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「マジきもいんだけど」

普段から童貞だオタクだと馬鹿にしていた弟に、通販で頼んだアダルトグッズの存在がバレてしまった。元はといえば、俺のせいなんだけど。

「つか、勝手に人の名前使ってバイブ買うとか最低じゃん」
「本名なんか使いたくないだろ」
「使われたくもねーよ」

バイブやらローターやら、興味はあっても実店舗で買うのは抵抗がある。通販にしても、自分の名前を出すのは恥ずかしかったのだ。だから、弟の名前で弟が学校の間に配達してもらうという手を使っていたのに。間が悪いことにたまたま家にいた弟に受け取られたそれはそのまま開封されてしまった。それで、今に至る。

まあ、俺が悪い。この段階では謝罪してできる限りの詫びをするつもりだった。まさか、弟の要求ができる限りを上回ってくるとは思っていなかったから。

「これ、俺がエロいもん買ってるみたいになってんだろ」
「あぁ、そうなるな」
「おかしいよな? 名前だけ使われてそんなんなってんの」
「だから、悪かったって……」
「だったらさ、兄貴のこと使わせろよ」



「あ……あっ、う」
『あんっ!あっあっ、らめ、イク!〜〜』

弟の部屋のベッド。俺は弟のモノを咥えてじゅぷじゅぷと出し入れに精を出し、弟はそんな俺を毛布で見えないようにしながら小さな画面に見入る。甘ったるい声はアニメだかゲームだかのものらしく、そんなもので抜ける気がしれない。だから童貞なんだよ、という言葉を飲み込んで女の甘い嬌声に合わせて舌を絡めると、弟のモノがびくりと跳ねる。毛布の中は息苦しくて、ただでさええずきそうなのを必死に我慢しながら喉奥で刺激すると、後頭部を押し付けられる。

「あっ、で、出る……!」

はえーよ。とももちろん言わない。物理的に言えないというのもあるけど。
どくどくと口の中に広がる青臭い液体を口に溜める。やりたくてやってるわけじゃないけど、中途半端に離すと顔にかかったりして最悪だからだ。一通り落ち着いたら口を離して、手探りで探したティッシュでそこを拭いてやりながら口の中のものも吐き出す。使用済みのティッシュをゴミ箱に詰めこんで、ようやく一息ついた。

「もういいから、帰れよ」

あれから俺は、完全に都合のいいオナホ扱いされている。賢者タイムなのか気だるそうに毛布をめくった弟は、そそくさと俺を身体から引き剥がして、そればかりか迷惑そうな顔を向けてくる。

「さすがにひどくね」
「キモいし出てけって」

唾でも吐かれんじゃないかってくらい嫌な目付きで睨まれ、俺はすごすごと引き下がる。こんなことってないだろう。虚しくて溜息が出る。

「なんだよその態度。黙っててやってんだから感謝してもいいとこだろ」
「悪かったって。いいよ、いつでも呼んでくれたら来るし帰れって言われたら帰りますよ」

口の中が生臭くて気持ち悪い。早く濯ぎたくてベッドから這い出る。情けなさにちょっとだけ泣きそうになるのを隠して背を向けると、弟はもう興味を失ったのかさっきまでアダルトアニメかなにかを垂れ流していたスマホをいじっている。

学校ではオタクということは隠しているらしい弟は、確かに見ただけではそんな風には見えない。特に高校に入ってからは意図的に派手に見せているらしく、そのことをからかってやると異常にキレる。そういうお年頃なのか。オタクだとかオクテだとか、むしろ微笑ましい気持ちで揶揄していたそれらは、弟の中で恨みとして蓄積されていたらしい。こんな形で発散されるのはどうかと思うけど、原因もきっかけも自分で蒔いた種だ。せめて弟が飽きるまで、罪滅ぼしにしては不健全な行為を自分から辞めるつもりはない。