赤い糸 | ナノ


臨也said













突然だが、赤い糸が見えるようになった。






頭大丈夫とか聞くな。
本当なんだからな。
俺だって吃驚だよ、ある日目が覚めたら前日迄はそんなもの見えていなかったのに町中が赤い糸だらけだった。


初めは訳が解らなかったが道行くカップル達の小指と小指を繋ぐように繋がる光景を見て、俗に言う“赤い糸”かと勝手に解釈した。





「…気に入らないな」
「は?」



昼休み、弁当も食べないで昼寝してるシズちゃん(ちゃんと食べないからそんなに細いんだ)を睨みながらボソリと呟いた言葉を態々拾い上げた新羅が俺の顔を見る。


「前に話しただろ。赤い糸が見えるようになったって!」
「ん?あぁ…臨也、本当に頭おかしくなったんじゃないかなーってアレね」
「マジで見えるんだからねっ!?」
「あーハイハイ。で、赤い糸がどうしたって?」
「俺の指には結ばれて無いんだ!あのシズちゃんには結ばれてるのにだよっ!?」



シズちゃんがセルフ腕枕してる腕の二の腕に置いたもう片方の手、その小指に肌色が見えないくらいぐるぐるに巻かれた赤い糸が結ばれてる。

遠くに居るのか何なのか、その糸の先は誰か解らないけど確かにシズちゃんと繋がってる奴が居る。


あんな人間離れした奴を好いてる奴が居る?
物好きも居たもんだよ。


「あはは。静雄はさー、あの人間離れした怪力で離れていく人も居るだろうけど性格はとても素直だからさ。
人知れず惹かれる子が居ても不思議じゃないと思うなぁ。
その点、臨也は性格最悪だからブヘラッ!?」



何時もなら笑って流せる言葉も何だかむかついた。
顔面を殴られた事に新羅が文句を言っているが無視無視。
あぁ、気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない。
孤独な怪物じゃないシズちゃんなんてシズちゃんじゃない!

もしもこの見えている赤い糸が触れれるものなら今すぐにでもシズちゃんに結ばれてる赤い糸をちょん切ってやるのに!
残念ながら見るしか出来ない俺はイライラと赤い糸を睨み付けるしかなかった。





それから暫くしても依然として赤い糸は見えたままで、仕方ないから赤い糸観察も人間観察の一貫として行うことにした。


そこで気付いたのが結び方が複雑であればある程相手に思われているだろうと言う事。


新羅とセルティを例に挙げるなら普段は無駄に惚気る新羅に呆れたはしているものの、何だかんだで確り新羅の事を愛しているだろうセルティから伸びている赤い糸はゆったりと新羅の小指に巻き付いて、綺麗な形の蝶々結びになっている。


対して新羅からセルティに伸びる赤い糸は普段から頼んでもいないのにセルティへの愛を語る偏執的な面が表すとおり、彼女の小指をぐるぐる巻きにしても尚飽き足らないのかまるで枷の様に手首まで巻きついている。

結び目もより強い固執を表しているのかグチャグチャの団子結びだった。




「気持ち悪いよ新羅…」
「いきなり失礼だね君は」



俺の観察結果を新羅に報告してやるとやっぱり気持ち悪いぐらいに惚気話が始まったので取り敢えず貶しておいた。
そしてフと、この前見たシズちゃんの小指に絡まった赤い糸も中々に相手の固執具合を思わせる巻き付き方だったなと思い出し、もふもふと手作りのサンドウィッチを頬張っているシズちゃんに目を向けた。

何か腹立たしいから敢えてこの数日間シズちゃんを視界に入れないようにしてたんだが、見た瞬間、あまりの事態に驚いた俺は短く叫んで立ち上がった。


不思議そうにシズちゃんと新羅が俺をポカンと見上げて居るが、俺はシズちゃんに絡まる赤い糸に釘付けだった。




確か、数日前は小指の肌色が見えないほどぐるぐる巻きだった。
それが今じゃ、脚や胴、もう片方の腕や首にまで絡まり、正に雁字搦めといった状態だった。

どれだけシズちゃんに固執してるんだい!?
気持ち悪い!気に入らない!!



「有り得ないっ!!」
「あ?」
「君みたいな怪物が誰かに愛されるなんてあってはならない事なんだよっ!?
君なんて一人ぼっちで泣いてればいーんだっっ!!」
「臨也くんよぉ…いきなり掴み掛かってきて言う台詞にしちゃぁ、随分失礼な物言いじゃねーかぁ?
…あー解った。俺、今、喧嘩売られたんだな?
望みどおり買ってやるよ臨也ぁ!!」




思いっきり振りかぶったシズちゃんの腕を避けて俺は脱兎の如く走り出した。
毎度お馴染みDEADorALIVEの追いかけっこ。
捕まったら間違いなくヤバイのに、それでもさっきより随分と気分が良くなった気がする。

あははは。
きっとシズちゃんはあんなに想われていながら、糸の先の人物の事を知らない。
だから愛に飢えてる。それで良い。
人並みの愛を知って牙の俺た怪物なんて興味無い。
シズちゃんはそのまま、俺を殺そうとずっとずっと俺を追いかけてればいいんだっ!!



「待ちやがれ臨也ぁあぁぁ!!」
「この状況で待てって言われて待つお馬鹿さんなんて居ないよ〜〜!!」








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