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昨日の心配が嘘のように、無事に任務も終わり解散となる。
前を歩く二人はあの日と全く変わらない。
ナルトが笑い、先輩も笑みを返して。
他から見ればいい上司と部下の関係にしか見えない。
けれど、僕には全く違う関係に見えてしまう。
無理をして笑うナルトと、何食わぬ顔でナルトに関わる先輩。
腹立たしかった。
こんな感情を自分でもよく今まで抑えてこれたと自負できる。
「じゃあ報告書は俺がやっとくから、テンゾウはもう解散でいいよ。」
「…それじゃお願いします。」
先輩の僕だけ帰っていい、その言葉にナルトの表情が強ばったのを僕は見逃さなかった、見逃せなかった。
でも結局はどうすることもできない。
一人その場を立ち去った。
夕刻、ナルトにまた酒に付き合って欲しいと言われ断れずに返事をしてしまった。
その日は珍しくナルトのアパートに足を運ぶことになった。
適当につまみを買って、確か前に何かの祝いでもらった酒を持ってナルトの自宅に向かった。
あの日からナルトとは飲んでいない。
複雑と言えば複雑なんだけれども、少しでも側にいたいと思うのは我が儘かな。
ナルトの自宅の前に着き、インターホンを押した。
ガチャリ、と扉が開く音がしてナルトがひょっこりと顔を出した。
年のわりに似合わない可愛い仕草に、ふっ、と笑みを浮かべて、軽く挨拶をしてナルトは僕を招き入れてくれた。
「あ、隊長!俺なんか作るってばよ?」
「作ってくれるの、そう…ありがとう。」
「へへへ!」
嬉しそうに笑うナルト。
あんな泣きそうな表情をしていたのに、無理して笑うことはないのに。
台所へ向かおうと、席を立つナルトを見て ― 愕然とした。
首筋に浮かぶ、赤い鬱血痕。
それが意味することは明白で。
「…ナルト、カカシ先輩に会ったのかい?」
「………っ!」
振り返ったナルトの健康的な肌に目立つ赤い痕が視界の端に入り込んだ。
もうそれは九尾の治癒力のせいか、治りかけていた。
僕が何を目にしたのか気付いたのか、ナルトは後退った。
「…ナルト、」
「っ…!見んなってばよ!…たいちょ、頼むから…見ないでくれってば……っ」
悲願するようなナルトの言葉など耳に届くはずもなく、気付けばナルトを腕の中に閉じ込めていた。
ナルトは抵抗するでもなく、僕に抱き締められていた。
そっと顔を近付けて、ナルトのに口付けた。
一瞬、びくりと肩を揺らして離れようともがく。
「…ん、……ナルトっ…」
「…っま…て、んん、ぁ…!」
唇を離すと、涙目で睨むナルトの姿があった。
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