督励というもの

次の日、通常授業開始。


ヒーロー科といえど学生だ。午前中は一般教養を中心とした授業。最初だし中学の復習も含まれていて退屈だ。クラスを見渡してみても普通すぎてあっけなさでポカンとしている子が多い。

そして待ちに待ったヒーロー科特有のカリキュラムが始まる。ヒーローとしての土台を作る「ヒーロー基礎学」


「わーたーしーがー!普通にドアから来た!」


No.1ヒーローの登場に教室はざわめき、高揚がヒシヒシと伝わってくる。個性を使っていないにも関わらずだ。

シルバー時代のコスチュームと画風の違いで存在するだけでこの人は疲れる。


「さっそくだが今日はこれ!戦闘訓練!」


battleカードと共に告げられる授業内容。いきなりって感じはするけど、対人で己の実力や個性の使用限度を見るのだろう。

戦闘訓練に肯定的な反応を見せるのはごく僅か。大抵が喧嘩すらしたことがないから、今回は地の個性力で勝敗が決まりそうだ。


 * 


「コスチューム着たら気が引き締まるね!」

「うんうん!ヒーローって感じがする!」


女子は7人しかいないから更衣室は広々と使える。再試の関係でコスチューム会社に直接行って要望に沿ったものを頼んだが遅れることなく届いてよかった。しかし、


「八百万さん随分大胆ね…露出規定法ギリギリ」

「創造をするには肌を露出する必要がありますの。環心さんは…クロアチア軍を模したコスチュームですか?」

「あー確かにクロアチアっぽいね…再試の関係でサポート会社に直接行ったんだけど、最初はミリタリーでって言ったらサポート会社の人とミッドナイト先生が盛り上がっちゃってね…」


上下黒の軍服で露出は無し。ブーツも軽くて動きやすいが固さもある。そして八百万さんにクロアチアの軍服と認識させた要因の黒のマントと帽子。マントの裏地と縁取りは燕脂色でオリジナリティがある。そして個性発動に伴うリスクを軽減するためのアイマスクで視界を完全に遮る。


「要望ガン無視だよね」

「しかしとても似合っていますわ」


綺麗な微笑みを向けられ、裏表がなく素直な感想をもらう。ついでに自身のコスチュームに関して羞恥心は無いらしい。むしろもっと布面積を減らしていたそうなのだが法案上却下されたらしい。それが正しいんだけどね。

各々のコスチュームを身に纏い演習場へ急ぐ。女子だけで見せ合いっこしたが披露したいし男子のもみたいと、文字通り戦闘服に士気が上がる。


「自覚するのだ、今日から自分はヒーローなんだと!」


演習場で待ち構えるオールマイトの煽り文句も合間って気が引き締まっている。それと同時に抑えきれない興奮で口角が下がりきらない。

かくいう私もスタートラインに並んでいる事実に少なからず高揚し心拍数が上がる。

教室でも知らされたように戦闘訓練が始まる。新任らしくカンペを見ながらの進行。内容は敵チームとヒーローチームに分かれての屋内戦闘訓練。


「私は…Hチーム」

「環心ちゃん、同じチームだわ。蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで、よろしくね」

「梅雨ちゃんね、そんなに不安そうにしないで?初めは緊張するけど大丈夫よ」

「あら?私表情が顔に出にくい方なんだけれども、環心ちゃんにはわかるのね」

「個性の影響でね。常闇くんも女子二人とだからって遠慮しないでね?」

「…御意」


数分間アイスブレイクで自己紹介や互いの個性の把握。Hグループはペアでなくトリオ。そのためハンデとして私は屋内へ入らずサポートとなった。もう1つ肝なのは地図を一人しか見れないこと。


「目隠しはいつもするのかしら?」

「実践は見えてない方が楽かな」

「闇夜を見据えし第三の目を開眼するのか…」

「あながち間違いではないけれどね…」


緊張の第1試合はA対D…いずと爆豪くんじゃないか。最初から波乱の展開が予想できる。いずは萎縮しているがどこか固い意思を感じる。

それに対して爆豪くんはまだ静かだけれど、それは本来の寡黙さが垣間見えているから。数分後必ず、それは嘘だったかのように爆発する。


これは、彼らにとって避けられない成長への第一歩だ。




【督励】
仕事・任務を進めるため、監督して激励すること。
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