ただの腐れ縁 | ナノ
 
記念企画「迷子」にて、ウォーリアフリークの妹より過去に類を見ないクレームが出た為、キャラクター崩壊ギャグにてリメイク。
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閲覧の際は自己責任でお願い致します。







…取り敢えず、目の前の者は自分の宿敵だった。
談話をするにも、昼寝を決め込むにも、あまり相応しいとは言えないカオス神殿内部、そのぶっ壊れた天井を見上げて、ガーランドは嘆息する。
「ガーランド。1つ訊くが…。お前が見上げている上空のあの渦は一体何なのだ?」
頭上に意味ありげにぐるぐると渦を巻く雲を指差して、己が宿敵、ウォーリア・オブ・ライトが、いつもと変わらぬ無表情で声を上げた。
…何をしにカオス神殿まで来たのだこいつは…!
ウォーリアへ視線を戻し、ガーランドは目の前を上空に向かって浮いていく石か何かをうざったそうに払い除けて嘆息した。
ウォーリアが初め、この神殿に足を踏み入れた際、久し振りにガチ戦闘開始か! と、ガーランドは意気揚々としたものだ。
が! しかし!
己が宿敵に対し口上を述べかけたところで、当の宿敵はあっさりと「いや、今日はその用事で来たのではない」とか何とか言って剣さえ抜かない。
…どうでも良いが、まず口上を切るな。頼むから。
後の空気の気まずさを予想も出来んのか。
「儂が知っていると思うたか?」
ガーランドはウォーリアに、嘆息混じりに吐き捨てた。
…無論、皮肉である。
「いやあまり」
間髪入れずに即答するウォーリア。
ガーランドは盛大に溜息を吐いた。
…効いてない。皮肉もなにも効いてない。
というよりは多分皮肉だと理解もされてない。
「…ならば訊くな」
疲れた様子で言葉を吐くガーランドに、意に介さない様子でウォーリアが言葉を返してくる。
「…というより…」
「何だ」
と言った瞬間、ガーランドは頭を抱えたくなった。
何故律儀に聞き返してしまうのだ儂は!
無視すれば良かろうに!
あああ王国騎士時代に身に付いてしまったらしい礼儀とやらが心底うざったい!
そんなガーランドの心情など何処吹く風。ウォーリアはこちらに向かい、思案顔を向けていて。
「…私の問いに対して、お前からまともな返答が返ってきたことが無いからな。問い掛けの動機は、強いて言うならば同類の確認、と言ったところだ」
なんぞと言ってきた。
「同類?」
意外な単語に、ガーランドは怪訝な声を上げる。
それに対し、ウォーリアは「ふむ…」と、事も無げに頷いてみせて…。
「私と同じく、お前も何も知らない者だと――」
「そんな訳あるか!」
「何!?」
酷い勘違い…というか、ガーランドにとってちょっと不名誉な誤解に思わず声を張るガーランド。
…に対し、ウォーリアは真剣に驚きの声を上げた。
「知っているならば何故答えない!?」
「だから儂とお前は敵――」
「ジタンの言う『照れ屋』という現象か!」
「違うわ貴様黙れもう黙れ」
埒が明かん、と、ガーランドは大剣を構える。
「構えろ光の戦士! 儂と貴様は永劫を闘う宿命なのだ!」
「…と言われても…」
ウォーリアは剣を向けられてもそれに応じようとはせず、無表情なまま、くき、と首を傾けた。
…ゴルベーザの弟のような仕草はやめい…。
ガーランドは頭を抱えたくなるのを必死に耐える。
ウォーリアは言った。
「ゴルベーザ…即ちお前の陣営の者に、ティナがモルボルに絡み付かれたところを助けられたと聞いたので、礼に来ただけなのだが…」
…あ ン の 野 郎…!
「そんな私に何故お前が猛るのかが全く解らない」
「だーかーらー!」
がっしゃんがっしゃん。
派手な音を立てて地団駄を踏むガーランド。
元王国騎士、現混沌陣営最強の男の威厳はどこへ行った。
「儂と貴様は永劫を闘う宿命なのだ! と! 言っただろう! さっき!」
「時と場合を――」
「貴様に言われたくないわ!!」
時と場合を考えずに礼を尽くそうとするウォーリアを指差してガーランドは怒鳴った。
「例え敵であれ礼は尽くすべきだろう。という訳で助かった。感謝する」
「ええい、もう良いわ!」
ガーランドは青筋の浮いた手でウォーリアを指差して怒鳴った。
「今日こそ貴様のその澄ました鉄面皮引き攣らせて蒼白にしてやろうぞ!」
「特に澄ましているつもりは――」
「図体の割に無垢を曝しおって喧しい!」
何も知らないからこそ、呆けだろうが突っ込みだろうが、素かつ全力で殺しにかかるウォーリア。
…舐めて掛かれば大火傷である。
ものの見事に精神に大火傷を負ったガーランドは、強引に会話を切ってウォーリアに躍り掛かった――。


