1231(ちと誕)





・ちと光未来(光高三)
・悲恋ご注意です











高校卒業後、俺は九州に戻った。大好きだった元恋人とは、それっきり会ってない。

別れを告げたのは、俺から。俺は彼を駄目にすると思った。ちゃんと、女の子と幸せにならなきゃいけん。絶対次は祝福される恋愛を、彼はするべきやと思ったから。


そんな彼…財前光から、いきなり一通のメールが届いた。今日は俺の誕生日なわけで。





『いきなりメールしてすみません。千歳先輩、誕生日おめでとうございます。』


別れようと言い出したのは、俺から。それに俺は何回も彼を傷つけたはずなのに。
(うれしくて、仕方ない)




『千歳先輩、ちゃんと元気でやってますか?九州であんたが頑張っとるか心配です。』



本当は今日、実は一人で大阪に来とる。別に光くんに会う気はない。約束だってしてないし、元テニス部員とすら会う予定もない。一月に同窓会があるらしいから同じ高校やったユウジくんには年明けそっち行くばい〜って言っといたけど。ただ、俺はまだ大人になりきれないから、誕生日くらいは光くんを近くに感じたかったのかもしれんばいね。

(年齢だけは立派に大人なったっちゃけどね、)




『俺はあんたと別れて、いっぱいいっぱい泣きました。死んでもええって思ったことやってあるし、あんたのことも恨みました。』


そう、それでいい。それで少しでも俺を記憶の片隅に置いてよ。ねぇ?




『でも、千歳先輩ってめちゃめちゃ優しいんですよね。きっと俺が幸せになることばっか考えてくれてた。俺のことばっかり、考えてくれてた。一番辛いのは千歳先輩なんやって、そんな当たり前なことに、今更気がついたんです』


光くん、違う。俺は優しくなんかないよ。光くんを傷つけて一人で泣かせて、最低な男たい。
…ばってん、光くんのことばっか考えてたのは、本当ばい。




『やから俺は幸せにならなきゃあかんって思いました。今、付き合うとる彼女がいます。一つ年上の綺麗で優しい人です。俺がまだ忘れられん人がおるって言っても、それでもええよって言うてくれました。
俺はきっと、この人をこれからどんどん好きになるんやと思います。大事にしたいなって思います。一緒に幸せになれたらええって思います。きっともう、千歳先輩を思って泣く日ももうすぐ無くなります。』


うん、それでよか。それが光くんが、歩むべき道たい。それでいつか、結婚して、お父さんになって、幸せになるったい。










『せやけど、俺はまだ全てを割り切れるくらい大人じゃないから、まだどこかで千歳先輩に縋ってたいねん。せやから、俺らがちゃんと大人になるまでは、』













「千歳先輩!」

(『千歳先輩の誕生日くらいは、一緒にいましょ』)






「ひ、光くん?!なんでここに…」
「そりゃこっちの台詞ですわ。まぁあんたよぉこの公園来とったし、ユウジ先輩が同窓会あるでーって教えてくれはったし」
「でも、同窓会なんて年明けやけん…」
「千歳先輩が考えとることが俺に分からんとでも思ったんですか?」




ここに来れば会えるって思ったんやもん、て言った光くんはもう涙声で、思わず俺は強く強く抱きしめてしまった。



「千歳先輩、誕生日おめでと」
「ありがと」
「生まれてきてくれて、本間おおきに」
「うん」
「……俺のこと、今日だけは離したらあかんで」







もうすぐ、年が明ける。そうしたら、俺たちは離れなきゃいけないけど、それでいいと思った。光くんはきちんと前に進んでる。でもきっと彼は俺を忘れないから。綺麗な思い出になれる、自信がついたから。




「勘忍、プレゼント、用意してへんかったっすわ」なんて君は言ったけど、もう貰ったよ。

君が俺にくれた最後のプレゼントは、来年への抱負。



それは、『光くんから、卒業すること』。






HAPPY BIRTHDAY CHITOSE!




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