krkサイト様にて(緑間)


眼鏡が壊れてしまいました。
どうしよう、そう考えているとふと、自分の教室の机の上に置いてあった眼鏡が見えて
誰のか知らないけど、一時お借りしてしまったことが私と彼の出会いなのでした。

彼に出会ったのは、そう、本日の午前7時、あと数分後。



「あれ?真ちゃんメガネどうしたよ」
「…見ればわかるだろう」
眉間に皺を寄せながらも眼鏡のブリッジをついつい触ってしまう癖があるのかない
眼鏡のクセをついつい使っている。
しかし彼の右手には細い女子の手首を握っていて、一瞬高尾の顔がピタリと表情が止まったのだ。
まだ早朝の練習後で生徒はあまり来ていなく教室にいるのは男子二人の女子一人だ。


長身の彼、緑間 真太郎である。
彼の前にいる黒髪の男の子はバスケの相棒らしく、名前は高尾和成。
そんな大切な彼の眼鏡を奪ったのは目の前にいる同じクラスの女子である。
「んで?どうしてこうちゃったワケ?」
「こちらが聞きたい。愛川」
「!?」
ぎろっとすごい形相でこちらをみている緑間に事の発端の当事者であるミコトに向けられた。

緑間に勝手に借りて返そうと思った時に彼がやってきた。
眉間に皺を寄せて。
ああ、変態扱いされる!と思ってすぐに眼鏡のフレームに手をかけて外そうとしたが…

「へえ、くっ付いちゃったっての?」
「はっはい」
「…お前か高尾」
「んな悪趣味な悪戯すると思うの?真ちゃん。ひっどいなぁ」
高尾の顔をじっとみる緑間に悪びれのない笑みを浮かべる高尾。

緑間真太郎といえば秀徳の前、帝光中でも有名な人というのは
ミコトでも知っていたが、何せバスケにも男子にも興味もなく中学時代を過ごした
彼女にとっては眼中にはなく、ただただ秀徳高校へ入るために猛勉強した一人だ。
本日も読書と自主勉強の為に早く学校へいったのはよかったが、上記の通り
落してしまって壊れたのである。
その時に偶然にも眼鏡があるものだから触ったのが運のツキ、というのだろう。


「それが取れないんです!くっついたように!」
「!オレがやる。近くに寄れ」
「!?もう近い!近いです緑間クン!」

ギャー!と全身拒否反応するネコの様に騒ぎたて逃げようとするが手首を
掴まれている以上逃げるという選択肢すらなくなっている。
そんな二人を見ていて高尾は目を細めて声をかけた。
「うーん、真ちゃんのメガネってスペアねぇの?」
「家に帰らないとないな」
「じゃあ愛川さんさ、今日だけ真ちゃんの右腕になってくんない?」
「「…え?」」
ピタリと止まった動きに高尾はゲラゲラと笑うことしかできず、
緑間の顔には眉間のしわが何時もよりも深く残っていた。
彼女、愛川ミコトは絶望した顔になっていたのを、高尾は覚えていたのだ。






緑間真太郎という男子は非常に変だと聞く。
なのだよ、とか変な言葉使うけれど容姿はクラスの女子がいう
「イケメン」なのだろうが彼女には関係のないことである。
だけれども、劇的にその一日は変化を遂げた。

人事を尽くすというのが彼がよく言う言葉には素直に同意できる。
ベストを尽くさなけなければ結果なんてないのだ。

そう、彼の考え方はどこか「私」と似ていると想うのだが…
「えーっと、緑間の隣は確か」
「すいません。事情がありまして、今日は一日彼に着くことになりました」
「あ…ああ」
いつも真面目なミコトを見てきた先生は一拍置いてミコトに話をかけた。
一番後ろの席にいるミコトは座高が高くないため黒板が見れないが机を
少しだけずらせば何とか見えた。
だけれども、机をぴっちりとくっつけていた…緑間真太郎の机とである。
教科書も一冊のみ、くっつけた机同士の間に置かれ一番後ろの席だけがなぜか異様であった。
「(でも緑間クン見えないし、かといって前にいったら座高高いからみんな見えないし)」
どうしてこうなってしまったのかと思えばミコトの身勝手な行動の所為な為
何もいえないのが現実であり、小さなため息をこぼした。


ところが緑間真太郎の眼鏡をかけている彼女に、変化が起きたのです。

キラキラと輝いて見える。
教室のちょっとした埃がキラキラ光って星にも見え、レンズの世界はとても、綺麗だと思った。
ミコトは不思議な感覚だった。
まるで白昼夢でも見たかの様な美しい世界に眩暈を覚えた。
隣にいる男は一応授業の先生の声を聞いているらしい(視界がぼやけてしまっているだろうが)
ああ、この人は、まっすぐなんだ。と思うと同時にレンズ越しで見た彼は、とても。

