「違うなって、何が違う思たんですか?」
「…俺に彼女いたの知ってるやろ?財前と連絡取れんくなっても何人かおったんやけど、どうもな、しっくりこんくて…」

 あんまり聞きたい話ではない。自然に表情が重くなってしまう。

「初めは楽しいんやけど、すぐにしんどくなんねん。特にセックスは苦痛でしかなかったわ」

「…それで男ですか?安易すぎやしません?」
「中・高と部活で男ばっかと何年か過ごしたやろ?男同士でつるんでる方がなんか落ち着くねん。でな、飲み会があった時にちょっとそんな雰囲気になってん。で、嫌悪感ってのも感じひんかったし、そこからかな、徐々にって感じで」

 ハマってしまうとなかなか抜け出せなくなるものだ。新たな刺激が病みつきになるのもわからなくはない。

「でな、なんか気になるタイプがいつも同じやねん」

 財前を見つめる謙也の目が真剣味を帯びる。鼓動が早まるのを感じた。

「…いつもな、財前みたいなタイプが気になんねん」

 これはどういう風に捉えたらいいのか?
 好きと言われた訳ではないが、どう考えても好きと言われているようにしか思えない。

「…謙也さん、俺がいつゲイって自覚したか知りたいんですよね?」

 謙也の告白もどきをなかったかのように財前は話始めた。

「謙也さん達が高校卒業した時の部活の追い出し会あったやないですか。あん時謙也さん、めっちゃ酔っぱらったの覚えてますか?」

 財前と謙也は同じ高校に通っていた。もちろん部活も同様。
 追い出し会は謙也の父親が仕事で使っているマンションで行われた。そして咎める者がいない中、ハメを外した一部の部員がこっそりアルコールを持ち込んでの大宴会になったのだ。

「……あん時な〜。正直飲みすぎて記憶にない」

 思い出そうとしても、すっぽり記憶が抜け落ちていて何があったのか覚えていない。

「もうこの状況なんで言いますが、あん時酔っぱらった謙也さんにベロチューされて抜かされました」
「は?」

 財前の言葉に謙也はフリーズした。

「俺、ファーストキスやったんですよね。しかも酒臭いし、ヌメヌメするし。下着ん中に手突っ込まれた時は頭ん中真っ白になりました」

 財前は淡々と語るが、相変わらず謙也は硬直したままだ。

「で、無理やり抜かされて、恥ずかしさはあったけど嫌やなかったんですよ」
「……………」
「それがきっかけやないですかね?」
「………せい?」
「はい?」
「…俺のせいか?財前がゲイになったん?」
「いや、謙也さんのせいやないですよ。きっかけってだけで。それまで女と付き合うの面倒くさいって思てたけどそん時にはっきりしたんです、あぁ、自分はゲイやったんかもって」

 そして謙也の事を好きだったって事も。

 ブースが微妙な空気に包まれる。なんとなく空気が重い。
 何か話さないといけないと思うが言葉が出てこない。しばらくそんな状況だったが、先に動いたのは謙也だった。 謙也は財前の身体をぎゅっと抱き込んできたと思ったら耳元で囁くように話し始めた。

「俺な、無自覚やったと思うんやが、ずっと財前のこと好きやったと思う。そんで現在進行形で好きや…」

 好きと言う言葉に身体が震える。
 行き場のなくなっていた両腕を謙也の背中に回し抱き返す。なんだかどこの処女だと言わんばかりの行動に思わず苦笑してしまう。店長のBL好きを馬鹿に出来ない。

「…俺も多分謙也さんの事好きです」

 だから連絡を絶った。
 己の自覚した気持ちを知られたくなかったから。知られて嫌われたくなかったから。

「…多分なんかい」
「…ん!」

 そう言うと耳朶を甘噛みされた。
 背筋にゾクリとした快感が走り抜け、堪えきれない声が漏れる。片手が財前の腰を撫でると前に移動し下腹部をジーンズの上から柔々と揉みしだいた。
 自分でも徐々に硬さを持つのを感じる。しかも謙也のこの手の動きは…。

「…謙也さん、あんた慣れすぎちゃうん?」
「ん?慣れてへんって…。それよりな、早よ言うて」

 なにを?そして息を吹きかけるな。
 男とは即物的な生き物でつくづく快感に弱く溺れやすいと思う。今の自分がまさにそうだ。
 好きな相手から受ける刺激だけに余計に興奮する。

「財前が逃げてた理由、…教えてや」

 逃げてた理由はただ一つ。

「……謙也さんが好きや」
「…今も?」
「……ずっと好きや。彼氏おった時も謙也さんしか好きやなかった」

 半分泣きたい気持ちになる。
 謙也の唇が目尻から頬へ降りていくのを感じて、泣きたい気持ちではなく、すでに泣いていたと理解した。
 そして謙也の唇が財前の唇を塞ぐ。
 望んだ現実ではあるが、これでは店長の大好きなBL的展開ではないかと考えている冷静な自分もいた。

 想いが通じ合えば行為は進むしかない。
 軽く触れただけの唇は急速に激しさを増す。舌と唾液が奏でる音は、他からも聞こえてくるので単なるBGMの一部で誰も気にする者はいなかった。
 吸い付いたり絡め合ったり、本能のまま溺れていく。離れる際には名残惜しげに下唇を軽く食まれた。

「ここってどこまでOKなん?」

 互いに興奮しているので、出来るものなら最後までしたいと言うのが本音だ。

「まぁ、本番NGってわけやないですけど、うちシャワーないんで…」

 ベタ付く身体をおしぼりだけで拭うのは正直嫌だ。

「…んじゃ、しゃぶっていい?」
「ん…」

 首筋を舐められながら聞かれる。
 興奮し過ぎた身体は些細な刺激にも敏感になっていた。
 ベルトを外され、ファスナーを下ろされると窮屈そうに下着を持ち上げる分身が現れる。
 先走りで下着に染みが出来ていた。そこに唇を寄せて口付ける。形を確認するように唇を開いて挟むと更に度量を増すのを感じた。







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