未詳というもの

翌日朝、インターン開始。


ヒーロースーツに着替えていよいよいずもインターンに参加する。

私は昨夜から捜査に協力しているから内容は把握している。指定敵団体死穢八斎會についてだ。


「死穢八斎會……?」

「昔でいうヤクザ。それの生き残りよ」


極道はヒーロー社会の到来によって摘発、解体が進み今や天然記念物と呼ばれるほどにその数は少ない。

現代まで生き残った団体は敵予備軍として監視されながら細々と活動をしている。

その中でも、死穢八斎會は小さいながらも若頭を筆頭に裏社会での流通でよく耳にするくらいには活発に動いていた。


「私とバブルガール、ハーツ。ミリオと緑谷の二手に分かれパトロール兼監視を行う。」

「「「「「はいっ!」」」」


 *


死穢八斎會総本部。


「ダメです。個性の妨害か何かで途中までしか見えないです。地下通路に続いているのは確認できるんですけど…天気も影響して……」


これ以上視てはいけないと制限される感覚を再び味わう。地下の道は入り組んでいるから初見では突破できない構造だ。それに加え小雨が降り、ノイズがかかって視えない。


「いつもより人の出入りがない」

「薬は確実なんですけどねぇ…」

「フム」


張り込みを始めて数時間。尻尾を掴むために個性を展開してキャプチャするけれど、これまでに得た情報以上のものは出てこない。


「え”!?…ミリオン…治崎と接触したらしいです…」

「は?」


 *


合流すると沈んだ様子の先輩といず。ヒーローがそんな思いつめた顔をしていたらダメでしょうが。

治崎との接触はイレギュラー過ぎた。サーの予知で見ることができていれば下手に怪しまれることもなかったのかもしれない。

だが、後の祭り。そこで戦闘にならなかっただけ今回はマシだと思うべきだ。


「怪我の功名というか新しい情報を得ましたよね!治崎には娘がいます!」

「娘…?」

「とても怯えていた。何もわからないけど…助けを求めてた」


その代わりに大きなシコリがいずを占領する。救けを求めてヒーローデクを頼ったのに、何もできなかった。そのもどかしさが、いずの迷いを更に助長した。


 *


週明け、教室。


「バクゴーどったのアレ」

「轟くんもボロボロだから仮免講習だねぇ」

「ひょーイケメン台無し!!」


補講組は顔に傷の手当てが施され全身ボロボロだ。ギャングオルカの指導は相当スパルタなのか…実力はある二人がこんな有り様とは恐ろしい。


「コソコソうっせーんだよ!!」

「別にコソコソしてないじゃん。自意識過剰め」

「なんつった、てめぇ。表出ろや」

「喧嘩して謹慎食らいたくないからパスで」


私の減らず口に言い返せなくなったのか押し黙る。その後ろにはインターンについての感想をみんなに聞かれているけど……上の空のいず。

これは良くない方向に思考が固まっちゃってるなぁ。

彼を気にしながら1日視ていたけど、ずっと治崎の娘のエリちゃんを気にかけている。オールマイトについてもずっと何かを考えていた。

そのせいで授業に身が入らずらしくないミスばっかりだ。相澤先生に、両立できなければ止めさせると注意されたが…いずは考えを改められるのか。


 *


放課後、職員室。


「あら〜ん、今度はシオンちゃん?私に会いに来たのかしら?」

「違います。相澤先生に用事があったんですけど…」

「普通にスルーしないでよ。わかってるわよ〜公欠のことでしょ?相澤くんから聞いているわ」


相澤先生に公欠の印鑑をもらうために足を運んだのだが、そこに先生はおらず代わりにミッドナイトが女王様スタイルで出迎える。

公欠というのも、さっきサーから数日間捜査に参加してくれとの連絡があった。しかも私だけ。普通はいずも一緒に行くはずだけど、ミリオ先輩すら今回はいないらしい。


「あなたの個性で捜査を進めたいんでしょうね」

「詳細については聞かされていないんですけど……まぁ、良くないことですよね」


何かしら面倒な捜査であることは間違いない。


 *


 *


翌日。

オールマイトから後継者のこと、相棒だったサー・ナイトアイとの分裂の原因を聞いてわからなくなったことが多かった。

依然スッキリしない事だらけだ。


「切島コラァ!お前の名前!!ネットニュースにヒーロー名!!のってるぞスゲェ!!!」

「梅雨ちゃん麗日ぁすごいよー名前出てる!!」


新米サイドキック。烈怒頼雄斗爆誕!初日から市民を背負い単独敵退治!!

リューキュウ事務所に新たな相棒。インターンで所属した2人!ルックスもキュート!

上鳴くんと芦戸さんがかざしたスマホにはインターン組が活躍したニュースが載っていた。

僕たちは大きな動きをしていないからニュースになるわけもなく、平々凡々なインターンだったと認知されている。

活躍を羨む人たちもいるけれど…その実、華やかな活躍だけではなく複雑な悪意が絡まっている。


「私も明日からまたインターンだよ」

「えっ!?僕呼ばれてない!!!」

「うん、私だけだもん」


彼女と歩みを合わせるどころか、またどんどんと離されていく。サーからその実力を買われているシオンちゃんと僕には雲泥の差がある。


「マジでお前ふっざけんなよ!!俺の前を行くんじゃねぇ!!!」

「理不尽に怒らないでくれる?五月蝿い」

「よし、コラ。表出ろクソシオン」

「だから嫌だってば……」


焦ってモヤモヤしているのは、僕だけじゃないんだけど……何か違うんだよなぁ。




【未詳】まだ詳しく知れていないこと。
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