そのままの姿勢で下着に両手を掛けずりおろそうとすると財前に両頬を掴まれて持ち上げられた。

「ひきなひ、なひしゅるんれすか?(いきなり何するんですか?)」
「これ、ちゃんと付けてしてください」

 財前が出してきたのは正方形の袋に入ったおなじみの物。スキンだ。

「こっちの人間ならわかりますよね?」

 セックスに安全性を求めるのはゲイとして当然。例え相手が昔から知っている人間であっても。大切に想うなら尚のこと。

「俺が付けてええの?」
「…お願いします」

 謙也はスキンを開けると、下着から財前の陰茎を取り出して装着した。

「なんか謙也さん慣れとるし、もっとエロい付け方すると思たけど普通やんな……んっ!」
「…誰と比べとるんや?」

 根元を強く握られて痛みを感じたが、謙也の熱の籠もった声が耳元でするとなんだか気持ちいい。決して自分はマゾ気質ではなかったはずなのに。

「経験人数知ったら嫉妬しそうやわ」

 意地の悪い顔してそんなクサい台詞をはけるなんて…なんだかおかしくなる。謙也さんて、こんな人やったっけ?
 そして己にもモヤモヤとした嫌な思いがこみ上げてくる。これが独占欲ってやつだろうか?

「…それはこっちも同じや」
「なら、これからはマンツーマンでお願いします…」

 そう言うと謙也は顔を下げて反り返った財前の陰茎を口に含んだ。
 スキン越しとはいえ口の中の熱は伝わってきた。上下に唇を動かして刺激を与えてくる。盛り上がった裏筋を尖らせた舌で下からなぞるように舐め上げると財前の腰が揺れ後ろに退こうとしているのがわかり、謙也は逃げられないように腕で腰をしっかり抑えて行為に没頭する。そして亀頭部分を口に含み吸い上げた。

「んっ!」 

 密室ではないので声を出したくないのか、噛み締めて堪えるが、その姿は興奮材料にしかならない。
 亀頭を含みながら頭をピストン運動させる。締め付けながら動かすのは余程気持ちいいのか、財前は謙也の頭を両手で必死で掴み震えている。
 それが可愛くてたまらない。
 男同士だからわかる相手の射精のタイミング、そろそろだと謙也はなんとなく感じ取っていた。
 財前のイク瞬間の表情を見たくて陰茎から唇を離すと涎が伝う顎を舌で辿り、もう一度深い口付けを交わす。
 手は陰茎を握り、カリ首の辺りを重点的に扱いた。

「ん…、んふっ、んあ…」

 親指で亀頭の中心を広げるように摩擦すると財前の身体が震え、勢いよくスキンに熱い飛沫が放たれる。

「くっ… 、ふ…ぅん」

 キスをしながら眺めていた表情が変わった。
 一瞬目を見開いて空を見つめたがすぐに頬に赤味が差し、そこでイッたというのがわかった。
 こんなに胸を締め付けるイキ顔は初めてかも知れない。

 全てを吐き出すとスキンを取り除く。
 溢れた精液が陰茎に纏わりつき、それをおしぼりで拭って綺麗にしてやる。
 なにげに手に付いた精液を舐めると、顔を真っ赤にした財前が手を掴んできた。

「あかんっ、何考えてんのや」
「いや、財前のやし、構へんやん?」
「そういう問題やなくて…」

 口淫で病気感染する確率は低いが、安全に越した事はない。そんな財前の思いを汲んでか、謙也がこう切り替えしてきた。

「なぁ、財前。これからいっぱい二人でして、毎年二人で検査しにいこうか」

 ある意味最強の殺し文句だ。

「…俺でいいんですか?」
「お前しかおらんやろ?」

 何変なことを聞いているのだと言わんばかりに不思議な顔をされた。

「で、俺もな、イキたいんやけど…ここや無理や。出すだけや我慢出来ん。やれるとこ行かへん?」

 軽いキスを顔中に落としながら聞かれる。こちらも一回出しただけじゃ身体の火照りが治まらない。

「…いいですよ」

 そう答えると身支度を整えてブースを出る。


 荷物を取りにスタッフルームに行くとキラキラとした目で店長が見つめてきた。 話をしたら終わらないような気がしたので無視して出て行こうとしたら手を掴まれて、ある物を握らされた。
 スキン一箱。
 それを見て引きつる財前とは逆に満面の笑みで店長は彼を追い出した。
 次のバイトの日が怖い。
 店長のBLドリームに一晩付き合わされそうな予感がする。
 カウンターにいた先輩スタッフにもお幸せに〜とニヤニヤ顔で声を掛けられて恥ずかしく思いながらも、謙也が繋いできた手を強く握り返してしまったのは仕方ないと思う。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -