ねぇ貴方の名前は?じっと夜空を見上げていたおしとやかな感じの彼女ではなく、実に面白そうに楽しそうに聞いてくる彼女。少しばかり偏見していたようだ。

「僕…は舜生。李舜生(リ・シェンシュン)といいます、蒼…さん」

「私のことなんて好きなように呼んでいいから。…舜生くんかぁ、前もここで星を見てたでしょ。星、好きなの?」

こて、と頭を傾げた。

「は い…、星を見ていると穏やかな気持ちになれて……」

そう、いやなこと全て忘れて穏やかな気持ちになれる。癒される。

「そうだよね、お星様を見てると静かな気持ちになって癒されるよね。…なんて偉そうなこと言ってるけどほんとは私、癒される綺麗だなぁーって思ったのは最近なんだけどね」

てへ、首をすくめて眉を少しよせた。星を掴もうかとするように手を伸ばして天を仰ぐ彼女の姿は少し儚げ。

「おっきくなってからは星なんて全然見なかったのに、最近になってふとした瞬間見たら「あ、星綺麗…」みたいな感じになって」

ま、私って単純だよね、そういって笑う。笑っているけれど、そのどこか寂しげな表情に疑問を抱いた自分がいた。たとえばそう、寂しくなるようなこんな表情をさせるようなことが彼女に起こって星を見る機会ができた…とか。こんなことあ考えすぎなのだろうけど。二回目の出逢いというのは運命的に思えて近づいたように感じるけれど、確かに自分の目の前には越えられない一線があって、それ以上関わるな踏み込むなと恐れる自分と相対するように一歩踏み出そうとする片足。

なんでそんな表情を浮かべなきゃいけないのか、なにかあったんですか?当たり障りなくちょうどいい具合に聞けばいいだけなのに、言葉が出ない、それができない。

「あ、そろそろ行かなくちゃ」

彼女は腕時計に目を向け、口早にそう言う。そして、「また、ね…」小さく手を振り駆けて行った。

夜風がざわざわざわめいた。……結局、踏み出すことはできなくて、星がきらきら瞬いた。

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