カラン、とコップの中の氷が鳴った。
最近のルーティーンとなった仕事終わりのほぼ貸し切り状態のポアロで、いつものようにアイスティーを頼みお気に入りの読書をする……はずだった。


「おや?返事を聞かせてはくれないのですか?」

不敵に笑みを浮かべる超自信家な自称探偵見習いさん。情報が整理出来ずぽかんと口が半開きになってしまった私の顔を見て、今度はウィンクを飛ばしてきた。

「まったくしょうがない方だ、貴方の為にもう一度言いましょう。」

「名前さん……僕と、結婚を前提にお付き合いして頂けませんか?」

「嫌です」

「……は?」

2回目ではきちんと断れた。よく頑張った私。安室さんの不敵な笑みは一瞬でどこかに飛んでいった。何その顔写真撮りたい。

「…ちなみに理由を聞いても言いですか?」

口角がひくひくと動く安室さんの顔。断られると思っていなかったんだろうな、さすが超自信家さんだ。ざまーみろ!

「普通に考えても見てください、なんの取り柄も無い財閥のお嬢様でも無い顔面偏差値ど平均の私と付き合った所でなんのメリットもないし、」

あれれ?自分で言ってて悲しくなってきたぞ?

「そ、そもそも!本当に私の事異性として見てます?」

出会ってからそんなに経ってないし、ポアロでお茶する時ぐらいじゃないと会えないし、たまに出勤してなくて会えないし、今まで甘い言葉なんてかけられたことない!連絡先も知らない!友達でもない顔見知り程度のお付き合いだったのに!何故!

「それもそうですね、今の話は無かった事にして下さい。」

「…え?あ…」

どどどどうしよう、せっかく安室さんから告白されたのに照れ隠しで突っ返してしまった。いやでも付き合うメリット無いって納得されちゃう私って……あああもう無理だ明日からポアロ行けない……。

遠ざかっていく安室さんの背中を見つめていたら視界が揺れた。体がだんだんと暑くなって鼻がつーんとしてきた。馬鹿だなあ、素直に好きですって返事をしていたらこんな事にはならなかったのに。

「……なんで泣いているんですか」

頬に落ちる前に浅黒い指が涙を受け止めた。少しだけクリアになった視界に映ったのは困った笑顔の安室さん。

「あむろさん……す、き……です」

頬に感じる安室さんの体温と、また私の側に来てくれた事に安心してつい思っていた事が口に出てしまった。安室さんはぎゅっと私の上半身を抱きしめた。

「ええ、知っています」

「本当に貴方は意地っ張りで天邪鬼で……目が離せない。」

頭を優しく撫でながら呟かれる言葉に耳を傾ける。いつになく真剣な声色に私の胸はどきどきと高鳴る。

「3度目の正直だ、名前、俺と付き合ってくれるか?」

「はい!」




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長編に手をつける前に慣れておこうと書いてみましたが如何だったでしょうか!?
安室さんは初めから3度目で素直になると推理していてわざと素っ気なくしているっていう妄想です!
感想、誤字脱字の報告お待ちしてます!





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