流動的日常


1.流動的日常


出番多すぎ問題


「カーミング到着しました」


今日も今日とて暴れまわっている敵事件の解決のためにヒーロー活動を行っているわけです。


「銀行員を3名を含め15人が人質に、敵は5名。かなり興奮状態で我々では対処できず…」

「俺もさすがに5人いっぺんはムリだった、下っ端2人は洗脳下にあるが声が届かないことには動かせない」

「なるほどねぇ、」

「現場も連チャンで悪い」


「いや、いいさ。それがヒーローだからな」


個性:沈静

周囲の喧騒を無くすだけでなく感情にも作用する。


「1分後開始、念のためビル全域を範囲にする。突入したら作用することを忘れないように。敵意は持つな。使命をもってくれ、

 ー 凪 げ 」


 * 


「悠揚 凪

 ここに、個性使用許可す。
 プロヒーローとして精進しろよ」


「アングラですが名を馳せますよ」


雄英高校を卒業して6年目の冬

個性を使用した犯罪は後を絶たず、ヒーロー飽和状態である中でも俺の個性はすこぶる需要が高い。

所属する事務所は対敵が主な場合が多いが俺は戦闘要員じゃない、できなくはないけど専ら後方支援。


「悠揚、今日もはしごだったんだって?お疲れ」

「5件なんでましな方ですよ、移動に時間がかかるのはどうにかしたいですね」

「あいかわらずクールだねぇ」


事務所に帰還すると同僚からの労いの言葉。

プロヒーローとして活動しているが個性が派手じゃない上に特殊なためアングラ系ヒーローとしてお仕事いただいてます。

沈静の個性は敵を大人しくさせるという点で活躍する。昨日も銀行強盗の立てこもりを解決した。

救助においても要救護者の気持ちを落ち着かせパニックを引き起こさないようにできる。
最近ではカウンセリングも仕事として入ってきている。


「お前に雄英から」

「なんすかこれ、同窓会とか?」


雄英からの郵便物が所属する事務所に届いた。


《悠揚凪様

 日々の数多くのご活躍が耳に届いております》


なんだ、同窓会じゃないのか…


《…つきましては雄英高校の教員として教鞭をふるっていただきたく願います。

また、将来に悩む生徒たちのカウンセリングも…》


まさかの雄英の教師になれと?
おれ、教員免許持ってねぇ…


PRRRRRRR


「はい、レギュラーヒーロー事務所、カーミングが承ります」

『やあ!悠揚くん!雄英高校のみんな大好き根津校長だよ!』

「…まさか、」

『手紙は読んだかい?さっそくそれについてお話したいんだ!』

「未熟者の自分は生徒に教えることなんて何もないですよ」

『そう言うと思ったよ!僕は君を雇う気満々だからまた直接あって話そう』

「っちょ、話きいt『じゃあね!』…」


マジかよ。


ピコン

《高校の同窓会しようぜ!<切島>》


マジかよ。


「所長、お話が…」


「根津校長の件だね。君がいなくなるのは惜しいが経験を積むには良いだろう。籍はそのままでいいからいっといで。僕は賛成だよ」


マジかよ。


 * 


根津校長直々の電話から約1週間、悩みに悩んで断ろうと思った。俺の個性が教育に役立つか、教える立場にあるのか、そもそも教員免許はとか色々考えることはあった。自慢じゃないが個性のお陰か常に心は穏やかだ。直接会うときのために冷静に考えて断ろう。

そう思っていたんだ。


「相澤くんだってアングラだが教員をしている。彼も君と同じくらいの年齢で教員になった。大丈夫、免許はカウンセリングの持ってるだろ?リカバリーガールの後継者と養護教諭をしてほしい。それでたまに演習に参加してみてはどうだい。我々は君を必要としているんだ」


とかなんとか言われたら断れなくなってしまった。

ヒーローとしての活動は制限されるが0になるわけじゃないし、カウンセリングだからまぁできなくはないと思ったんだ。

必要とされてるんだったら…悪い気はしないじゃん?


