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人間界は嵐なんてカンケイない、カラリと晴れた青空。
暑いくらいのお日様の下、ボクはペットボトルのお水を3箱抱えて、アッスくんは小麦粉や缶詰や調味料でパンパンの袋を両手に下げて、出来るだけ城に近い扉を目指す。

この2リットルペットボトルこそが、今回アッスくんが人間界まで買い物に来たイチバンの理由。
お肉もお魚も、メルヘンランド産のが絶対オイシイし、アッスくんはジャーキーだってコンフィだって自分で作っちゃう。モチロンとってもオイシイ。
それでも保存しておけるモノには限界があって、特にお水は、溜め込んでおいても飲むのはチョットね。
その点、人間界の保存用品ってすっごい長持ちするからとってもベンリ。


でも、コレ重い。すっごく重い。

チカラ自慢な狼男のアッスくんと違って、ボクはカヨワイ透明人間なんだヨ。
それに、ボクもユーリほどじゃないケド、ヒキコモリだから。あんまりお日様に当てられたら、とけちゃう。


「ネーエ、アッスくんー、」
「ダメッスよ、雨が降り出す前に帰らないと」


ボクのほうを見もしないで、アッスくんは休憩しようヨって言おうとしたボクの主張をバッサリ切り捨てた。

ヒドイヒドイ、せっかくお手伝いについてきたのに。こんな暑いのに、ジュースのひとつも買ってもらえないなんて。
すぐソコに、サイバーたちがオススメしてたスムージーのお店だってあるんだヨ。

エッグチョコ買ったデショって。…それはまあ、そうなんだケド。

でもサ、ボク結構ガンバったし、チョットくらいゴホービあってもよくない?


そんな風にぶうたれてると、アッスくんは、仕方ないッスねぇ、って笑った。のに。



「帰ったらその水で、ミントソーダ作ってあげるッスから」


だからもうちょっと我慢、だなんて!

ああでも、アッスくんのミントソーダは飲みたい。シロップが甘すぎなくって、ミントがキンとサワヤカで、暑い日にはサイコウだもん。
帰るのがガゼン楽しみになって、スタスタ歩いてっちゃうアッスくんを慌てて追う。


「あ、デモデモ、どうせならミントジュレップのほうがいーな!」
「こんな早い時間から?」


アッスくんがもう一度、仕方ないッスねぇ、って言ってくれるのを期待して、じぃっと見てみる。
アッスくんは諦めたように、ちょっと肩をすくめて苦笑いのタメイキひとつ。

ヨシ、じゃあ今日はアッスくんのミントジュレップとササミジャーキー!
ボクは勝手に決めて、扉の向こうの、潤んだ空気の中へ駆けだした。




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去年シーズンを逃してお蔵入りしていた台風ネタを、慌ててあげてみる。
スマイル視点は地の文作るのが楽しい。どれだけカタカナ入れて崩すか未だに試行錯誤中。


 

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