01
壁外調査も終わり、報告書や遺品整理なども終わりようやく仕事がひと段落ついた所で同僚の人間から飲みに行かないかと誘われた。
自身の潔癖症故に普段からあまり他者と関わりを持つことを嫌う節があるが、この同僚だけはどうもそうはいかないようで、こちらの返答を待つこともなく腕を引かれほぼ強制的に連れて行かれる形となった。
こいつは自分の研究室から出た後手洗いなどはしていないのだろうか、という疑問が頭をよぎるとその腕を少々乱暴に振り払う。しかし相手は特に気にする様子もなく、豪快に笑った後再び歩き出したので大人しくついていくことにする。

「お酒はもちろんなんだけど軽食がすっごいおいしい店見つけてさーしかも女の子がすっごい可愛いんだ!」
「俺はまだ行くとは言ってないんだが」
「いいじゃん!どうせ後は報告書エルヴィンにもっていくだけなんだし!たまには外食しないと気持ち沈んじゃうし!!」
「お前はいつも浮つきっぱなしだろうが」
「やっだなー!私はリヴァイを心配してこうして誘ってるんだよ?他人の好意は素直に受け取ろうよ」
「じゃあ今回はてめぇの奢りだな」
「えっ…いや、それは…」

ぎくり、と肩を震わせてこちらを振り返るハンジに鼻で笑ってやる。
そのままスタスタと歩き出すと情けない声を出しながら追いかけてくる。
とりあえず奢りかどうかは後に回すとして、確かに腹も減ったのでハンジのおすすめとやらの店で久しぶりに外食しようと思う。



連れてこられたのはこじんまりとした小さな軽食屋だった。スープやパンなど庶民的なものばかりであったが味は中々いけた。
酒も軽食屋という割には種類も豊富でそこそこ金を出せばそれなりに珍しい酒も飲めるみたいだ。
確かに穴場といえば穴場のような店だが、ひとつ難点をつけるとすれば店の中がかなり狭いという事だろう。時間帯的にも混み合う時間帯故か隣の人間と肩が触れ合うほど近いという事だろうか。
しかし、幸運にも丁度隅のテーブル席が空いたらしく、ハンジとの二人連れということもあってすぐに通された。もちろん壁際は俺がぶんどって通路側はハンジに強制的に座らせた。

「丁度空いててよかったねー」
「そりゃ、制服でこんなとこ来たら定員もビビッて良い席通すに決まってるだろう」
「あの女の子がビビってたのは私達が調査兵団とかじゃなくて、単にリヴァイの顔が怖かっただけに見えたけど…」

だからほら、心なしかお客さんが寄り付かなくなってるよー。そう暢気な声で当たりを見回すと確かに入店したときの活気はどこかなりを顰めていて、ふと目のあったほかの客も勢いよく目を逸らしていた。
確かに、人に好かれるような顔立ちでも目つきでもないが、これではいささか罪悪感のようなものも感じてしまう。
自分たちが来なければもっと活気のある店であっただろうに、今は何かにおびえる様な雰囲気を漂わせている。そんな中ではうまい飯もうまい酒も味わえないというものだ。
さっさと食べてさっさと帰ろう、明日も早朝から訓練指導が入っているのだから。そう思って酒を飲み干すとハンジが大声で店員を呼んだ。

「これ、お変わりもらえるかな?」
「はい、同じものでよろしかったでしょうか?」
「うん!あ、リヴァイはどうする?」
「おい…俺は、」
「じゃあこの人にも同じものおかわりで!」
「はい、かしこまりました」

こいつまったく気が利かない。いや、俺の考えを理解する気がないというべきか。
食事もそれなりに食べ、酒も互いに飲んで、明日も朝から仕事があるというのにまだ飲むのか。

「明日も朝から仕事あるんだぞ」
「えー大丈夫だよお、消灯時間まではまだまだあるしい」
「酔ってんのか…うぜぇ」
「やだなーこれくらいで私が酔っぱらう訳ないじゃないかぁ」

明らかに酔っている。いつもの三割増しくらいでうざさとしつこさに磨きがかかっている。
溜息をひとつ吐くと、店の中でガラスの割れる音が響いた。


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