戦陣というもの

朝8時、警察署前。

私とサーの個性によって、死穢八歳會の申請のない地下通路があり、そこにエリちゃんがいることがわかった。

ベッドの上でうずくまって怯える日々。今の彼女には安心できる場所や、救いになる存在がいない。

「相手は仮にも今日まで生きてきた極道者…くれぐれも気を緩めずに各員の仕事を全うしてほしい!」


だから…私たちが彼女を救い出す。


「出動!」



 *


 *



8時30分、死穢八歳會前……決行。


「ハーツ、突入したら直ぐにアヘッドだ」

「この大人数の中で……」

「元気がないな…突入前だぞ」

「いえっさーッ」


四課の警官が呼び出しボタンを押し礼状を読み上げようと……キャプチャー…、あれ、玄関前に。

敵意!!?


「下がって!!」

「何なんですかァ…朝から大人数でぇ…」


中から扉ごと警察官まで殴り飛ばしたこいつはもう敵だッ。キャプチャーじゃなくてアヘッドモードにしていればコイツの敵意をもっと早く視ることができたのに。クソッ。

飛ばされた警察官はいずとイレイザーによって保護され、予定とは大幅に違うが一斉に突入する。

本拠地内は視た通りアホみたいに広い。そこにいたのは、これまた敵意満々で反発してくる下っ端。

極道者は仁義を重んじるものだと聞いていたのに、ここの連中からは、命乞いのような想い。

そんなに怯えて、社会民主主義の今日とは全く異なった形体に疑問を覚える。


「最短ルートこっちです!」

「次の角を左に、ここだ」


地下に繋がる隠し通路。あらかじめ知っておかなければ確実に逃げられていた。


「下から3人来ます!」

「……!!バブルガール!!」

「なァアんじゃてめエエエらアアア!!!」


下から来た輩はセンチピーダーとバブルガールによって取り押さえられる。


「行き止まりじゃねぇか!!」

「道合ってんだよな!?」

「俺見て来ます!!」


地下に続く階段を降りると直ぐに壁があり行く手を阻まれてしまう。アヘッドモードの時にそんなにカッカしないでよ。要らない感情まで視える。


「壁で塞いであるだけです!ただかなり厚い壁です」

「厚さ23センチ!烈怒とデクのパワーで壊せます!」

「来られたら困るって言ってるようなもんだ!」

「っしゃ!妨害できるつもりならめでてーな!」


この状況で単純なパワーでいったら二人が適任だ。硬化した拳とフルカウルの蹴りで容易く壊された壁。


「!!道が…」

「道がうねって変わっていく!幹部…ッ、入中の個性か!!?しかし規模が違うぞ!!」

「…かなりキツーくブーストしてたらありえへん話やない」


まずいな、突入からここまで大分戦力を分断されている。まだこれから幹部がいることを考えたら少しでも多くヒーローにいてほしいが、その望み空しくナイトアイ事務所の二人とも分断されてしまった。

これであらかじめ視ていた道はなくなったと考えていい。だから、この場で正確に道を把握できるのは私だけだ。

入り組んで迷宮と化した状況にみんなの不安と焦りが伝わってくる。特に天喰先輩は完全に負け腰でいつも以上に自信を喪失している。


「ああ、ダメだ…もう……」

「環!!お前は!サンイーターだ!!」

「この先の道は私が視ます!先輩は先に行ってください」

「任された!先に向かってます!!」


天喰先輩を鼓舞し、壁の概念が通じない彼はすり抜けてエリちゃんの元へと向かう。


「「「「!!?」」」」


いきなりグワンと地面が崩れて下の階へと落とされる。落下の高さはヒーローなら怪我をする高さじゃないが警察の何人かは受け身をとれていなかった。

アヘッドモードじゃなくても視える確実な悪意。そして殺意。ヤクザじゃなくて、完全に敵だ…やっぱり。


「おいおいおいおい、空から国家権力が…不思議なこともあるもんだ」


窃盗の窃野、結晶の宝生、食の多部。

めんどくさいのが来たな。またここで戦力を分散されるのは正直避けたい。この3人に有効な個性は、肉弾戦でダメージのお相殺が見込めるファットと切島くんだけど…


「俺が相手をします……プロがこの場にとどまっているこの状況がいけない。俺なら一人で三人完封できる!」


ミリオ先輩の鼓舞が効いたのか、さっきとはうって変わって自信と決意、そして覚悟が視える。

大丈夫、私たちは進もう。

道を滅茶苦茶にしていた入野は姿を見せない。個性で視ても常に動き続けるので意識して視なければ追うことができない。

クソっ、頭痛と吐き気が来た。範囲が広すぎて負担が思ったよりも大きい。


「入野がこっちに向かってますッ。また道を壊しに来るかもしれません」

「全員警戒しろよ!!」

「!!?イレイザー」

「言ったそばからッ!!!」


横からイレイザーのみを狙った攻撃。反応できないほどの奇襲だったから避けられなかったのは仕方ないがないけどもっ!?

入野は彼の個性で見られるのを嫌がって分裂させたようだが…


「ファットガムと烈怒が持っていかれた!」

「……進むぞっ」


クソ、突入から戦力の分断が止まらない。キャプチャで安否確認をしているが……辛うじて無事と言うところか。

ああっ、早く行かないと!


「ロックロック!!」

「シオンちゃん!??」


迫っていた壁が一気になくなり視界が拓けたと思ったらまたも分離されてしまう。私とロックロックだけ弾き出されたそこにも悪意…というよりは好奇心があって、また会ったね…と嫌な囁き。


「おい!!みんな無事か!?」

「敵れ「シーッ」グッ」

「シオンちゃんにはお薬あげますねー」


本当にコイツらふざけている。身体から力が抜けてあの時の記憶が蘇る。


「この人はどーでもいいですけど…シオンちゃんの"しんり"を欲しがっているので……一緒にゴクドーしましょう!」


巫山戯るな。




【戦陣】 戦いのための陣営。また、戦いの場所。
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