24 | ナノ
「左足の膝と太股、背中側の肋骨を骨折。左肩の関節と鎖骨が粉砕。全身打撲。他にもいろいろざっくりイってたりこんがり焼けてたりしてたけど、外傷に関しては、流石コスモス軍の魔法部隊だよね。綺麗なもんだよ」
ただ骨折とかになってくると、回復魔法じゃ痛み止めにしかならないからね〜。
痛み止めだったらバッツやフリオニールに調合して貰った薬飲んでた方がお互い気楽だよ。と。
「実は今も痛み止め効いてて、ちょっと眠いんだ」
へへ、なんて笑ってくるから。
こちらも思わず笑い返そうと…。
…。
…出来ない。
オニオンは笑顔を引いた。
ジタンは擦れる声で問う。
「…セ…シル…は?」
オニオンはふいと上を向いた。
「…ジタン、多分また『何で俺なんか』とか言いだしそうだから、あんまり言いたくない」
「言わない」
熱で擦れた声にしては強い口調でジタンは言った。
オニオンは驚いてジタンを見る。
…暫くの沈黙。
ややあって、オニオンは驚きの表情からふっと力を抜いた。
「…そう。…良かった」
それだけしか言わないオニオンに、こいつ変なところで妙に大人だよな、と思った。
オニオンは苦労して起き上がろうとした。
「え…ちょ、お前…」
「痛くはないよ。痛み止め効いてるから」
ただちょっと、あちこち固定されてるから動き辛いんだ、と言ってオニオンは起き上がってしまう。
セシルはその向こう側に寝かされていた。
顔は向こうを向いていたので、表情は解らない。
頭に、固定用の木が当てられ包帯が巻かれていた。
呼吸に上下する胸の速度が早い。
「セシルが気が付いたのは一昨日なんだ。まぁこれは、ジタンとは基礎体力が違うからね、当たり前だけど」
ジタンは深く息を吐いた。
良かった。生きてる。
…でも。
「…意地…張るん、じゃなかったなぁ…」
これで何度目か。後悔する。
始めから体力差なんて解っていたのに。
そんなジタンを、オニオンは奇異なものを見る目で見つめる。
「…何かジタン、変わったね…」
熱で気でも弱くなった? 等と問われて、流石に苦笑してしまった。
まあいいけど。と、オニオンはセシルに目を戻す。
「…気が付いたのは一昨日だけど…あれを気が付いたって言うかな」
「…?」
「いきなりパニック状態でね。まぁ、何言ってるのかはっきり発音出来てる時点で症状は軽いってバッツもフリオニールも言ってたし、ティナが素早く強めの睡眠魔法掛けてくれたからね。大事じゃなかったけど」
それにしてもさぁ。ティナってこういう時に度胸座るよね。ティナに限らず、女の子って皆そうなのかなぁ?
「ね。どうなのジタン?」
「…え?」
「え、じゃなくて。ジタン、女の子に詳しいでしょ?」
ジタンは思い切りの苦笑をした。
「…好きだけど、詳しくは、ねぇよ」
寧ろ解らないことだらけで、ただ解るのは女の子は可愛くて最強ってことだけで、つまり女の子はそういう人間なのだと。
「ふぅん…。何だか解るような解らないような…」
ジタンは再び苦笑した。
「それより…」
「ん?」
「パニックになったって…セシル…何て言って――」
「あ、こら!」
ジタンの言葉を途中で切ったのは、テントに入ってきたフリオニールだった。
「オニオン、お前起きるなって言ったじゃないか!」
「暇なんだもの」
「暇だと思えないように、痛み止め飲むの止めるか?」
「あ、それは嫌だごめんなさい寝ます」
「よし」
オニオンが再び横になるのを手伝いながら、フリオニールはジタンに向いた。
快活な笑顔が見えた。
「ジタンが目を覚ましたってな、スコールがふっ飛んで来た」
多分、いつもつるんでるバッツが来た方がジタンも気が楽だったろうし、スコールも本当はそうして欲しかったんだろうけど、今丁度、薬の調合の仕上げして、手が放せなかったもんだからさ。
悪いな。
お早う。目が覚めて良かった。と。
ジタンはゆるゆると首を降った。
バッツとスコールは、確かに他の仲間よりも気易いし、距離が近い。
だからこそ、不手際をした時に容赦が無い。
…怒鳴られるのは覚悟の上だったが、熱のある今は勘弁願いたい。
そんなジタンの心が読めた訳ではないだろうが、フリオニールはオニオンを横にした後、ふと真面目な表情をしてきた。
「オニオンがな。合流してからのことを話してくれた」
オニオンはふいっと向こうを向いた。
「ジタンがその時、セシルとどういう経緯を辿ってきて、どういう心境だったのかは量れないが」と、前置いて。
「ウォーリア、大激怒だったぞ」
ジタンは強く目を瞑った。
「激昂して怒鳴るような人じゃないけれど、発してる怒気で近寄れたもんじゃないんだからな」
調停役のセシルが居ないから、尚更だ。と、締めて。





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