krkサイトさまにて(木吉) |
※最後少し捏造があります。 授業も終り、いつもの放課後。 ランドセルに教科書と筆箱をいれるながら窓をみる。 男子達はいつもどおりグラウンドでバスケをしたり、サッカーをしていた…元気なものだ。 ランドセルを背負おうとして帰ろうとした所クラスの女子がひとつの席に集まって話をし始めた…。 恒例行事のハジマリに付き合わされそうだ。 そう、恋の話…恋バナである。 「ねえミコトちゃん。ミコトちゃん好きな人いないの?」 「ええ?いないよ。どうして?」 「だってミコトちゃんだけ好きな人いないなんておかしいよ。」 突然では有るが…私に好きな人がいないということで大変ご立腹の様だ。うちの男子にもかっこいい男の子というのはいるらしいが私には眼中にない。 「おかしくないよ。しいて言うなら…」 しいていうなら…そう、私の好きな人いるといえばいる。 学年で、クラスで誰がすきなの?と限定されてるからいないというしかないじゃないか…。 心にそう想いながらも話は進んでいく。 その時、「でもさ」と女子の間に入ってきた女性アルトの低い声が聞こえた。…隣のクラスの女子の一人だ。 その人物の登場に女子達との空気が少しだけ変わる… 「(ああ、またか…)」 私と同じくストレートの黒い髪の毛、少しだけ釣りあがっている目。 最初は「キツネみたい」というコもいた…でもどこか魅力のあるコである。 愛想よく笑っている顔もみるがきっとこの学校で楽しいと思った事、ないんじゃないかとも思う。 この子は学年女子に「特に」嫌われている。男子を弄ぶらしい。 (らしいというのは私は見たことがないからだが…) 好きな男の子をいった日には数日後には付き合って、彼女が飽きたら捨てる…ということらしい。 まあ付き合うっていっても小学生な訳だからキス以上なことはないとは想うが…どうだろう。 「(でも見た目結構ビジンだからな…)」 男の子ならホイホイ付いていきそう…とも思う…クラスの女子には 言えないのだが…。 「好きなら、さっさと奪っちゃえばいいのよ。それにフリーの時はライバルは沢山いるけど恋人から奪う時は、ライバルなんて一人だけなんだから」 「ちょっと!何いってるのよ!」 「え?そういう話じゃなかったの?」 悪気のない、笑みを浮かべて彼女がそういう発言をした途端彼女の事を毛嫌いしている丸めがねをかけているうちの委員長が怒って彼女の前で声を張り上げた。 当然、発言者のアノ子は悪びれた様子なんてなくきょとんとした顔でこちらをみた。本音だったらしい。 他の子達は「変な小説とか漫画読んだんでしょ?」「ありえない」「そんな恋愛いやだ」という。 ああ、面倒臭い。 「…ごめん、私もう用事あるから帰るね」 「あ、ごめんね愛川さん」 「ううん。じゃあね」 その場を早く逃げ出すチャンスがきた、そう思ったらランドセルをしょって扉から出ようとした時、あの「キツネ」ように細い目をする、彼女と目があった。…笑っていた。 「ばいばい、愛川さん」 「ええ…さよなら」 ひらひらと手を振っていたので、とりあえず合わせるように声をかけた。 ・ ・ ・ 「どしたんだ?ミコト」 「え…ああ、ごめんなさい。」 「別にいいんだけどな。そういえばホントに中学受験すんのか?」 ふと、マジバーガーにいることを忘れてしまっていた。 ランドセルをしまいに家に帰って、待ち合わせていた人とやっと会えて、私はほっとした。 …のも束の間、彼一人かと思ったらまさかの部活のメンバーさん達が揃っているではないか。 「はい、そのつもりです」 「ええ!?ミコトちゃんって何年生?」 「あ、小学六年です。来年中学生になるんです」 「うわ、お前ロリコンだったのかよ。」 