2 | ナノ
「何で俺を誘ってくれないんスか〜」
なんて、ホームが見えなくなるまでティーダがくっついて来てたっけ。
特に理由はないから、そのままそれを告げて、「次は一緒に行こうぜ」なんて言って帰らせた。
それから…なんだっけ。
そうだ、クリスタルワールドに行って、ロゼッタ石他かなりの貴重品を数多く見付けて、自分の勘も捨てたものではないと思った。
「ジタンて…凄いよね」というセシルの称賛に「当然!」等と調子付いて。
そして…そう、その後。
帰り足で…ここに…立ち寄ったのだ。

セシルには止められた。
1日に数ヶ所を巡るのは良くない、と。
それを押し通したのは自分だ。
絶対良いものがあるって! と、断固として引かずに。
良い予感は続いていたし、セシルに対する意地もあったが故、セシルの言い分が正しいことを理解していながら、押し通した。

暗黒、という。
闇を扱うセシルの技は、体力の消耗が半端無い、と、彼の技をものまねして使っていたバッツから聞いたことがある。
「使い勝手が良いからつい使っちまうんだけどさ。あれは連打できねぇわ。短時間でへばる」
とはバッツの弁。
あれを連打して、しかも長期戦得意なセシルはすげぇよ。と。
意地を張るのも無意味な気がしていたが、その、体力の半端無い彼に対して疲れた風を見せたくない。
もっとも、暗黒騎士の姿では速度が出ないらしいので、自分と行動している今は、遅れることのないように常に白い姿のままだったのだが。
しかし…あんな細く見える身体の、どこにそんな体力を内蔵しているのやら。
若干の嫉妬もあった。…と思う。

とまれ、あくまで星の体内へ行くことに難色を示す彼に焦れたジタンは、彼の手の届かない範囲まで引いた瞬間、「置いてっちゃうぜ〜」と、セシルに背を向けて走りだしてしまったのだ。
こうなれば、セシルの性格上、自分を放っては置かないだろう、と。
案の定、仕方無くなのだろうが、ジタンを追って地を蹴り、宙を飛び始めたセシルを目の端に確認したジタンは、内心ガッツポーズをした。

…思えば、これが決定的にまずかった。
セシルに追い付かれないよう、ジタンは星の体内の最深部まで降りていった。
「ジタン」と。
セシルの止める声は聞こえていた。
が、最深部に何か光るものを目で捉えてしまった以上、盗賊として止まれなかった。
…最深部に光っていたのは、いつからそこにあったのか、本日二つ目になるロゼッタ石で。
思わず口笛を吹く。
この世界で、これらは貴重だ。
やはり自分の勘は捨てたものではない、と思う。
後から着いて来ているであろうセシルに見せてやろうと思ったジタンが、
「ほ〜らな?」
満面の笑みで振り返ろうとするのと、
「ジタン!」
セシルがらしくないきつい調子で彼を呼ぶのはほぼ同時だった。
青白い閃光が首筋を擦り、ジタンは振り返った姿のまま硬直する。
自分の数歩先に居るセシル。
その手に握られた青く細い剣の中程から、細く煙が上がっていて。
恐らく、寸でのところで閃光を弾き、軌道を逸らしてくれたのだろう。
彼は剣を一降りして、煙を払った。
ひゅ…と。空気の切れる音がした。
…逸らしてさえ、擦ったのか。
今更、痛みだした首筋の傷に、ジタンはぞっとした。
「…擦ったのかい?」
聞き慣れない、低いセシルの声に、今のこの状況がとてつもなくヤバいのだと直感する。
「…ちょい、な」
「済まない。完全に逸らせなかった」
「…いや」
ジタンはロゼッタ石をポーチに収め、両の太股の鞘から得物を引き抜いた。
視界の至る所に、イミテーションと思しき光がちらちらと光っていた。
「この状況、謝るのは俺の方だろ」
ジタンの額に汗が滲みだす。
「うん」
セシルは短く、応えた。
「無事に帰れたら、ウォーリアに叱って貰うから」
ジタンは無理に苦笑した。
「じゃあ何が何でも帰らないとな」

何時から敵の存在に気付いていたか、と問えば、最深部が見え始めた時だと言う。
…だから彼は自分を何度も呼んだのだ。
危険だと、止める為に。
無視した自分に腹が立った。
意地を張った自分にも。
これは本格的にウォーリアに怒鳴って貰わねばなるまい。
「ジタン、気を付けて」
セシルが言った。
「囲まれている。先刻、ジタンを狙ったフリオニールを含め、ウォーリア、ジタンのイミテーション3体はアクセサリで特殊強化されている様だ」
…では、先程自分の首筋を擦ったのは、フリオニールの矢か。
特強イミテーションの多さに、今更の様に尾が総毛立った。




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