「愛川、平気か?」
「あ、はい。」

一応出席の為に今の時間を使っているようなものだ。
緑間は何をするのかと想ったらとりあえず耳で聞こえた言葉をノートに
書き写すだけの作業。しっかり、私もノートを取らなくちゃ、そう想うのは
必然であるのに…頭の中には、先ほどの彼の横顔がとても綺麗だったことしか
覚えていない。
勉強でしか頭を使わなかった灰色の脳内と私の目は一気に彼の眼鏡の所為で
色鮮やかに染まる…そう、全てが貴方の色で染まったのだ。








授業も終り、ミコトはいつもお昼は一人で食べる食事を
高尾と緑間と食べることになった。
初めて、この高校で人とお喋りをしたのかもしれない。
そして・・・こんなにも綺麗な色をした世界をみて頬が少しだけ緩んだ。
窓側の席はポカポカしていて暖かい。

「あれ?初めてみた」
「へ?」

高尾が急に笑って少し驚いた顔をしていたのでミコトはお弁当への視線を高尾に戻した。
緑間は弁当をもくもくと食べて高尾の話を聞いてたまにツッコミを入れたりしていたが
まさか振って来るとは想わなかったらしい。

「いや、愛川さんの少しだけ頬緩んだ顔してたからさ!
いつも机に向ってたし…!なっ真ちゃん」
「オレは見えないのだよ」
「あ、ごめんなさい」
「真ちゃん女の子には優しくだから〜」
ふんっと小さく不貞くされている彼を間近でみれば
あ、こんな表情もするんだなーとお弁当を食べていて思うのであった。
初めて人と食べるお弁当の味はいつもと違う味がした。



でもこれは今日だけのマジックなのだ。
ぽかぽかとした暖かい気持ちが少しだけ曇り、お弁当の味が少しだけ毎日食べている
あの味に戻ってしまった。




放課後の部活はないらしい。
だから真ちゃんを家に連れていってくんない?と高尾君がいってきた。
しかも軽い、とてつもない当たり前の発言も、今の私には重い。
いつものリアカー(というのはチャリアカーというものらしい)は二人も乗るのは
辛いのと明日の朝の天気も考慮するらしい。
「たっ高尾くんは一緒に帰らないのですか?」
「ああ、オレ用事あるからさ。真ちゃん頼むわ」
「(ええ!なんてこと)」

突然キラキラしたこのメガネの世界。
それは緑間真太郎のメガネのお陰、輝きだした日も、きっと今日で終るのだ。
寂しいのに切ない


「何を考えているのだよ」
「…あ、すいません」

通学路をとりあえず歩く。今更気が付いた
「(緑間くんは、同じ通学路だったんだ…)」
いつもはチャリアカーに乗って登校しているのだというのだから
いたら気が付くのだろうが、私は知らなかった。
いや、知ろうとさえしなかった。

「どのくらいみえないんですか?目」
「手に持っているおしるこの文字が見えないな」
「!そんだけ酷いのですか!?」

あまり大きなリアクションをしなかったミコトだが驚いた。
それで今日の学校の授業をとりあえず聞いていたのか…
とすると、教科書も文字が見えなかったということである。

気を使う人だったのかと思ったが彼は言った。


「予習くらいはしてある。それに愛川、お前からノートを借りるまでだ」
「あ!勿論です!使ってください」
「当然なのだよ」

全然気を使わない、素直だ。


「ここがオレの家だ。」
「あ、はい!明日ちゃんと絶対メガネをお返しします」
「…」
「緑間くん?」

家は、とてもデカイ。着いたのか彼が向いたほうを見てみればデカイ家が
どんっと存在感を露わにしている。少しだけたじろいでしまった。
彼は普通な顔をしているが、これが世間一般のご家庭とは早々思いたくもない。
じっと彼はこちらをみて動かない。どうしたのだろうか。

「…メガネを作るのに時間がかかるのだよ」
「…え」
「特注品だということだ。家にあるのはいつもと違う度なのだよ」
「…へ?」

「明日、高尾と一緒にオレを迎えに来い」
そのメガネは迎えの駄賃だ、と言って彼は家へと入っていってしまい
私は呆然とするしかなかった。



命令系で彼は私にこういったのだ。
鮮やかな緑の世界は、今日から私を一段こく染まる。
私は、緑間くんとであって素敵な世界を知ってしまった。


2013.04.07 チョークと鉛筆様にて提出しました

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