信じられねえと眉間に皺を寄せているメガネの男性と口がネコみたいな男性、物静かな男性が少し驚いたいた。 その中に、ショートカットの女性も混じっている。 「でも鉄平にこんな可愛い幼馴染ちゃんがいるなんてね…」 驚いちゃうわよといいながら隣に座っている彼は笑って私の頭を撫でていた。ごつごつとした手はとても暖かい。 「まあこいつはオレが育ててみたもんだし」 「嘘つけ!」 「嘘じゃないさ日向!」 ツッコム日向さんに真面目に真剣に言う彼:木吉鉄平の言葉に笑ってしまう。 「まあ父みたいな、兄みたいな、そんな感じです」 「ほら見ろ日向!」 まあほんとの事だからしょうがない。 ちょっとずれてる感覚はあるのだが…。 私の両親は海外出張が多いから隣のおじさんおばさんたちにもかなり心配していた…その時に出会ったのはおばさん・おじさんの所に住んでいたのが、彼、木吉鉄平だった。 兄もいない、両親も帰ってこない、鉄平さんは私を妹のように優しく接してくれた少ない私の、大切な人だ。 「でもしっかりしてるわね、誰かさんと大違いで」 「ん?リコ、どうしたんだ一体」 「べっつに?」 何かオレしたか?と太い眉が垂れて、しょげる顔になる。 …あれ、この顔見た事ことない。 「ミコトちゃん、鉄平の事よろしくね?天然だから困っちゃうけど」 「あ、いいえ(慣れてますので)」 可愛らしい、素直にそう思う。 ふと、鉄平さんが時計をみた…あ… 「悪ぃ。そろそろ時間だから行くわ」 「あ、もうそんな時間ですね…」 そう、私と鉄平さんと何故マジバーガーで約束していたのか。 見たい映画を一緒に見に行くためだ。 めい一杯のお洒落をして参上したのだが新しい部活について話が止まらなくなってこのままやってきたらしい。 「楽しんできなさいよ鉄平!後で連絡いれるわ!」 「ああ!リコ、それに日向もコガ、水戸部も明日な!」 リコ、鉄平、名前呼び。 彼の知らない、彼をみた。 ・ ・ ・ 映画を見終えたのは夜の9時過ぎ。 話題のアクション映画に興味を持ったのが数日前。 部活がない日があったみたいですぐ行こうとなって楽しみにしていた今日…でも。 「(なんか、ストーリーも全部すっ飛んじゃった)」 「面白かったなミコト」 「…」 「ミコト?」 「えあ!?…そっそうですね鉄平さん!」 映画の話をしていたのだろう、軽くスルーしたのを彼は怒らない。寛大だなとも思う…この時ばかりは感謝した。 「そうだ。じいちゃん達にお土産かっていかないか?」 「そうですね。確かコンビニにおはぎとかあったはずですから」 夜の道を二人で一緒に並んで話も話題は様々に写る。 誠凛高校の勉強・学校はどんな感じか… そして、彼女の話題に触れた。 「リコはすごいんだぞミコト。バスケ部にカントクとして入って貰ったんだ…」 「…入って貰ったんですか?」 「ああ!最初すごく嫌がられたんだけどな」 でもこうして一緒にバスケしてんだ。と笑っていう彼をいつもは私も笑っているはずなのに。 「ミコトも夏のIH来いよ。」 「はい…でも気が早いですね鉄平さんってば」 「あいつらとなら、狙える気がするんだよ、わかるだろ?」 IH、彼等が目指すもの。最近は特に疲れているのか家に帰ったらすぐ寝るから全然話せてなかった。 だから今の状況はとても楽しいはずなのに。 「…鉄平さんは、リコさんのこと…その…」 「?」 「リコさんのこと、好き…なんですか?」 「っ…ミコト」 コンビニまであと数百メートル。耐え切れなくて聞いてしまった、そして後悔。 あ、としまったと、私は心の中で後悔した。 沈黙が6月なのに寒く感じた。 「好きだ」 「…っ」 「ミコトも好きだ、日向もコガも水戸部もな」 「…へ?」 