――かくて…。
形振り構わずウォーリアが鬱陶しいと、それだけで無茶苦茶に大剣をぶん回したガーランドは…。
ウォーリア相手に一応、勝利した。
…ウォーリアが矢鱈に神殿を破壊するガーランドの取扱いに困った、と言った方が正しいかもしれない。
とにかく、ぜえぜえと肩で息をするガーランドの足元に、ウォーリアは倒れていた。
取り敢えず反撃等されないように、ウォーリアのマントを引き破いて、まだ残っていた柱に破いたそのマントを回し、ウォーリアの腕を奴の頭上に上げて手首を柱にふん縛っておく。
ウォーリアは再び無表情で、くき、と首を傾けた。
…だからその仕草は止めろと言っているだろうが声に出して言ってないけれど!
何なのだ流行りか!
ああもうここまでしても無表情か!!
ぜえぜえと相変わらず肩で息をするガーランドに、ウォーリアは頭上で手を戒められたまま、無表情で首を傾げ、見上げる。
「…本当に礼に来ただけなんだが…。と言うより、敗れた私よりも呼吸が上がっている様子だが…。大丈夫か?」
あああああああもうこいつはああああっ!!
ガーランドはついに頭を抱えた。
どーすればこいつのこの鉄面皮を剥がせると言うのだ!
そしてどーしたら敵陣の将に礼とか言いに来なくなるのだ!!
つか何で儂がこんな理不尽に疲れなければならんのだ!!
それこそ理不尽――
…ガーランドは、はた、と顔を上げる。
待てよ…理不尽…?
頭を抱えた体勢から、何やら考え込むガーランドを、ウォーリアは相も変わらず静かに、しかし訳が解らないと言った体で見上げていた。
「…ガーランド」
ややあって。
ウォーリアがガーランドを呼ぶ。
「…お前の考えていることは解らんが、私は本当にただ単に礼を言いに来ただけなのだが…流石にこの扱いは理不尽だろう」
「…ふ」
「ガーランド?」
「ふ、はは…ぬはははははははははっ!!」
何か思い付いたらしい。
ガーランドが沈黙から一転して高笑いを上げた。
そうして、足元のウォーリアにびしぃっと指を突き付ける。
「そうとも! こんな世界で敵対をしているのだから、敵方の扱いは理不尽と相場は決まっておる! そんな訳で! 敵陣の将にのこのこ礼なんぞ言いに来た貴様に酷いことして儂の敵っぽい卑劣さを演出するべく! 今のそんな体勢の貴様の鎧を砕いて鎧下衣をちょっとヤな感じに引き裂いたあと、具足も片方だけ脱がせて貴様の仲間にあらぬ勘違いをさせてやる!」
「っお前馬鹿だろう!?」
流石にこれにはウォーリアも顔色と表情を変えた。
「ふはははは! やっと血相を変えおったな! それでこそやりがいがあるというものよ!」
「おまっ…本当に馬鹿かお前は! というよりお前自分がそんなでいいのか!?」
「聞こえぬ!」
「聞け! というより聞いてくれ頼むから! ちょ、待て、私に触るな!!」 



