無敵中毒者(アク光)
ひょんなことから出会い、気が付いたら脳内のほとんどを占めているこいつ、財前光。
｢おいてめぇ。何食ってやがる｣
｢あー仁くんやー。おかえりー｣
｢おかえりじゃねえ。それだよそれ｣
｢モンブランやけど？｣
｢そんなこと分かってんだよ｣
｢やってゆうきがくれたんやもん｣
いつの間に人の母親まで…くそ。仕方ないから俺は煙草に火を点ける。
｢なぁー仁くん｣
｢なんだよ｣
｢俺にも吸わせてぇな、煙草｣
｢断る｣
｢なんでやねん｣
｢てめぇは煙草って柄じゃねぇだろ｣
｢意味分からんしー｣
｢それにお前はスポーツやってる人間だろうが｣
｢仁くんやってやっとるやん、テニス｣
｢俺はテニスは捨てた｣
｢嘘吐け、よう捨てきらんくせに｣
こいつ、口だけは上手くて困る(強く言い返せねぇ俺も俺だけど)。
｢これ、一回やったら辞めれなくなんだよ。お前んとこのチビが泣くぞ｣
｢あー…それは困るかもしれへんなぁ…｣
｢だからてめぇはこれで我慢しとけ｣
俺は我が儘な恋人の口を塞ぐ。そいつはというと俺の舌を味わうように絡めてくる。こいつ極度の甘党の癖して、苦いだろうに。
｢なぁ仁くん、俺煙草やっぱ無理やわ｣
｢あぁ｣
｢俺絶対辞めれへんようになる。仁くんとのにっがいキスでさえ一生辞めれなそうやのに…やー煙草ってすごいわ｣
｢は？｣
｢なぁ仁くん、ちゅー、もっかい｣
こいつ、財前光は…煙草のニコチンだっけか？そんな成分よりもずっとずっと中毒性がある。俺は煙草なんてその気になれば辞めれんだよ。でも、こいつだけは無理だ。辞めれそうにねえ。
さっきまでモンブラン食ってたこいつとさっきまで煙草吸ってた俺のキスは決して美味くなんかないけど。
なんでか知らねぇが、止まんねぇ。
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