日に焼けた

ハイツアライアンス、女子風呂。

「鼻が痛ーい!!」

「やっば、フェイスペイントの日焼けとか…」

「私もコスチューム焼けしてしまいましたわ」


真夏の暑さは過ぎたけれど、強い日差しは照り続いている。そこで起こる女子たちの悩みは、屋外活動では避けては通れない日焼けだ。

特に顔の日焼けは、プロになり日常生活に大きな支障を与えかねない。

あれ?あの人目のまわりは焼けてないけど…ヒーローのマスクか!てな感じでね。身バレ必至じゃん。


「葉隠は別として、麗日と環心の日焼けがないのは何故だ!!?」

「へ?うちも手首とか焼けとるよ!顔も焼けとるんよなぁ〜」

「私は単純に露出してないからね」


私のコスチュームは露出がほとんどない。真っ黒だから夏は暑いけど、そのおかげか日焼けはせずに済んだ。

+αで日焼け止めを塗ってる。アイマスク焼けも帽子がしっかりと仕事してくれたみたいで大丈夫だ。


「ホント、ムカつくくらい白い」

「環心さんは元から白いですからね」

「個人的に八百万さんの日焼けが芸術的ですごく気になるんだよね」

「わかる!ジローちゃんのも可愛いよ!」


八百万さんのコスチュームはヘソ下まで前面は露出しているので独特な日焼けをしていて、入浴の際は彼女の身体に目が行ってしまう。イヤらしい意味はなくてね!


「お湯がしみるよ〜」

「あがりましたら、保湿クリームを塗りましょう。オススメのがありますのでそちらを使ってみてくださいな」

「ありがとー、う”ーやっぱり鼻が〜」

「私もマスクの所だけ線が入ってしまったわ。仕方がないとはいえ恥ずかしいわね」


ヒーローの数だけ日焼けの悩みがある。葉隠さんも見えないだけで、焼けているらしい。彼女こそ炎天下の活動は一番の被害者だ。


「男子って日焼け気にしないのかなー?アイマスクしてるヤツとか気になんないのかなぁ??」

「切島は日焼けは漢の勲章とか言い出しそう」

「切島ちゃんも日焼けしたら…私と同じように線がくっきり入っちゃうんじゃないかしら?」


女子は日焼け問題に対してかなり敏感に反応しているけれど、男子は無頓着な人が多そうだな…というのが私たちの見解。


 *


「わぉ、勝くんもやっぱり焼けてるねぇ。光己さん譲りの白いお肌がぁ…もったいない。赤くなってるけど痛くないの?」

「ほっときゃすぐに治まる」


勝くんもコスチュームにアイマスクがあるため目元に日焼けの跡。腕や背中も割りとわかる。

八百万さんにもらった保湿クリームを勝くんに塗ってあげようとするけれど、汗の中にグリセリンが分泌されているから不要とのこと。


「もう寝たいから離して」

「もーちょい充電させろ」

「暑いからヤダ」

「冷房下げれば良いだけだろーが」


ちなみに今の体勢は、ベッドを背もたれに胡座して座る彼に抱えられている状態。

部屋の温度を26度に設定した彼は、少しずつ接する面積を増やしていく。さっきまで少ししか触れていなかった背中に思いっきり体重をかけてくる。

お腹にまわる腕は前に見た時よりも全体的に焼けている気がする。上腕部分は言わずもがななんだけどね。

もともと筋肉質で男らしい腕が、陰影がつくせいか更に男らしく…雄って感じがしてかっこいい。ズルいかっこよさだ。私の腕に重ねられた太さも色も体温も違う腕。彼だから似合うんだろう。


「露出がないコスで良かった」

「でも焼けてンぞ」

「え、どこ」

「ここ。少し赤ぇ」


そうやって触れたのは首の部分。今日はいつもと違うハイネックのインナーだったからか焼けてしまったようだ。お風呂の時には気づかなかったな。


「お前が日焼けしとンの初めて見たわ」

「日焼けしたら黒くはならないんだけど、赤くなっちゃって痛いんだ。だからあらかじめ焼けないように心がけてる」

「……ポニーテールのクリーム塗っとくか?」

「そうする」


クリームを塗るために髪の毛を結ぶ。


スンスン。


「かがないでよ、気持ち悪い」

「おめーが自分で首出すのなんて珍しいからな」

「いや、だからやめなさいって」

「言ったろ、今は充電時間だ」


首筋に鼻を寄せて匂いを嗅ぐ姿は犬のよう。首を触られること自体は苦手ではないんだけど、吐息がかかり、尚且つ後ろからだからいつもより感覚は鋭くなっている。

クリームを塗ろうにも手が届かないところに片付けて取れない。ホールドされて身動きも取れない。そんなところでヒーロー科の本質出してこなくて良いのに。

勝くんからは幸せホルモンであるドーパミンが視えるので、呆れながらもこの状態を維持する。

この幸せ気分を害してしまったら後の仕打ちが怖いから、満足するまでさせてあげるのが良いと知ったのは最近のこと。


「ッ?!優しくしてるからって調子に乗らない!」

「目の前にあるのが悪ィ」

「はーなーし、てっ!」

「日焼けは舐めれば治る」

「治らないから!バッカじゃないの!」


耳の下ら辺に感じた温い吐息と柔らかい何か。何かなんて視なくても勝くんの舌ということは解っているんだけどねっ!

赤くなった日焼けが舐めて治るなんて事例聞いたこと無いし、ムラムラしたの隠せてないんですけど?

下らない嘘をついてもすぐわかるんだから…ッ。


「日焼けあと…いいな」


普段は隠された首筋と、これまた珍しい日焼けの跡。今日だけで非日常の事象2つもあるからね。そりゃ興奮しちゃう、よねェ……?


「じゃなくて、変態ッ!!ほんっと、何で興奮してるの?!…っ、ん、離して!」


勝くんは変態だと思っていたけど、首を一周して唾液でチョーカーを作るかのように舐める様はド変態だと思う。次いでと言わんばかりに吸い付いてくるし、肩も噛んできた。


「シてぇ…」

「しない!」


とは言ってみたものの、お尻に当たる硬いモノをどうやって治めるのが最善か…というのを知っているから、結局は彼とエッチなことするんだ。

今度サポート科に絶対に焼けない日焼け止め作ってもらおう。理由は色々あれど、ヒーロー達もきっと日焼けに困っているだろうから売れるんじゃないかな。


「今度海連れってってやンよ。ビキニ着ろよ、ビキニ……黒な」


後ろを振り替えると、ニヤリと口角を上げた悪魔がいた。新たな性癖を開花させてしまった代償はあまりにも大きい。

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