何度も見る夢
ぼろぼろ。ぼろろ。
夢の中くらいは幸せな心地でいたいのに、目を閉じたあとの世界はどうにも滲んで、溢れて、とっても歪。
真っ白で、何もなくて、そして暗くて、果ての見えない、狭い空間。私はその真ん中で心を剥き出しに、惨めに、浅ましく。
『ねえ、ねえ、ねえ、』
求めてしまう。
…私は一体何に、ないて、なきじゃくって、
――泣けばいいんだよ。
頬に柔らかく触れる温かさが、微笑む。
流れる感情を咎めることなく静かに見つめる彼を、
…私は憎くて、しょうがなくて、壊してしまいたくて、消してしまいたくて、
泣いてしまう。
『ごめんなさい』
ごめんなさい。そうして、私のことを許さないで。
暗い暗いあなたへの思いを無理やりに心に押し込めて、世界はより一層滲んでいくのだ。
ごぷり。こぽこぽ。ゆらゆら。
あなたの温かさを甘受しながら、たゆたう。
…夢の中くらいは、私の本当の姿を見せてあげる。
だからどうか、私のことを許さないで。
こんなに醜い私のことを、どうか、お願い。
お願いだから――
- - -
「おはよ」
「………はよぅ」
「なんだ、今日はやけにすっきり目覚めたな」
「……」
「…ヤな夢でも見た?」
「…ん…う………」
「だってフィオ、泣いてる」
「……」
「フィオ…」
「………? …ぃいっ!たぁーーーいッ!!!!」
「あっはははっ!! ひっどい…顔!」
「う、うええぇ…ひどぉいよ、ろい…!」
「ぷっ、くく… 目、覚めただろ? さあさあ、朝ご飯食べるぞ〜」
「ほっぺいたいぃ…ううう〜っ…」
「あ、今度は俺が泣かせちゃったかな? ごめんごめん」
「…ごめんで済めばケーサツはいらないのっ」
「ごめんってば。ほら、拭いてあげるから」
「いいっ! またつねられたら嫌だ」
「そんなこと言わずに」
「ち、近寄るなぁー!」
- - -
150501
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