19時、地上100メートル。
「今回もずいぶんとお洒落な所ね」
「フツーだろ」
地上100メートル、24階の絶景レストランから見える夜景はとても綺麗だ。
天井まで大きな窓の向こうには、蒼く凛と佇むスカイツリー。まばゆい夜景を見下ろすムーディな空間は勝くんが予約してくれた。
彼が予約してくれるところは毎回お洒落で、個室があってハイグレードなお店だ。そっちの方がヒーローのプライベートに干渉しないように洗練されているからね。
女性が好きそうなフレンチ。ここのはガチガチなのじゃなくてフランクなフレンチだ。
「いつもありがとう」
デートに関しては妥協を一切見せずプランニングしたがる。向かい側に座る彼に、素直にお礼を伝えてみると満更でもなさそうだ。
「誕生日……ちゃんと祝えてなかっただろ」
「え?」
ヒーローだから仕事が忙しくてプライベートな時間は中々とれないというのは理解している。敵や救いの声は待ってはくれない。
誕生日といっても2ヶ月も前だ。誕生日の1週間後くらいに花を持っていきなり家を訪ねてきたのは記憶に新しい。
忙しい時間を縫って会いに来てくれた。しかもお祝いのお花を持って。それだけでとっても嬉しかったのに。
「そういえば、案外ロマンチストだったもんね」
「不満かよ」
「いえいえ。世間が持つ、勝くんへの印象とのギャップが果てしないからさ」
俺様、暴君、粗野。ネガティブなイメージが強い彼だけど恋愛に関してはこうもロマンチストだとは…………腐女子以外考えつくまい。
というのも私たちは恋人同士であることを公にしていない。まぁ私はフリーのサイドキックとして活動しているから世間の関心はそんなに高くない。コスチュームだって口許しか見えないもんね。
でも彼はトップ10に入るヒーローだ。その整った容姿と筋肉質な身体、強い個性のヒーロー。口は悪いけど人気が出ないわけがない。
その彼は女の影が無さすぎてゲイなんじゃないかと疑問を持たれている。
デク×爆心地
ショート×爆心地
烈怒頼雄斗×爆心地
などと非公式で盛り上がられている。なお本人は知らない。というか関心がなくて暇さえあれば筋トレしてるし。
彼女としてどうなの?そういうの気にならない?と思われるかもしれないが、表現の自由だし……彼が右側っていうのは私としては違和感しかないけどね!
えっと、話が逸れたけど……ドレスコードが必要なハイグレードなフレンチレストランに恋人を連れてくるなんてことは…私しか知らない。
そして恋人の誕生日を祝えなかったことを嘆き、いじらいくも花や食事で祝福してくれる。
誰もが羨むほどのロマンティックな空間と、その人物に胸がいっぱいになる。
「ふふ、勝くんありがとう。好きよ?」
「あ?もう酔ってんのか。弱ェんだからこれ以上のむなよ」
「違うわよ。スマートでメローな貴方に惚れ直しただけ」
「…そうかよ」
「嬉しいくせにー」
「視んな!この酔っぱらい」
失礼な。いくらお酒が弱いといってもグラス1杯しか飲んでいない。最初にオーダーした赤ワインはフルーティでライトなので飲みやすい。
アルコール度数でいったら、彼には物足りないものだろうけど。スペインの…テンプラニーニョ?だっけ。さっきソムリエさんが言っていたのは。
私がフルーツ好きというのも考慮してオーダーしてくれる辺り、本当にいじらしい。
好きな気持ちを伝えたら素直に喜んでいる彼。嬉んだったらそう言ってよ。
「ったく…酔っぱらいは質が悪ィ……」
「んーでも……お家でゆっくりして……勝くんの手料理とかでも嬉しいんだよ?」
「ヘラヘラしやがって…マジで外で酒飲むなよ」
大きなため息は幸せが逃げちゃうよ。ヘラヘラ、しているのかな。嬉しいんだから仕方がないよ。
ここのフレンチも良いけれど勝くんの料理も食べたいな。あ、辛すぎるのはムリだけど。
メインであるお肉を切る手が止まっている。
「恥ずかしがらなくていいじゃない。それとも勝くんも酔っちゃった?」
「だから視るなってんだよ……」
「視なくても視えるの。で、言ってくれないの?」
彼が素直になるタイミングはわからない。それでも今は彼の口から聞きたいな。
「…………俺も、す….…すぐに酔うわけねぇんだよ!!!クソがッ」
「ふふ、素直じゃないなーもー」
今日は素直に言ってくれる日じゃないみたい。
アルコールか羞恥かわからないけど頬が赤くなっている。食事は終わったけどそれじゃスタッフ達に赤い顔を見られちゃうからまだ出られないね。
「酔っ払いがッ」
「ふふっ」
その日は同じ建物にあるホテルを予約していたみたいでグデングデンになった私は彼に運ばれました。
そしてその後のデートは、カシスが香るワインのせいでハイグレードフレンチがお家で勝くんの手料理フルコースへ。
それもまた善きかな。
*
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「この状態で寝るとかアホかよ!っざけんな!」
起きたら襲われました。
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ひぃいいー!いつもありがとうございます!
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