豪胆というもの

雄英文化祭、pm1:30。

ステージが終わって監視に加わったため、ミスコンはしっかりと見ることができなかった。でも個性でちょっと視てた。サボってる訳じゃないから許してください。

そして昼過ぎに先輩と合流。エリちゃんの笑顔も見れて、今もこの空間を楽しんでいるのがわかる。

ミリオ先輩は相変わらず声をかけられながら、いずは下準備ばっちりでアテンダントしながらの巡回。

中庭では経営科とサポート科がタイアップして個性を使って運営されているアトラクションもあるみたいだ。

あっちはタイムアタックねぇ。私の個性じゃ上位は狙えないかな。

食べ物もたくさんあっておいしい。ランチラッシュの味を知っていても美味しいと言わざるを得ない。

フルーツのクレープ生クリーム少なめでって言ったら、じゃあフルーツ多くしとくね!とのことで…先輩方流石。後でもう一回買いに行こう。


「ハーツさんはあんまり甘いの好きじゃないの?」

「甘いのはいっぱいは食べられないかなぁ」

「リンゴは?」

「リンゴ大好きよ。フルーツが好きなの。一緒ね」

「ふふっ!一緒!」


右手を引くエリちゃんからワクワクさんが溢れ出している。ワクワクしてキラキラちゃんだな。彼女の銀の髪とも相まって本当にキラキラちゃんだ。


「シオンっ来い!!」

「いった、私エリちゃんと回ってるんだけど」

「あれやっぞ!!」


突然グッと肩を後ろに引かれた。その正体は勝くんで何やらチャレンジするのに一人ではダメらしい。いや、切島くんとすればいいじゃないのよ。

エリちゃんがどんどん遠くなる。ちょっとミリオ先輩菩薩の顔やめなさい。いずも憐みの視線を向けないでよ。


「エリちゃん、あれが蜜月な男女の行楽だよ」

「いらんこと教えないでください!!」

「蜜月…」

「エリちゃん違うから!!」


幼児教育に向いてないよ、ミリオ先輩。

で、連れてこられたのは先ほど気になった経営科とサポート科の合作アトラクション。勝負しようとは言われたけど…これは、


「勝負じゃない?……ペアでするアトラクション」

「男女ペアだから俺じゃダメなんだよ。ヒーロー科向けコースはまだ誰もクリアしてないから一番にクリアしたいんだと」


クリアタイムが書かれた掲示板にはヒーロー科のところが空白になっていた。それだけ難しいのか単純に参加している人がいないのか。


「私じゃなくていいじゃん」

「環心〜、かっちゃんが環心以外の女子と仲良くチャレンジできると思うか?」

「…はぁ、ほんっっと問題児よね」

「がんばれっ!」


他人事だと思って上鳴くんすっごく楽しみやがって。他の女子と合わせられないことはないと思うんだけど、仲良くはできないだろうなぁ。このアトラクションは仲の良さも必要なの?


『さーて!続いてエントリー致しましたのはヒーロー科1年A組!ドラムかっこよかったぜ爆豪!!あーんど!新入生代表挨拶痺れたぜ環心!のお二人だ!』


プレゼント・マイクに負けず劣らずの実況を見せるのは経営科の3年生。代表挨拶の事すっかり忘れてた。


「私スカートなんだけど」

「あ?お前のきたねぇ下着見せんじゃねぇぞ」

「…切島くんとか轟くんだったら気づかいしてくれるんだけどなぁ。そうか、勝くんには無理か」

「あ"!!?おい司会!ジャージ貸せや!!」

『え?ああ、はいこちらをどうぞ!』


こういうことも想定してジャージはあらかじめ準備していたらしい。上はクラスのAバンドTシャツ。お礼を言ってジャージを受け取り着替える。

にしても、勝くんは少し煽ったら負けたくない精神が顔を出していい方向に動いてくれる。誠に扱いやすいぞ。


『準備も整ったということで改めてアトラクションの説明を!ヒーロー科のコースは絶対に二人で力を合わせないと…』


二人で力を合わせてクリアするものが多数。そしてヒーロー科は頭脳、筋力、体力、精神力、記憶力、リズム感、信頼関係がないとクリアできない仕様になっているらしい。

けど……、難しくない?

二人で動き回る的を打ち落として曲当てたり、仮想敵を倒して問題を見つけ出しポイントを稼いだり、二人でクライミングしたり空中ブランコ擬きしたり。

最後のはちょっと難しかったけど、ヒーロー科の先輩たちがこれをクリアできなかった?


「なんか…拍子抜け」

「ヤリ足らんわ」

「発言謹んでよ。一応ギャラリーいるんだから」


難なく終わった4種目。残り1種目。


『最後は互いの勇士を称え熱い抱擁とエアーキス!』

「環と波動さんも去年こういうのにチャレンジしたんだけど、最後がクリアできなかったんだよね!」

「先輩!そういうことは最初に言って下さい!」

「蜜月な男女の行楽…」

「かっちゃんが怒りで固まってる…」

「爆豪の顔がやべェ」


別に難しくはない。メンタルケアで勝くんとハグしてるから羞恥とかはないし、エアーキスも外国は挨拶でほっぺたにするのが普通で、i・アイランドでしてたから平気。

でもなぁ…それを観衆の面前でしろと?

隣の勝くんは”怒”で固まっている。この顔は本気で意味が分からないと思っている顔で、頭の中も思考停止状態で視えない。

っちょ、せめて少しくらいアクションしてくれません?


『さぁ…爆豪、環心ペア…これはギブアップか?』

「ンなわけないでしょ」

『おおっっっとこれはーー!!??!』


固まっている彼に軽いハグと両頬を合わせるだけのエアーキス。はい、終わり。

周りはザワザワとしているけれど、文化の違いだよ。B組の角取さんとは普通にしたことあるし。オールマイトともしたことあったかな。


『環心の大胆な行動により…ヒーロー科!今年初のクリアぁ!』

「……シオンちゃんの悪いところが、出た」

「思いっきりは良いよね!うん!」

「かっちゃん後でぶちギレ案件じゃね?」

「どーだろうな。つーかなんか…アイツ、やっぱ締まんねェ1位だな…」

「蜜月……」

「ありゃぁ蜜月だわ」


蜜月じゃない!挨拶だってば!

今期ヒーロー科優勝”爆豪&環心”




【豪胆】
肝が座っていること。大胆に物事を処する態度。
- 99 -
[*前] | [次#]

小説分岐

TOP
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -