るのよ、見たいドラマ始まるじゃないって思ってた。けど、だんだん彼がシュート率をあげていくたびに私は何故か嬉しくなった。今日は8本入った!とか今日は調子悪いのかな?とか。そばで見て、感じて、彼のことがどんどん気になっていった。 そんな中努力が実を結んだのか、試合に出るようになった。緊張で何度も押しつぶされそうになりながらも、彼は精一杯のことをコートでやって着々と階段を登っていった。しかし、そんな彼はインターハイの大事な場面でミスをしてしまった。その一つのミスは巻き返せず、そのまま先輩たちは引退した。先輩にとっては最後の試合で彼はやってしまったのである。もちろん彼のことを知ってる先輩たちは何も言わなかったけど、彼は自分自身を攻めてるみたいだった。 その後笠松は主将になった。監督に抗議したみたいだが、監督は決して首を縦にふらなかったらしい。笠松を主将にしたのには監督にも何か妙案があるみたいだ。 別に気づいたのはそんな時でもない、一緒に頑張ってきたからと言ってもたかがマネージャー、笠松の支えにも何にもなれなかった。チームで一番熱いし、自分の事が嫌いになったみたいに練習してるのを見てただけ。そう、見てただけ。私には何もできない。 「(お前とはのとはって私じゃなければ付き合うのかな)」 「じゃ、俺自主練あるから。じゃーな」 笠松はそう言って私の横を通り抜けて体育館へ向かう。 分かってた。彼が今大事なものはバスケだってことも。ただどうしても言いたかっただけなんだ。笠松が嫌いでも私は好きなんだって。笠松のバスケも笠松の事も笠松の全部が。だから、何もかも嫌いみたいに、自分を傷つけるみたいな練習見てられなかったんだって。それだけのことだった。だけど、私じゃそれは叶わないらしい。側で見てただけの私じゃ笠松を彼を好きにさせることは出来ないらしい。 「でも、それでもっ!私は笠松が好きだ、好きだ、好きだ、好きだぁぁあああああ!!」 「なっおまっ!!」 「別に付き合って欲しいとかじゃなくて、私は笠松のバスケも、笠松の笑顔も、シュート入れた時の密かにやってるガッツポーズも、授業中寝ないようにしてるんだけど寝ちゃってノートとってなくて慌てた時も、全部、全部好きなの!自分でも気付かないうちに目で追って、でも笠松、あの日から笠松っ……自分が嫌いみたいになって……だから、だからっ笠松がどんだけ自分を嫌いだろうが、私は…私は、笠松が好きだっ!…大好きなのっ!だからっ…私の好きな…人をっ…傷つけないでよっ!」 途中頭の中が真っ白になって何言ってるかわかんないし、なんか精一杯過ぎて涙出てきたし、笠松ひいたよね…でもちょっとスッキリかな? 「あーなんなんだよ。叫んだり、笑ったり、怒ったり。本当お前は!調子狂うぜ、全く。それにお前ストーカーかよ、散々恥ずかしいこと言って、しまいには泣いてるし…」 「……泣いてない」 「どの口が言ってんだよ」 「…この口」 「え?」 「だから、この口だってば!!」 そう叫ぶと1メートルくらい距離があった笠松がいつの間にか目の前にいて。顔をあげた私はやっぱり涙を流してた。 「嘘つくんじゃねーよ。」 そんな笠松は頭を左手で少しかいてから、私の左腕を持って自分の胸に引き寄せる。さっきまでかいてた左手は私の頭を優しくなでてて、引き寄せるのに使った右手は私の背中に回してゆっくりトントンという動作を繰り返している。一連の動作が頭と体で追いつかなくて時が止まったような感覚。 「俺だってお前のこと好きだっつーの。だけど、主将の俺が恋に足取られてたらまたあの二の舞になっちまうだろ?そんなことアイツらにも味わわせたくねーし、何よりもお前にもうカッコわりー姿見られたくねーんだよ。」 「かっこ悪くない。だってかっこ悪い笠松も好きだもん」 「ハッお前本当俺のこと好きな。後悔しても知らねーからな。」 「うん、後悔しないよ!笠松も、私も!」 「すげー自信だな、おい」 「あったり前でしょ、だって二人なら怖くないよ!それに足なんて取らせないし、今までは嫌われたら嫌だからって遠慮してたけど、今度からは練習きつく出来るもん!」 「おーそれは楽しみだな、練習。」 「……ねえ、冗談抜きで私幸男のこと、好き。」 「フッ俺も、俺も好きだ、名前」 彼は私を抱きしめながら響くような低い声でその言葉を言い放った。 急がば突っ切れ (やっと、くっついたんだね、二人とも!) (あ?なんでお前ら知ってんだよ) (あれだけ叫ばれてちゃ聞こえるし、なんせ体育館裏だもん、いやでも聞こえるよ、笠松) (くそうー、笠松に彼女が!俺には出来ないのに彼女が!しかも相手は俺の苗字だと!?) (森山は少し黙ってようか〜) (はい、黙ります! ) ────────────── 笠松事情その一 実は主人公ちゃんのことが好きな笠松先輩。だがしかし、キャプテンが恋の問題でウカウカしてられない、ましてやマネージャー、諦めよう。と言うことで、最初は断るという笠松先輩です。 笠松事情その二 笠松先輩が女の子平気!これは主人公ちゃんがマネージャーだからということを考慮してもらえたら嬉しいです。でも実は主人公ちゃんでも最初は「はい」だけだったっぽいです。 そんなものかな。これ読んでからまた読むとちょっと分かり易いんでないかと思います。うふふふ。 何はともあれ、お疲れ様でした。 3万hit、笠松 幸男、一つ目、終わり。 ← → back |