6月中旬、朝のHR。
「えー…そろそろ夏休みも近いが、勿論君らが30日間、1ヶ月休める道理はない」
「まさか…」
「夏休み、林間合宿やるぞ」
「「「「知ってたよ!やったー!!!」」」」
もうすぐ期末試験があるとの通達。つい先日中間テストが終わったと思ったらこれだ。
期末は演習試験もあるため気が抜けない。相澤先生が言ったように頭と身体を両方鍛えておく必要がある。
「「全く勉強してねー/なーい!!!」」
赤点の恐怖に怯える上鳴くんと潔すぎて立ち直っている芦戸さん。その他にも勉強に不安を覚える人は多いらしい。峰田くんが10位と好成績なのは意外だ。
全員で試験をクリアするためにいずが励ましているものの、中間最下位の彼には嫌みにしか聞こえないようだ。飯田くんも轟くんも励まし方下手くそだな。
「シオンちゃんって中間どうだった?」
「いつも通りだよ」
「マジかぁ…」
いつも通り満点、オールパーフェクトの1位。私は勉強に関しては何も心配はしていない。
「な!?環心!!俺に勉強教えてくれ!!!!」
入学初日の自己紹介で勉強は教えられないという話をしたにも関わらず、すがってくる彼はそんなに崖っぷちなんだろうか。
「私より八百万さんの方が適任だと思うんだけどなぁ……?」
「え?私ですか?」
大きく頷いて肯定してあげれば気分が高揚したときに感じるオーラ。人徳もあり可愛らしい性格をした彼女にはすぐ人が集まり勉強会を催すことが決まったらしい。最近結果が振るわないと嘆いていた彼女。これを機に突破口を見つけてほしいな。
私は何しよう。個性強化と走り込みかなぁ。
各々が対策を立てるなか、悠々と体力トレーニングに打ち込もうとする私は彼らの敵らしい。
*
同日、帰りHR。
「体育祭みたいな半端な結果は要らねぇ…ッ!」
ガンッと蹴りつけて帰路につく爆豪くんはクラスの注目の的だ。いずに対して怒りの感情を持ち合わせているのはいつもの事だけど、今回は煮えきらないことがあるらしく轟くんにも怒りは飛び火している。
「ッチ…」
私に対しては舌打ちだけとは珍しい。いつもであれば勝負だと意気込んでいるのに。
「ちょっと時間潰して帰ろっか」
「う、うん」
今教室を出たら間違いなく彼と同じ電車で帰宅することになる。ピリピリした状態だから彼が落ち着くまで接触しないのが吉だ。
「言い忘れていたが環心」
「へ?はい」
「実技試験までの個性使用は必要最低限にしろ」
「わかりました」
後ろのドアから顔だけを覗かせた先生からの忠告。探って試験の対策をするなってことね。ということは学校で個性強化トレーニングは止めた方がいいのか。日常生活は半径2.5mだけ視ればなんとかなるし職員室には近づかないようにしよう。
いよいよすることが走り込みだけになってきた。
*
期末、実技試験当日。
3日間の筆記試験は努力の甲斐あってみんな赤点は回避できたらしい。喜び方が尋常じゃない、頑張ったのねぇ。
あとは実技演習を残すのみだ。B組の拳藤さん曰く、例年仮想敵を倒すとの情報があったが……
「ちょっと待って、先生たちの人数多くない?」
「そうくるかー」
性格がネジ曲がりすぎて引きちぎれそうな相澤先生の考えることだ。校内での個性使用を制限されたのは筆記のテスト内容を視られないようにするだけじゃなくて、こういうことだったのか。
「残念!諸事情があって試験の内容を変更しちゃうのさ!」
可愛く言っても今は憎たらしいだけです、根津校長。
試験内容は生徒チームと教師との戦闘。ハンデはつけてくれるらしいが相手はプロだ。まともにやり合ったって勝つことは望み薄。
クリア条件は制限時間内にゲートから脱出するかハンドカフスを相手をかけること。配点基準はわからないが確実にクリアするなら前者だ。チームで協力すればできないことはない。壁を与え続けるが越えられない壁は準備しないのが雄英だ。
「緑谷、爆豪、そして環心がチームだ」
「「「!!?」」」
「そして相手は……」
「私がする…!」
…………越え、られるのか?
いずとだったら100%、協力して脱出を試みるだろう。爆豪くんとだったら言い合いながらも互いに実力は認めているんだから何とかするんだろう。でもいずと爆豪くんを合わせたら水と油。私は撹拌するミキサーにでもなれっていうの?
相手はあのNo.1ヒーローのオールマイト…今の私たちで勝てるのか。勝たなきゃいけないけどッ!無意識のうちに息をのみ恐怖に戦く。
「嫌でも協力しなきゃ勝てないわよ…」
「うん……」
「…誰が協力なんかすっかよ……ッ」
これは、本格的に越えられない壁かもしれない…。
【難壁】 よじ登るのが困難な岩壁。
_
_
_
実技試験は中だるみしそうなので原作の、全チーム同時スタートにしようかと。悲惨な試験になりそうね。
(他人事)
- 43 -
[*前] | [次#]
小説分岐
TOP