仮免取得試験、一次選考。
身体に着けたターゲットに3つボールを当てられたら脱落。2人脱落させたら通過。配布されるボールは6つで無駄撃ちが出来ない個数だ。
ただ、3つ目のターゲットに当てた者のポイントになるので戦略的に攻めるのもあり。
「同校で潰し合いはない。チームアップが勝ち筋だ…!皆!あまり離れず一塊で動こう!」
「いずの意見に賛成。私たちのビハインドは他校よりも圧倒的に大きいわ」
「フザけろ、遠足じゃねぇんだよ」
「俺も大所帯じゃ却って力が発揮出来ねぇ」
団体行動の提案に最初から抜け出した勝くんと轟くん。勝くんに着いていった切島くんと上鳴の姿も見えなくなった……まぁ、彼らなら大丈夫だとは思うけど協調性に欠ける行動は誉められたものじゃないよな。
私たちが戦うのならなるべく拓けたところが良い。周りを見渡すのはもちろん、背中合わせで互いを守ることができるから。
『5』
「さっきのビハインドって何だよ!」
『4』
「僕たちは戦闘スタイル、弱点が割れてるんだ」
「そう。学年が下っていうのはもちろん体育祭で個性が割れてるから不利なの。それに雄英ブランドに嫉妬している人もいるわ」
『2』
「逆恨みじゃねぇーか!!」
「理由はどうであれ、全方位警戒!来るよ!」
『1』
「雄英潰しが……」
『START!』
眼前に待ち構えるは諸先輩方。何が"胸を借りるつもりで"よ。敵意むき出しで攻めてくるじゃないですか、真堂先輩?
[雄英ってだけで生意気なんだよ!]
[1年がイキってんじゃねぇ!雑魚!!]
ブチッ
「さっきからッうるっさいのよ!そこ!!」
アヘッドモード!!
「締まって行こう!」
『ピピッ通過者は控え室に移動してください』
「え!!?シオンちゃんクリア!?!」
「…………ごめ」
「「「「情報源ーー!!!!!」」」」
『早くも一人通過ぁ!!!通過した受験者は控え室に速やかに移動してくださいね〜この調子で早く終われぇ……』
『ピピッ早よせい』
全て点灯したターゲットから流れるクリアと早く移動しろの催促のアナウンス。
貴重な情報源なんだから皆をサポートするべきでしょう……何やってるのよ私は。だって……むちゃくちゃディスってくる人たちがいたからさ。
"アヘッドモード"は遠距離で視る技。半径6メートルまでだったら相手に触れずに色々視られるようになった。集中力はいるけどね。
ダガーナイフがボールに変わっただけだから、コントロールには何の心配はなかったけど…火事場のバカ力以上の成果が出てしまったな。
『2人目通過!なんと脱落者120名!1人で120人も脱落させて通過した!!いや〜ビックリして目が覚めました』
控え室に向かう途中に聞こえたアナウンス。120人もにボールを当てた…ボールをコントロールできる個性ってこと?でもそれなら120人も脱落させる大規模なことはできないはず。
後で会うだろうからちょっと視てみよう。
*
「1位通過の人っすね!俺が一番だと思ってたんすけど!凄いっスね!!」
「あー、夜嵐イナサくんだっけ」
「自分のこと知ってるんスか!神野の有名人に認知されてるとか激熱っっす!名前教えてください!」
「環心よ」
至極めんどくさい。切島くんと飯田くんを足して2乗した感じって言ってたけど…2乗どころじゃないよ。もう、なんか勢いが凄い。
「コスチュームも似ててお揃いっすね!たぶん肉倉先輩と同じ会社っす!」
「軍服と…帽子ね、あはは、はぁ」
似てると言われればそうだけど…肉倉?まだ他の合格者はいないから、マシンガンで話しかけてくる彼と話す以外選択肢を与えられていない。
「…夜嵐くんさ、何で雄英に来なかったの?個性の使い方も繊細かつ大胆で強いのに。雄英好きなんじゃないの?」
「俺の個性も知ってるんすね。行かなかったのは個人的な理由っす」
少しだけモヤモヤとイラつきを見せる彼はこの話題が好きではないらしい。誰かに対してかなり強い嫌悪感を持っている。
「…まぁ今が充実してるならいいと思うけど」
「充実してるっす!ところで環心さんは何でヒーローになろうと思ったんすか?俺は熱いモノが好きだからなりたいっす!」
控え室に入ってからアイマスクを外しているんだけど、この人の感情は手に取るようにわかる。
そしてこの質問も純粋な疑問で嘘偽りのない好奇心だ。毒気が抜かれるほどの素直さだな。
「ヒーローの弱り処になるためよ」
「弱り処?」
「そう。ヒーローを支えるヒーローになるの」
しつこいくらいに復唱する原点は変わらない。彼らの信じるヒーローというものを守るために。
「ますますファンになりました!!」
うるっさ……握手かと思って取られた手はひたすらに上下に振られる。いや、これで怪我したら洒落にならない。3人目の通過者のおかげで興味がそちらへ行き、なんとか解放されたけど……
試験はまだ始まったばかりだが悠長に言っていられない。枠は決まっているんだから。
戦線離脱した私にできることは、ここから彼らを視ることだけ。
*
*
「この試験は情報力がものを言う……だがうちには情報収集のプロがいる。プロヒーローにも劣らないアイツがいれば生徒たちは…」
「あっ!1位通過雄英の子じゃん!流石べた褒めなだけあるね〜」
「……アイツッ!」
余談ではあるが試験の後相澤先生に「情報源が消えてどうする!」とど突かれたのはまた別の話。
【得手】
巧みで、得意とすること。最も得意とするところ。
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