冷徹(問題児)の行くリテイナー日誌 | ナノ




 わたくしのマスターは冒険者でございます。
 と言っても、所謂【光の戦士】様と肩を並べるような者ではない……とマスターは常々申しておりますがわたくしと致しましては例えレベルが低かろうとも民草に分け隔てなく接し魔物退治は愚か調理伐採に漁まで幅広く皆々様のお役に立とうと奔走なされ近日では黒渦団という国防軍の入団まで果たされましたマスターは光の戦士様方に遜色無しと断じておりますがマスターは非常に人格者かつ謙虚でおられますから常々御自身をただの冒険者と名乗り本日も人々を救うべく東西奔走をなさっておいででこのようなお方こそ光の戦士と呼ぶに相応しい方なのではないかと私は常々思っておる次第でございます。
 ……申し遅れました。わたくし、冒険者ギルドよりマスターへ遣わされましたリテイナーでございます。
 勤務地はリムサ・ロミンサ。エレゼン種族。銀髪を背まで伸ばし額に赤く紋を刻んだ男性にございます。マスターを影でお支えする職業柄、見知りおかれますと差し障りがございますので、名は控えさせて頂きます。どうぞお気に留められませんよう、切にお願い申し上げます。
 リテイナー、とは、簡単に言えば「倉庫」「代理出品者」を兼ねたもの、とお考え頂ければと存じます。マスターのお手持ちの鞄に入りきらないお荷物を保管させて頂いたり、またマスターが不要品をマーケットで競りに出したい場合に、お忙しいマスターの代行を努める存在、それがわたくし共の務める「リテイナー」でございます。
 わたくしがマスターから雇用を頂きましたのはつい最近のことでございました。なんでも、ふりーとらいある、と申すものに属していてはわたくし共リテイナーを雇えない為、かきん、というものをされて雇いにいらしてくださったそうです。
 お話自体はわたくしのようなリテイナー風情には解りかねますが、何せマスターはご立派な方でいらっしゃいますから、そのような方にお雇い頂けたこと自体が誉れでございます故、リテイナー風情が詮索をするなど烏滸がましく無礼な言動は厳に慎んでマスターの大切なお荷物をお預かりするのみでございます。
 さて。
 マスターは先日、私に管理をお任せくださっていた大量のお料理を全て引き上げてゆかれました。
 私の管理がお気に召さなかったのでしょうか!? 何か不手際が!? 思い当たる失態に心当たりはございませんが心当たりがないことが一番事態は深刻なのでございます! まさか提出のご依頼があったお料理に障りが!? ああ何ということでしょう!! マスターに弁明と謝罪を申し上げたい……! 叶うならその足元に身を投げて罰則を賜りたい……!!
 しかしわたくし共リテイナーはお雇い頂いております冒険者の方々の冒険や日々の暮らしに差し障りなきよう、決まったお言葉しかお掛けすることを許されておりません。
 わたくしは罪悪感に目の前が暗くなるのを感じながらマスターの元から下がったのです。
 「あとは、お任せ致します」
 その時、マスターからお声かけがございました!
 何でも、黒渦団の調達業務に、お料理の提出が含まれていたそうなのです。加えてマスターは私用のチョコボも入手なさったそうで、チョコボに大容量のバッグを持たせることが出来るようになった、とのこと。調達業務が変わる度にわたくしを呼び出していてはわたくしが大変だろうから、自分で作った料理くらいは自分で管理しなければ、と、照れくさそうに、申し訳なさそうにお声かけくださったのです!
 わたくしが! 大変だろうから!!
 わたくしの為! わたくしを慮ってくださった!!
 リテイナー風情にこれほど情を掛けてくださったマスターがいらっしゃったでしょうか否居ない!!
 チョコボではお料理に臭いが移っておしまいになられませんか!? ああ臭い対策は別の方にご教授頂いていらしたのですね! 出来ることならわたくしがお手伝いして差し上げたかった! わたくしがチョコボの飼育にまで精通していたならわたくしにお任せ頂けたものを……!!
 いやそれ以前にリテイナー風情のわたくしをお気遣いくださってお荷物の振り分けをお考えになられるなんて、嗚呼マスター! あなた様に選んで頂けてわたくしは……! わたくしは……!!
 ……。
 大変失礼致しました。取り乱しました。
 わたくしはこれより、通常通り、お預け頂きましたお荷物の管理とマーケットへの出品に全力で務めさせて頂きます。
 マスターが必死に吊り上げてこられたタキノボリ、絶対に高額にてお売りさせて頂きますので、どうぞお待ちになられていてくださいませ!!




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