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  スマイルとアッシュ


午前中お買い物に出かけていたアッスくんが、嵐の知らせを持ってきた。



嵐の知らせ、と言っても、一介の狼男であるアッスくんに嵐を予知する能力がある訳でも、まして嵐を連れて来れる訳でもない。自慢の鼻だって、雨が降り出す直前でなきゃイミはない。
アッスくんに嵐の知らせを齎したのは、他でもない風のコたちだ。

雲を連れてくる空渡りの精霊たちが城へ帰る途中のアッスくんと行き会って、嵐が近いコトを親切に教えてくれたってワケ。


基本的に、この辺りの森に棲むモノたちはアッスくんに親切だ。
何しろ森の奥の奥に住んでるやんごとない吸血鬼が気分屋の偏屈おじいちゃんだってコトも、その面倒を見てるのが一匹の世話焼き狼だってコトも、この森で知らないヒトは居ない有名なハナシだから。

いや、この森に居るのは大体ヒトじゃないモノなんだけど。ボクも含めて。

ついでに言えば、アッスくんが人当りの良い優しい性格って言う、この界隈ではキショーセーブツなトコロも多分一役買ってるんじゃないカナ。



まあとにかく、嵐の知らせを得たアッスくんは急いで帰ってくるとパパッとお昼ゴハンを作って、ユーリを早めのランチに引っ張り出してきて、それからボクに一緒に買い物に行くかどうか聞いてきた。


この問いはなかなか難問だ、とペペロンチーノをぐるぐる巻きながらボクは考える。


今回の嵐はチョット期間が長いらしい。
だからアッスくんは、しばらくお城の中だけで暮らす為の準備を、もう一度買い出しに行かなければならない。

お城自体は、窓をぜんぶ閉めて、その上からユーリがちょちょいと魔力でも注いでやれば、嵐どころかカミナリが落ちたってミサイルが飛んできたってだいじょーぶ。
そんでもって、どれだけ籠城したって、ユーリは寝てればヘーキ。

だけど、ボクとアッスくんはそうはいかない。他の何をガマンできたって、嵐が通り過ぎるまでの間断食、だなんてどう考えてもムリ。死んじゃう。


嵐の間分の食料を買い出すんだから、アッスくんは当然荷物持ちが欲しい。
頼めば手伝ってくれるヒトは居るけど、アッスくんは自分たちのコトは自分たちでしたいタイプだから、お城に住んでるボクが手伝えるならそれがイチバンと思ってる。
もちろん、ユーリに買い出しを頼む、なんて言うムダなことはしない。ユーリは基本ヒキコモリだ。
それにハッキリ言って、荷物が増える原因はボクのゴハンの量のせいだしネ。

ボクはと言うと、別に買い出しはイヤじゃないけど、出かけるのがメンドくさい。荷物持ちはイイけど、町までの距離を歩くのはシンドい。
でも買い出しに行くとアッスくんはお駄賃にお菓子を買うのを許してくれる。いつもは怒るオマケがメインのお菓子だって買ってくれる。
アレはアッスくんの主婦感覚的に許しがたいらしいケド。


「こないだネ、ギャンZエッグチョコの新シリーズが出たんだヨ」
「…2つまでなら買ってもいいっス」
「もう一声!」
「………仕方ないッスねぇ…」


オオゲサな溜息とエッグチョコ3コでボクたちの交渉は無事成立。
ボクの午後の予定は買い出しに大決定した。



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