Incubus dream


真夏の熱帯夜、一人暮らしの部屋で爆睡している彼の頭上。天井近くの空中をふよふよと漂いながら見下ろしたのは、漆黒の髪と黒檀の瞳を持つ美少女。
可憐な見た目とは裏腹に、眠る人物を見下ろすその瞳は欲望に濡れている。

「ふふ…、みぃつけた、」

至極楽しげに呟きゆっくりと下降する。そして彼の上に跨ると、その華奢な身体からは想像も出来ないほど強い力で四肢を押さえ込む。
眠りながらも違和感を覚えたのか、身動ぎする彼に覆い被さり、紅く濡れた唇を寄せ重ねた。
そうしてそのまま、夢の中へと潜り込む。
そう、少女は夢魔──サキュバス。






「…ん?」
「ふふ。こんばんは、謙也さん」
「……んぁ?」

夢、だと何となく認識した。
だって有り得ない、どこかの貴族の宮殿みたいな室内に天蓋付きのベッド。そこに横たわった自分の前には、透き通るように白い肌を惜しげもなく晒した文句なしの美少女なのだから。
そして同時に愕然ともした。こんな夢を見るほど、自分は経済的にも性的にも不自由しているのか、と。

「…誰?」
「ひかる、そう呼んでくれたらええです」
「ひかる…」

勿論ひかるに見覚えはない。
パチパチと瞬きを繰り返していると、またふふ、と軽い笑い声が聞こえた。そもそも好みど真ん中の美少女が全裸でいるのに、目を逸らさないなんて、普段の自分じゃ有り得ない。

「えーっと…」
「…そんなんより、ええコトしましょ。謙也さん、うちに種付けして?」

する、と細い指が性器に絡み、そこで初めて謙也は自分も全裸なのに気が付いた。

「えっ?や、あの、ちょ…っ、」

うろたえる謙也をよそに、ひかるは指絡めた性器に吸い付く。

「ッ…!」
「ああ…やっぱり思った通りや、謙也さんの味、めっちゃ好み…」

恍惚とした表情で口に含み舌を絡ませる。清楚な見た目とは裏腹に、その動きは巧みだった。
幾度か吸われ、小さな唇でストロークされると謙也の限界が近付いていく。

「んッ…は、あかん、も、」
「ふ、は、ええです、飲ませて…」

先端を強く吸われた瞬間、謙也は腰を震わせてひかるの咥内に精を吐き出した。

「っ…、わわわ!ちょ、堪忍っ…!」

吐精の余韻に浸る暇なく女の子の咥内に射精してしまったと焦る謙也に、ひかるは喉を鳴らし妖艶に笑った。

「…ご馳走さま。ね、次はこっちにください、」

一度放ち普通なら萎えるはずの棹は未だ硬度を保っている。今まで付き合った彼女にすら、こんなことはなかったのに。

「ちょちょちょ、待って!待って!…ひかるちゃん、何なんっ?どうなっとんの?」

今にも結合しそうな身体に手を伸ばし、落とされようとしていた腰を掴みながら謙也は必死の形相で問い掛ける。

「…もう、何ですの」
「いやいやいやいや!何でいきなりっ…」
「ああ…。やってうち、夢魔やから」
「…夢魔?……っ!!」

思わずきょとんとした謙也の隙をつき、一気に腰を下ろすひかる。

「ぅ、あ…っ」
「はあっ…、やっぱり謙也さん、きもちい…っ」

戸惑う謙也をよそに、ひかるは腰を揺らし始めた。熱く絡み付く体内の粘膜は、今まで経験したどの女よりも快感をもたらしてくれる。

「あっあ、謙也さんっ…も、いくっ、」
「っ、く…やば、俺もっ…」

言いようのない快感に腰を掴んだまま、いつしか下から突き上げだした謙也にひかるはあられもなく喘いだ。

「あ、あ、あ、いく、…っあああ!」

がくり、と震えた身体の奥深く目掛けて謙也も2度目の吐精を果たした。
身体中に余韻が回るような、最高の快感。息を乱したままの謙也に、妖艶な笑みを浮かべたひかるが目を向ける。

「…まだ。もっと、ください」
「…え?ちょ、勘弁してや!」

夢の中とは言え、放出した後の倦怠感は実にリアルで。ねだるひかるに慌てながらも、また揺らされた腰にあっさり陥落してしまった。







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