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翌日、土曜日。
伊武と部活に行く約束していたので、少し早めに起きて準備した。
現在の時刻、7時半。
深司と約束した時間。
おはようと言うと、ぼんやりと私を見ていた。
『なあに見てんの?』
「今更なんだけど・・・ごめん。」
『はあ?何が・・・』
「右腕の傷。」
淡々と話す彼の言葉に、去年の記憶が過ぎった。
『・・・ああ、なんで謝るの?』
伊武は難しい表情で私を見て言った。
「半年前、リンチされそうになった俺達を助けただろ。」
『確かに助けた、だけどあれは気まぐれ、助けたくて助けたわけではない』
「・・・わかった、そういう事にしておく。・・・ったくめんどくさいなあ・・・。」
『深司ムカつくなー』
「ふーん、お前もな。」
ふわりと風が吹いた。
どうしても過ぎる時間が憎くて仕方ない。消えない時間はあるのに、止まる時間は無いのが、
本当に、憎い。
限られた時間で彼は気付いてくれるか。
私は、伝えれるか。
『気付かないのか。』
「何に、」
『・・・薄々気付いてるくせに・・・』
「・・・、何に気付いてるか言ってみたら?」
『言えるわけがない。』
「今言わなきゃならないの?」
『じゃあ、いつか言う。』
「ああ、・・・じゃあ俺もその時に言うよ。」
約束。
約束した。
ん?・・・なんのだろ・・・。
「っていうか、なんか気まずい。」
『そんなはっきりと言わないでよ。』
「っていうかなんの約束なんだろう。」
『前言撤回していい?やっぱり気まずい。』
「・・・同感。」
とある土曜日の朝のお話でした。
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