「?好きだぞ?みんな」 ケロリと彼は言った。泣きそうだったのに涙がひっこんでしまったじゃないか…。 彼の好きは「友愛」の好きなのだ、気が付いた。 「ほら、危ないから行くぞミコト」 「…そうですね」 そして、私も「友愛」として。 ・ ・ ・ 家の前についてしまった。 おじさん・おばさんに会ってお茶を飲んでしまったら日付をまたいでしまい隣でも送って行くよといわれ鉄平さんの好意に甘えてしまう。 ・・・ 私と鉄平さんは違う学校だ。 部活で恋が芽生えるなんて可能性が高いし彼女もきっと彼のバスケを支えるんだろう。 …知ってましたか鉄平さん。 私がリコさんの事好き?と言った時に少しだけ鉄平さん動揺してたんですよ。気づかれてるって思ったんですか? バレバレです、貴方をずっとみていたんだから。 多分付き合っちゃうんだろうな…鉄平さん恋に意外にも直進タイプそう。 あなたがえらんだかわいいあの子にはきっと勝てない。 そして隣のクラスのあの子の言葉が頭からはなれない。 『好きなら、さっさと奪っちゃえばいいのよ。 それにフリーの時はライバルは沢山いるけど恋人から奪う時は、ライバルなんて一人だけなんだから』 悪魔な囁きが聞こえる…。 でもまだ、付き会っていないはず…でもなぜか罪悪感が勝る。 もう彼の元で笑うことはできないかもしれない。 きっと、もう会ってくれないかもしれない きっと、私の事を笑って頭を撫でてくれないかもしれない。 「(私と鉄平さん、年が近かったらよかったのに)」 リコさんに会う前から一緒にいるのに、一番近くにいたのに。 ああ、もういやだ。恋だと気が付かなければ良かった。 彼女の言葉が私を鈍らす、誘惑に駆られる。 家の鍵を開けて彼は笑ってまた一緒に映画みようなと笑って頭を撫でる…暖かい…あたたかくて手をぎゅっと掴んだ。 「ミコト?どうしたんだ?」 「…鉄平さん、あのね」 好き、そういう前に私は彼の唇を彼の唇に当てた。 精一杯背伸びをして、私は人生初のキスをしたのだ。 驚いた顔をしたのだけは、私は最後にこの顔を見たのをいささか後悔したのだった。 ああ、彼女の言葉に、私は耳を傾けてしまった。 「ミコト…ごめん」 「…」 「オレ、リコのこと…」 ああ、私はあの言葉に絡められる。 その後の言葉を聞きたくなくて、私はもう一度キスをした。 苦しそうな顔をした鉄平さんの顔が私の胸を痛ませる。 ・ ・ ・ 数時間前のとある家にて。 学校から帰ってきたのか、リビングに来た黒髪の妹がいた。 冷蔵庫を開けて中から出したのはコーラである。 ペットボトルに入っているのをそのままらっぱのみしているのをじっと見ていたら何?と声をかけてきた…。 「お前、楽しそうな顔してんな」 「兄さんには言われたくないわ…ただちょっとね。 蜘蛛の糸を垂らしてあげただけ…」 蜘蛛、何かを仕掛けてきたのだろうか… バスケ部に入っているオレはそんな単語を家で言うわけもないし珍しいことすぎて笑みがこぼれた。 「ふはっお前ホント誰に似たんだよ」 「…さあ?」 何かを企む、楽しそうな瞳。 学校行くの楽しみだなァ、巣を完成させなきゃと… なんて小学生にしてはあいつが何にはまったのかはオレにとってはどうでもいいことだった。 ただ、面白い玩具を見つけたんだと…花宮 真は思っていたのだった。 「愛川さん、ああ…明日会うの楽しみだなァ…」 で、好きな人と一緒になれたのかな… シュワシュワと炭酸のコーラを見つめながらうっとりと彼女は明日を待ちわびる。 2013.02.25 黄昏様へ提出いたしました。 |
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