The infinite world | ナノ



きれいなそらを


 こんなにも綺麗な空を、見上げた時に何も思わないのだろうか。

あんなにも綺麗な月夜を、見上げた時に涙がでないのだろうか。

 あたりまえになっていく日々の中で、ふと立ち止まることはないのだろうか。

 全てを放り出したくなるような衝動と、全てを抱え込みたくなるような孤独感。

 ここに生きるもの達は、あたりまえをあたりまえと疑わず、ただその幸せをあたりまえと享受しながら、崩れようとしている世界を省みない。

 あたりまえがあたりまえに無い世界で、必死に生きていた自分達はなんなのだろうか。

「そらが、きれいだなぁ」

 僕には、そんな一言が、何より嬉しいというのに。

 手代木店長、と呼ばれた声で我に返る。古い付き合いらしいこの店員は、正直少し、目障りだ。

 忙しく、ただ黙って空を見て生きていくことが許されないこの世界は。空が汚れてきたとしても、きっと誰も気づきはしないのだろう。

...fin

prev / next

[ back ]









* top *


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -