理由はそれじゃなくても

ハイツアライアンス、自室。



「部屋戻る」

「はーい」



テスト期間前の最後の日曜日。


明日から4日間中間テストがあるわけだけど、彼は静かに勉強できるからと私の部屋に来る。


自室には切島くんが押し掛けてくるんだって。いつもは切島くんに教えているか身体を鍛えているかである。


今回もそうかと思ったが勉強が難しくなり彼なりにしっかりやらないと不味いと思ったらしい。


一緒にいても話しはしないし女子棟は比較的静かだ。今は八百万さん指導の勉強会をしているから尚更。


私は勉強は教えることができないけど、彼がわからない問題を目の前で解いてあげる。賢い彼はしばらく考えた後に理解して次に進む。



「じゃ、おやすみ」

「ん」



部屋を出ていく彼を横目に彼が使っていたクッションを手繰り寄せると温もりと甘いかおり。



「どうしたの?」



ドアの前で立ち止まりこちらを凝視している。聞き忘れたところでもあったのかな?あ、忘れ物?



「シオン」

「なぁに?」

「お礼」



近くに来たと思ったら腕を引き寄せられ、見えたのは彼の赤い瞳。軽く伏せたそれはとても色っぽい。



「てめ、キスするときくらい目閉じろや」

「それはこっちの台詞よ」



淡く笑ってあげれば不満と愛慕。



「目閉じてやるから、やり直しだ」

「仕方ないなぁ」



お礼の口実じゃないキスでも私は歓迎だよ。
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