やばい。
お気に入りのエロアニメも、女優が最高に可愛い動画も、全然頭に入ってこない。
昔から兄貴は憧れだった。かっこいいし、頭いいし、そこそこモテてたのも知ってるし。劣等感はあったけど、わりと尊敬してた。そんな兄貴が勝手に人の名前を使ってエロいもん買ってて、引いたというか、普通にびっくりした。悪びれてもないし、めちゃくちゃな交換条件にもあっさり乗ってくるし、その手慣れた感じにむしろ腹が立つ。

あの口に、俺のが触れて、中で出して、嫌そうな顔されて。柔らかさとかあったかさとか思い出しただけでまた勃ってくる。やばい。顔なんか見ながらしたら確実に一瞬なのがわかってるから取った措置が最低なのは気づいてるけど、こんな風に思っていることに気づかれるよりは数倍マシだ。
それだったら何にも感情のない性欲処理だと思わせてた方がまだいい。どうせ、好かれるとか嫌われるなんて次元に立てるわけもないんだから。



「なあ、次から玩具使いながらしていい?」

いつも通り呼び出して一通り終えたあと。
目に毒だと見ないようにしていた兄貴の突然の言葉に、俺は一瞬意味がわからなくて首を傾げてしまった。

「は?」
「どうせ見えてないしいいだろ。素面で男のもんただ咥えてるとか結構精神にクるんだからな」
「べつに、勝手にすれば」

なに、使いながらって。なにすんだよ。
聞きたいけど根掘り葉掘り聞くのもなんかかっこわるくて、わかってる風に聞き流す。ばくばく跳ねる心臓を隠しながら。

「てか、次とかなに? ノリノリなわけ?」
「いや、終わりなら終わりでいいんだけどさ。俺も嫌と思って続けるよりは楽しむ努力をしようかなって」

ポジティブかよ。それだけじゃなく、する度に上手くなってるし後処理の手際もよくなってくし、全体的に器用に上手くこなし過ぎだと思う。なんなんだよ。

ふらふらと出て行った兄貴を見ないように適当に開いたページを見ながらふと気づく。俺のを口でしながら楽しむ努力をする兄貴、なんてものに、俺の理性は耐えられるのだろうかということに。