そんで、そのまま契約書にサインしちゃった。

急な話だけど来春から雄英か…かつての学舎で過ごした日々を思い出し早く皆に会いたくなった。


あ、勝手にサインしちゃった…

ま所長も良いって言ってたしいっか。


 * 


「「「「「「かんぱーーい!!」」」」」」


先日クラスメイトが企画した同窓会にはほとんどの級友が集まった。
切島と飯田、耳郎という異色のメンツが久々に現場が被りその際にみんなに会いたいなという話になったそうだ。友達思いの切島と真面目な飯田、それに面倒見のよい耳郎だ。この3人じゃなければすぐには集まれなかっただろう。感謝だ。


「切島、企画ありがとな。皆と会えて嬉しい」

「久しぶり悠揚。いいってことよ。俺も皆に会いたかったしな」

「同窓会ってよりは時期的に忘年会だけどな、楽しい」

「飯田は?」

「事件の事後処理が長引いて遅れるってさ」

「そうか、じゃあ後でお礼言えるな」


居酒屋の2階を貸切って始まった同窓会は早くも皆テンションが高い。


「久しぶり、轟。相変わらず派手にやってんな」

「久しぶりだな。お前はアングラだが噂は聞くぞ。検挙率でいったらほぼ100%らしいじゃねぇか」

「舞台が揃ったうえで俺がまとめてるだけだって」

「でたー無表情コンビ!!」


「芦戸酔ってんな?俺は無表情なんじゃなくて穏やかなの」

「俺だって感情はあるぞ?顔に出にくいだけだ」

「それを無表情って言うんだよ、轟」


酔った芦戸を女子のもとへ返すついでに耳郎にもお礼いっとこうかな。女子メンバーは華やかというか賑やかといか話はあっちへいきそっちへいきで収拾がついていない。


「耳郎、企画ありがと。皆に会いたいタイミングだったからすっげー嬉しい、ホントありがと」

「どういたしまして、全員はムリだったけどね」

「それでもすっげー嬉しいんだわ」

「悠揚ちゃんがいつもより穏やかというか興奮してるわね」

「ほんとー珍しい!」


芦戸を麗日にバトンタッチすると梅雨ちゃんから普段より興奮してると、いや、言い方よ。


「高校を思い出すきっかけがあってね、それで会いたい欲が強くなってたんだ」

「何々恋ー!?」

「優男で穏やか爽やかイケメンボーイに恋!?」

「あー、4年くらいフリーだぜ俺」

「こら、二人とも全部恋愛に絡めんじゃないよ」

「雄英で一番のモテ男だったんだよ!気になるぅ」

「そうそう!男女からモテてた!気になるぅ!!」

「悠揚くんならすーぐ彼女できそう!」

「私も付き合うなら悠揚ちゃんみたいな人がいいわ」


うん、女子のこの流れも変わってねぇな。

まぁ色々否定できない。男女問わず月に4回くらい告白されて峰田や上鳴にどつかれてたし、彼女ではないが後腐れない一度きりの女性関係も持ったこともある。

んで今はアイツは来るかなってどっかで期待してた。来なくて少し寂しいがそれでも皆に会えて嬉しいのは確かだ。


「ヤオモモも来れればなー」

「今海外でしょ?瀬呂と砂糖もだっけ」

「同盟国の災害支援だったはず、絶滅危惧種の保護のために口田も行ってるよ」


級友たちは方々で活躍してる。俺と同じガチアングラ勢はおらずメディアによく出てる。


そして話はこれからのことへ。

「轟は独立して大変だろ?」

「親父から離れる方が大変だったから今はそうでもねぇ」

「ボクはどうだと思う?」

「切島はどうすんだよ?人気は申し分ねぇだろ」

「実はもうすぐ独立すんだよ、B組の鉄哲と一緒にな」

「お前らとことん気が合うなー俺は耳郎の言った通りになりそーでこえーよ」

「ボクはどうだと思う?」

「万年相棒ってやつ?あたしは独立せずにこのまま音楽もやりたいな」

「上鳴はバラエティーいい感じじゃん?あたしも最近はタレントっぽいの多いー」

「ボクはどうだと思う?」

「青山ちゃんどうなの?」

「秘密さ!」

「悠揚ちゃんは?」

「来年度から雄英で働くことになったんだ」



「「「えーーー!雄英!!?!?!?」」」


「おいおい、そんなに驚くことか?」


俺自身雄英で働くなんて夢にも思ってなかったから驚くのもわかるがリアクションやっぱりでけぇな。


「主にカウンセリング。んで演習をちょろっと」

「なるほどねー、悠揚くんの個性だと荒れた生徒も手懐けられるしね!」

「懐かしいな、粗野な爆豪を手懐けた第1号!」

「悠揚の側は全く被害がないしおだやかだったね!」


爆豪か懐かしいな。


「俺の近くにいたらそうなるからな、皆もそうだろ?」


苦し紛れの言い訳、俺の表情ちゃんと穏やかだったか?


高校時代の"恋人"を思い出し切なくなった。


【流動的】
その時々の条件によって動きが変わるさま。
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