ダズンローズ

12月12日。


「…わりぃ」

「何がよ」

「色々」


夜部屋に訪れた勝くん。ドア先でいきなり謝罪するとは何事だ。何について謝っているのか見当がつかない。あ、私のシャインマスカット食べちゃったから?

違うな、あの犯人は芦戸さんと八百万さんだった。彼女たちが砂糖くんにお茶請けのフルーツタルトをお願いしたからだった…まぁ美味しかったしお詫びのフルーツ大量に貰ったから良しとしたんだった。


「SVOCちゃんと使って」

「俺の性格が………短気で怒ったり、無茶して困らせたりで…お前に迷惑かけて悪ィ」

「……ん、大丈夫?個性事故?それとも体調悪いの?早く寝なくていい?」

「ちっげーよ!!素直に謝罪しとるだけだわ!」


何が彼をそうさせたのだろう。謝罪なら最近ではあんまり珍しくないけど、去勢されたネコのように大人しく…しおらしい。


「今日、告白の日だったろ……」

「?…5月9日じゃなくて?」

「チッ…、ダズンローズ」

「1ダースのバラと告白するやつか……告白なら謝罪じゃない方が良かったわ」

「愛の言葉でも言えば良かったってか」

「ううん……こうしてギュってして、ありがとうの方が聞きたかった」

「………あんがとよ、傍で支えてくれて。いつかバラ持ってくるからまた頼む」

「ふふっ。お任せください。バラはなくても私は勝くんがいてくれればいいよ。外で強くなれるのは勝くんのおかげだから。ありがとー」


告白。

それは必ずしも愛を囁くものである必要はない。友人だったり、家族だったり、職場の人であったり。恋人に普段は言えない感謝の気持ちだったり。


「あ、あとセックス加減できんのも悪ィと思っとる。今日は2回だけにす「帰れッ!!」」


この告白は要らない。




 *




 *



数年後。


「で、この財布に入ってた写真はなに?」

「前に入れたヤツ」

「それはわかってる。特田さんに撮ってもらったの失くしたと思ってたんだけど?」

「……俺が取った」

「何で」

「……………と…、…き…………だから」

「声が小さい」

「………ツーショット貴重だし…、綺麗だったから」

「…最初から素直に言っていればあげたのに」

「くれ」

「遅い。罰として没収でーす」

「はぁッ?ざけんな!出張中のズリネタなんだぞ!返しやがれ!」

「さいっっっっってぇ!!!!」


やっぱり要らない告白もついてきた。

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