「塊のお肉がたべたい」

「……は?」

仕事の関係上毎日とは言わないが美味しいご飯を作ってくれるスパダリこと降谷零から呆れた視線を感じた。

最近の零くんはデザートに凝っていて宝石のように輝くフルーツタルト、甘さと苦さがちょうど良い自家製プリン、ふわふわもちもちのドーナツなどなどプロか!とツッコミを入れたくなる物をそれはそれは美味しく作ってくれるので完食していた……のだが、その影響か贅沢な肉が身体全体にぷるんと付いてしまった。

ぷにぷにと私の贅肉をつまみながら「美味しく食べてもらうのが嬉しすぎたばかりに、たくさん作った俺が悪い。」と責任を感じた零くんはお菓子作りを止めてヘルシーなご飯中心の生活になってしまったのだ!

「ヒレステーキ1ポンドたべたいいい」

「ダメだ。ろくに運動もしないのにタンパク質大量に摂取したら全部脂肪に付くぞ」

「それはそれでいやああ」

「豆腐ハンバーグ1ポンド作ってやるから」

「美味しいけど、美味しいけどさ!」

目の前にブロッコリーを突き付けられ仕方なく食べて咀嚼をするが、ドレッシングが少なすぎて草の味しかしないので水で無理やり飲み込む。えらいえらいと子供扱いする零くんをじろりと睨みつけてもアラサーには見えないにっこりとした笑顔を返されたので大した効果はなかった。

「目標まであと少しだろ?一緒に頑張ろう、な?」

「ううう、」

「痩せられたらうんと美味しい1ポンドステーキ作るから」

「……ほんと?」

「約束」

少し前だったら忙しすぎて約束をする事なんて出来なかった零くんが、あどけなく笑いながら小指を差し出してくれる。

「……嘘ついたら100発撃ってやる」

平和な幸せを感じつつ零くんの小指と私の小指をきゅっと絡ませて"約束"をした。

(普通の日常に幸せを感じた話)



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