25 | ナノ
「…うん」
早く叱られてしまいたいような、逃げ出したいような、そんな曖昧な気持ちで、ジタンはそれしか答えられなかった。
フリオニールはジタンが掛けていた薄手の布を剥いで、ジタンの状態を診始める。
…暫く、テント内に沈黙が続いて…。
「…どうなの?」
沈黙を破ったのはオニオンだった。
ジタンはそっと目を開く。
オニオンはいつのまにかこちらを見ていて。
状態を診るフリオニールの答えを待っていた。
「…ん〜…」
フリオニールは唸って、ジタンを覗きこんでくる。
「どこが痛む?」
ジタンは、全身、としか答えられなかった。
強いて言っても全身なのだ。どこが明確に痛んでいるのか見当も付かない。
「…外傷はなぁ…何とかなったものの…斬撃が体組織まで破壊してるからなぁ…」
こりゃ治るまで時間が掛かるぞ、と。
言った後に、明るい笑みをジタンに向けた。
「時間は掛かるが、まぁ任せておけ! 必ず良くなるさ」
「うん…」
…沈黙。
「…あのさ」
沈黙を破ったのは、今度はジタンで。
「ん、ああ。大体7日間くらいかな。お前が寝てたのは」
「そっか…」
…沈黙。
「…あのさ」
またしても、沈黙を破ったのはジタンだった。
フリオニールは笑う。
「何だよ、どうした? お前熱あるんだから、無理するなよ。もうすぐバッツが痛み止め持ってくるから」
「セシルは…? 平気、なのか?」
「ん…ああ…」
フリオニールは若干笑みを引いた。
「外傷に関しては問題ない。失血量や骨折箇所とその多さが洒落にならないが、まぁセシルだしな。大丈夫だろ。 持ちなおしてきたことだし」
「…そっか…」
…沈黙。
…沈黙。

……沈黙。

「ジタン、どうしたの?」
問い掛けてきたオニオンに、僅かに首を傾け…。
視界がぐるりと周り、痛みが感じられなくなると同時に視界が暗転した。






次に目が覚めた時には違うテントに移されていて、身体に痛みも無く熱も下がっていた。
痛み止めが効いているのかと思ったが、もう既にオニオンが完治していて、リハビリも終わっていると聞いたので、相当の日数が経過したのだと思う。
正確な日数は怖くて聞いていない。
自分の身体を見下ろして見れば相当痩せていた。
「皆頑張って流動食流し込んでくれてたんだよ」
とはオニオンの弁で。
「消化器官もダメージ受けてたんだろうな。あんまり目に見えて痩せていくから、心配した」とはクラウドの弁。
ティーダも、オニオンの話を聞いていたらしく、思い切り泣かれたし怒鳴られたし抱きつかれた。
衰弱した身には、これが結構こたえたもので、ティナとスコールが慌ててひっぺがしてくれた。
…だが、一番こたえたのが、萎えた手足が自由になった頃に受けたウォーリアの叱責で。
「何があった」
ジタンは自分の行動から、起こった出来事や心境やジタンとセシルの会話までを全て打ち明けた。
仲間が、未だ床を出られないセシルを除く全員の居る前で。
創られた存在であるが故の自己卑下と。
膨れ上がった自己顕示欲と。
自己卑下故の、役に立ちたい焦りと。
自己顕示欲故、また死神に成る可能性のあった己に対する恐怖故の自殺願望と。
2つが混ざり合って歪に固着した、仲間に生きていて欲しいと願う一種の身勝手な欲望と。
それが身勝手だと最後まで気付かなかったこと。
騎士2人に、何度も違うと言われたこと。
勝手を押し通して、先走った結果が今のこの状態であること…等…。
当然、凄まじい勇気が要った。
己の非を理解出来た今では尚更。
叱責を受ける事が予め判っていたので、更に。
ウォーリアの怒りは凄まじかった。
決して、仲間に対して怒鳴り散らすような人ではないが、明らかな怒気を纏って、淡々とジタンを叱責するウォーリアに、仲間達のある者は恐ろしげに目を瞑り、またある者は、怯えて数人で固まっていた。
彼らにしても、ジタンを怒鳴りたい気持ちはあったのだと思う。
それを束ねて一度に食らったような言葉の重さだった。
ジタンはウォーリアの叱責に、一度も反論しなかった。
ただ俯き、黙って、時々頷きながら、聞いていた。
余りにウォーリアの叱責が的を射て直接胸に突き刺さる為、自分が泣いていることに暫く気が付かなかった。
ジタンの様子に、また、完全ではないジタンの容態に、ウォーリアも短めで話を切った。
「ジタン。勝手で済まなかったが、使える薬は無いものかと、君の鞄を開けさせて貰った」
あの状況では、ポーションもエーテルも無いことは、鞄を開けなくても判ったろうが、回復の粉等有れば調合に使える。
それを解っていたジタンは俯いたまま頷いた。
「あの日、君が探し当てたと思しき品も見させて貰った」
ウォーリアはここで溜息を吐いた。
「君が我々の陣営で、一番物品に関して目鼻が利くことは承知している」




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