仮免講習、後片付け。
Booooom!!!
「俺を後片付けに使うたァなァ…」
「適材適所」
氷山滑り台を派手に爆破する様は子どもたちの養育に良くない。それにただただ爆発させるだけで効率も良くない。
「んー………勝くんここにAPショットして」
「俺に指図すんな!」
「なんだかんだやってくれるのヤバ。マジ謝意」
「真面目なんですよねー、彼」
「クソスクエアにだけは言われたかねェ!!」
一撃で崩れていく氷に攻撃力の高さを改めて思い知る。根は真面目だし、考えも大人になった。
「おいクソガキ共、そこに並べ。俺の籠手で遊んだ奴土下座しろ」
でもやっぱり口は悪いんだよなぁ、うん。
*
仮免講習終了、帰り道。
「つか爆豪って黙ってればソコソコ良さ気?ちょっと黙ってみて?」
「うっせ黙ってろッ」
「元々は寡黙なんですよねー、彼」
確かに黙っていればソコソコ良さ気な勝くん。ひたすらに眉間にシワを寄せている今は怖いだけなんだけどね。
「マジ?てか雄英イケメン選り取り見取りじゃん?胸熱恋路直進系?」
「ムネアツコイジチョクシンケイ……???」
ケミィ先輩のケミィ語はよくわからない。そういえばマボロキ君の言葉も、彼の顔面が邪魔したのも合間って頭に入らなかったわ。
帰りのバスの近くにいたのは、士傑高校の先生たちとオールマイト、プレゼント・マイク。そして親バカ脳筋No.1ヒーロー…エンデヴァー。
彼らは情報共有のために連携していこうと話していたらしい。そりゃ連合が雄英以外の生徒に関わり始めたんだ。危機意識を持つのは当たり前だよね。
「久し振りだな、焦凍。ずいぶん変わった」
「うるせェよ」
「焦凍、お前は自慢の息子だ」
轟くんの頭を撫でようとするが払われた…どういう心境の変化なんだろう。かけた声が優しい。
「ならば俺も、お前が胸を張れるようなヒーローになろう…父はNo.1ヒーロー……もっとも偉大な男であると」
「……勝手にしろよ」
その言葉と姿がサーと被った。己の生き様を他に植え付ける瞳。何だかんだ否定しながらも轟くんの師匠はエンデヴァーだ。
一番近くて、複雑な存在。
拒絶をしているけれど、それは本気のものではない。どう対応すれば良いのかわからないって感じ。
この会場に着いたときちょっと気になることがあったの。それはエンデヴァーのパトス。オールマイトへ対して、轟くんに対して。No.1になった自分に対して。
何をやっているんだ…ってね。
でも、もう大丈夫そう。あの純粋単細胞の夜嵐くんだって、変わっていくエンデヴァーの姿を胸に刻んでいる。
「何なんだよ……アイツは」
「エンデヴァーは、endeavorだよ」
endeavorとは”努力”、エンデヴァーその人。
「そう…………かもな」
一歩、一歩。みんな進んでいる。
*
*
数日後、10月。
昼夜の寒暖差が増してきた頃、サー・ナイトアイの葬儀が行われた。相澤先生の引率のもとの参列だ。
私たちのインターンに関しては、敵連合の動きを鑑みて見合わせとなったらしい。
サーが亡き後、ナイトアイ事務所はセンチピーダーが引き継ぎバブルガールと二人でミリオ先輩の帰りを待つといっていた。
「最期のお別れだよね」
「何か声かけましたか?」
「……立派なヒーローになるって誓ったんだよね」
「僕も、笑って救えるヒーローになりますって」
悲しみは時間が癒してくれる。
「私も、彼の見た未来を紡ぐって誓いました」
火葬場から真っ直ぐと天に吸い込まれる煙。それぞれ立てた誓いは険しい道のりの果てにしか実現することができないものだろう。
寮に帰るバスの中でもみんなの悲しみと決意が入り交じったものが視えた。
時間が癒してくれるって思ったけど、その傷が薄れたとしても忘れちゃいけない。風化させちゃいけないんだ。
命の重さは全て等しく、全てが尊い。
極悪非道な敵も一応は命だ。彼らが信念にしていることは、納得はできないだろうけど。
「エリちゃんも…早く元気になってほしいな」
「まだ入院しとるんやろ?」
「精神的にもまだ不安定みたいよ」
「無理もないわ。でも、早く元気に笑う姿が見たいわね」
「いつまでも暗くちゃ救えるもんも救えねー!ここは気合い入れてアレやっとくか」
「切島くんは相変わらず勢いがすごい………」
「環も見習えって!今回ので自信ついたと思ったんだけどなー」
「人間エネルギーがないとダメなんだよ!知ってるでしょ?」
「じゃ!御唱和ください!!せーのッ」
『『『『Plus Ultra!!!』』』』
個性豊かだけど目指すものは同じ。
こちらも、確実に成長しました。
次回!友情パワー!ノーコン1号2号!
トラップカードオープン!
トゥインクリングをエスケープ!!
【前進】前へ進むこと。また、進歩すること。
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ごめんね青山くん!次は君は書くはず!
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