戦艦と海(インディとグレム)
2014/01/07 13:11

たまに、改めて思う。
俺は戦艦なんだなって。



「海は広いし、大きいよなぁ」
「あ?何ガキの歌みたいなこと言ってんだ?」

いつものように、ラウンジでの雑談。でもいつもみたいにエーサーはいない。

「なぁ、グレム。俺って、さ」

戦艦なんだよな。
そういうと、グレムはよりしらけたよいな表情を浮かべた。

「…どうした?さっきから」
「いや、たいしたことじゃあねぇよ。」

「…。それは、俺にとっては、だろ?」

「…。」
「言えよ。聞いてやるからさ。」


まったく、こいつには頭が上がらない。いざってなると、すげー勘が鋭いんだから。



「たまに、考えちまうんだよ。殉職についてさ。」

殉職。
俺にとっては、海の上で死ぬということ。

「海は広くて、大きいんだ。もし、そういう事になったらよ……見つからねぇ、だろ?普通は。」
「…まぁ、そうだろうな。」
「…つまり、俺は帰れない。二度と、陸に…いや、」

「エーサーの元に」
「っ!」
「…図星って顔だな。」
「お見通しだな、てめーには。」


そう、俺は死んだら、死体すらエーサーと再会できない。
海の底で、魚の餌になるだけ。


さみしーもんだ。
けど、戦艦なんてみんなそんなもの。
覚悟をして任務についている。



問題はそこじゃない。

俺が…
俺が、グレムにきいてほしいのは


「なぁ、グレム。」
「ん?」
「そうなったら、頼んだぜ?」
「…」
「エーサーが、俺の後追ったりしないように。悲しみに、沈まないように…そばに、いてやってくれよ。」


「どんだけエーサーに好かれてると思ってんだよ。自惚れてんな。」

グレムは呆れたように笑った。

「大丈夫だ。あいつはそんなに弱い奴じゃねーよ。」

そう、俺に言った。
俺は、確かにそうだな。そう思った。

「悪い。今のは忘れてくれ。」




「まぁ、あれだな。お前が沈んでるなんていったら、海をまるごと好きとか言い出すんじゃねーかな。」
「あ?はは、なんだよそれ」


海をボーッと眺めながら、俺達は笑った。
海はどこまでも広く、青かった。





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