…そんな訳で。
数刻後には、頭上で手首を縛られたまま、鎧を砕かれ鎧下衣をヤな感じに破かれ、具足も片方外されてかなり卑猥な格好になったウォーリアの傍らにガーランドは佇んでいた。
流石に居心地悪そうなウォーリアはガーランドを見上げて言ってくる。
「…楽しいか?」
「いやあまり」
間髪入れずにガーランドは返答した。
「…儂はダークサイドに落ちても基本的にノーマルだからな。貴様の様などこからどう見ても男にしか見えんガタイの奴を剥いたところで特に何も」
…と言うより。と。
ガーランドは続ける。
「…自分でやったことながら、儂は今こーゆーことをした自分に若干引いておる」
「解けこの手を! 帰る!」
「いやそれは。儂の卑劣さを強調する為に貴様の仲間にあらぬ勘違いをしてもらわねばならぬ訳だし」
「自分でノーマルと言ったその口で勘違いされたいと抜かすかお前は!」
ウォーリアのこめかみに若干青筋が浮く。
…取り敢えず。こやつの鉄面皮を剥がすことに成功したな。
ガーランドは、自分に引いていることはさておき気分が良く、冑の下で口角を上げた。
さてそうこうする内に、敵方の将に礼を言いに行くとか言ってホームを出てしまった型破りな自軍の将が、礼を言いに行ったにしては帰りが遅いと、秩序勢が総出で迎えに来たりする。
…当然、ヤバめな格好のウォーリアと、側に佇むガーランドと鉢合わせる。
秩序の面々の顔があからさまに引き攣った。
…うわぁ…。
とでも言いたげな表情で、ウォーリアは皆から顔を背ける。
…この状況でそういう反応は不味いよ、ウォーリア。
「…よし!」
「『よし!』じゃない!!」
「では儂はこれで」
「おまっ…! このっ、これっ…! お前それでも混沌の将か!!」
そんなウォーリアの文句を半ば聞き流してガーランドはその場を去り…。
…………………。
駆け寄った仲間達に囲まれて、ウォーリアはひじょーに気まずい思いをする羽目になった。
何せ皆、戒められた手を解いてくれたり、鎧下衣を破かれた自分にマントを着せてくれたり、身体のあちこちに負った怪我を治してくれたりしているが、無表情で一切無言ときたもんだ。
…絶対勘違いしている。
いや私は何もされてないから…。
そんな思いで口を開きかけたウォーリアの前で、ティナが無表情な顔を上げた。
ガーランドが姿を消した方向へ、ティナは視線を投げていて。
…ティナが、自分の胸の高さにまで上げた片手が視界に入って、今度はウォーリアがあからさまに表情を引き攣らせた。
「…… ぶ っ 殺 す ……」
手だけが若干トランスしていて、長く伸びた爪と爪の間に尋常じゃない電圧の電気が爆ぜている。
…俗に言う、ガチギレというやつである。
「…いや、ティナ、私は別に――」
「……ああ。ぶっ殺す…」
ウォーリアの言葉を半ば殺す形でキレたティナの言葉に乗ったのは、こともあろうか通常穏健派で通っているセシルだったり。
「…絶対殺す。最低でも殺す。間違っても殺す。つか殺す…」
普段からウォーリアを表だって敬愛しているフリオニールは、顔すら上げないまま繰り返しそう呟いていた。
…完全に瞳孔が開いている。
つか怖い。
「皆何怒ってるの僕全然解んないやまだ子供だしね取り敢えずウォーリアは怪我をしているみたいだし安全なホームへ連れて帰るのが今の僕の役目だよね」
「…そうだな。お前は何も知らない。何も解らない。だからウォーリアを連れて帰って回復の続きをしていてくれ。俺達には少し用事が出来たみたいだ」
「うんスコール解ったよそれにしても急に用事が出来ちゃうなんて不思議だよねいったい何があったんだろう兎に角ウォーリア帰りましょうかテレポ唱えますね帰りましょー」
完全に棒読みのオニオンと、完全に座った目をしたスコールに、ウォーリアは改めて顔を蒼白にした。
確かにガーランドの「勘違いをさせる」という目論見は成功したかもしれないが、流石にこれは危険だろう!
お前本気で殺されるぞガーランド!
言うのを忘れていたが、混沌勢と違って我等秩序は仲間同士の繋がりがかなり強固なんだからな!
いやのろけではない! 断じて!
「いやちょっと待ってくれ皆! 違うんだ、私は――!」
申し開きをしようとしたウォーリアはしかし、言葉の途中でオニオンのテレポに巻き込まれて退場した。
「…嬲り殺しだ」
『…了解』
混沌の陣営。カオスの神殿にて。
ダークサイド:クラウドの号に、最早秩序とは言えない表情となった秩序勢が応じて行軍を開始した。







夜。
ウォーリアは痛む眉間を押さえつつ、カオスの神殿へ向かっていた。
利手にエリクサーの瓶を携え。
当初、出掛けることは皆からこぞって反対されたが、現状を分析した結果、「…1人になりたい」なんぞと呟いたところ、あっさりと外出を許可された。
行き先をトレースもされていない。
…この勘違いを解くにはどうしたらいい?
というか何をやりたいのだガーランド。
どーすればお前は救われる? というかお前は一体何なのだ。
…眉間が痛む原因である。
さて、カオスの神殿に着いてみれば、屋上っぽいところでぼろ雑巾みたいになったガーランドが、仰向けに倒れたまま、ひしゃげた冑の下でひたすら含み笑いをしていた。
…はああぁぁぁ…。と…。
ウォーリアは長い長い溜息を吐いて、持ってきた瓶の栓を抜き、ガーランドにだぱだぱと中身を掛け始める。
「…のう、光の戦士よ」
ふと、含み笑いを止めたガーランドが、ウォーリアに話し掛けてきた。
「儂は戦いには破れたが、勝負には勝ったと思わんか?」
「…知るものか。大体何の勝負だ…」
「『勘違いをさせる』という儂の目論見は成功したろう?」
「…成功させてどうする」
「いや別に何も。成功させることが目的だったのだし」
「あああもうお前という奴は…」
「貴様の鉄面皮を剥がすことも目的だった故、1度に2つも目的を達成した儂は、誰がどう見ても勝者であろうよ」
「知るものか! この襤褸雑巾が!」
罵声を浴びせながらも、だぱぱぱぱ〜、と、ウォーリアはガーランドに薬を浴びせる。
その薬が掛けられる音に被せて、再びガーランドの満足げな含み笑いが開始されて。
…そして瓶の中身が全て無くなったところで…つまりガーランドが全回復したところで…再び含み笑いが途切れた。
「…のう、光の戦士よ」
「…何だ」
「…儂らは一体何なのだろうな」
「それこそ知るものか!!」
終に激昂したウォーリアがガーランドの顔面に投げつけた空のエリクサーの瓶が、ひしゃげた冑の額に当たってカンッと小気味良い音がした。


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