俺の幸せ






「good morning」
「おはよう。兄ちゃん」

佐助が降りてきたのは、丁度breakfastを作り終えた頃。全く、timingのいい奴だ。そんなところは昔から変わらない。人よりも勘がいいのかもしれない。

「ご飯、作ってくれてたんだ。別にいいのに」
「いつも任せちまってるからな。休みの日くらいやるさ。
まぁ、手の込んだモンではないけどな」
「全然。俺だっていつもパン焼いて牛乳飲んで終わりだもん。目玉焼きがあるだけまし」
「そんなんで昼まで持つのかよ」
「案外持つよ。俺様小食だから」
「持つんならいいけどよ」

2人で準備を終えて席について、いただきます。
そう言えば、最近は休日の出勤なんかもあったから、2人で食事をするのは久しぶりだ。
考えることは、佐助も同じだったようで。

「なんか、久しぶりだよね。兄ちゃんと食事するの」
「そうだな。休みの日まで仕事仕事だったからな、俺も」
「落ち着いたの?」
「まぁな。一段落ついたから、暫くは落ち着けると思う」
「じゃあ、暫く休みは家にいれるの」
「ああ。遊びに行ってもいいぜ。掃除だとかは俺がやるから」

いつも休日に俺がいるときにしていた掃除やシーツなどの大きいものの洗濯は、俺が仕事で休みがなかったにも関わらず、しっかりと行われていて。それはこの出来た弟がやってくれていたことを表している。
佐助には佐助の付き合いがあるはず。
それなのに家事をすべて肩代わりしてくれていたのだ。
仕事が落ち着いて余裕ができたのだから、今までのように休日の家事は自分がやろう。その分佐助には、今までできなかった好きなことをしてもらおう。
そう決めていたのだが、佐助の返答に俺は驚かされた。

「家事は俺がやるから、兄ちゃんがゆっくりしなよ。
したいこと、さっぱりできてないのは兄ちゃんの方なんだから」
「俺は、」
「友達との予定もないしさ。いいから!
それに、俺結構掃除とか洗濯好きなのー。だからさ、ね」

笑って言う佐助に、俺は申し訳ない気持ちになる。
だけど、佐助からの気遣いを無駄にもしたくなかった。
だから、渋々ながら頷くしかなかった。

「……OK。わかった」

佐助の笑みが深まった。これで、よかったのだ。
それから思い出したように佐助が付け足した一言は、きっと俺の気持ちを汲んでの一言だろう。本当に嫌になるくらい鋭い奴だ。
家族だからそれもいいところだと思えるが、友達としてだったら絶対に付き合いたくない。

「久しぶりに兄ちゃんの料理食べたいからさ、夕食は兄ちゃんが作ってよ」

ニコニコして言うもんだから、これが計算ではないのかとも一瞬思ってしまうが、そんなことは恐らくない。
本音半分、計算半分といった所だろう。

「わかった」

それでも、この弟が俺を休ませてかつ気をあまり遣わせないようにするためにしている計算だとわかっているから、俺は何も言わない。
この弟の優しい気遣いが何よりも嬉しくて、温かくて、幸福だと思ってしまうのだ。

「……thank you、佐助」
「何ー?急に。どういたしまして」

そう言ってまた、大切な弟が笑った。





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