やっぱり兄弟






皿洗いを俺が終えたときには、佐助は顔を洗って着替えて、すっかり動く準備を整えていた。
そうして皿洗いを終えた俺をリビングから追い出してしまうのだった。
俺は俺で、まずは着替えないと何も始まらないと思い、洗面所で歯磨きと顔洗いを済ませた後、部屋に戻って久しぶりに私服に袖を通した。
その頃には下の階から掃除機の音が聞こえていて、佐助がもう掃除に取り掛かっているのが分かった。

「相変わらずspeedyな奴だな」

こんな所は、我が弟ながら感心してしまう。
脱いだ部屋着、それに枕カバーとシーツを持って洗濯機のある脱衣所に向かう。
まだ回っていない洗濯機と、浸け置きされた俺と佐助のワイシャツ。
何もしなくていいとは言われたが、やはり何かしないと落ち着かない自分。
恐らくこのまま部屋に戻っても手持無沙汰で、結局仕事をすることになる気がする。いや、絶対にそうなる。
両親の影響なのかはわからないが、そういうところを考えると俺も相当な仕事中毒だ。そう思うと、なんだか少し笑えた。

「やっぱり、人に任せて、ってのは落ち着かねぇんだよな」

折角の休日。
仕事で終わらせてしまうのも味気ない。
佐助は、『好きなことをしろ』って言ったのだ。それなら遠慮なく、好きなようにやらせてもらうさ。


「ちょっと兄ちゃん……」
「落ち着かねぇんだよ。好きでやってんだから気にすんな」

洗面台に浸け置きされていたワイシャツの襟と袖口に固形の洗濯洗剤をつけて擦り、汚れを落とす。
掃除機を持ったままで現れた佐助が、それを見て呆れたように笑った。
顔も性格もさっぱり似ていない兄弟だと、幾度も言われてきた。確かに顔は似ていないし、性格だって似ているとはとても言えない。学生時代はすぐに熱くなって殴り合いの喧嘩だのしてた俺とは正反対で、佐助はいつだって冷静だ。喧嘩した、なんてのは聞いたことがない。
なのに。
相手を楽にしてやりたくて、自分が一生懸命になる。任せるのが大嫌いで、なんでも自分でやろうとする。
これは一種の自己犠牲ってやつなのだろうが、こんな所ばかり似てしまうとは。

「似た者兄弟なんだから、やらせといてくれよ」
「え?似てる?俺と兄ちゃんが?……ははっ、笑わせないでよ」

「じゃ、任せた!」と言って佐助はさっさとコンセントを抜いて、階段を昇って行った。
俺はその音を聞きながら洗濯機に衣服を放り込み、スイッチを押すのだった。






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