硝子細工のように(拍手)





「謙也さんの阿保!!あんたなんか大っ嫌いや!死んでまえ!!」


ばっちーん。光におもいっきりぶん殴られて、死ね的なこと言われた。呆気にとられとったら光は走って行ってしまって。


白石に「謙也!何ぼけっとしとんねん!はよ追い掛けろや!!」って言われてはっとした。自慢の俊足で光を追い掛けて、そこで見たのは。
千歳に抱き着いて、小春とユウジから頭撫でられて、わんわん号泣しとる光やった。


なんで?俺、なんかしたんか?


光は結局その日早退(どうやら微熱が出てまったらしい。光は精神状態がすぐ体に出るから)。千歳や小春、ユウジに聞いたら

「謙也くん、そんなこつも分からんとや?」
「自分で考えなさいね」
「謙也お前最っ低やな」

て言われた。千歳怖かった。ぐすん。



俺は銀みたいに大人やないし、小春みたいに頭も良うない。せやからみんなの前であんな風に感情を剥き出しにした光に驚いて、焦りつつも、怒りもやっぱりあった。
なんで思ったこと言うてくれんの?俺ってそんなに信用無いん?なんで千歳に抱き着いたん?叩かれた頬が赤くなることすら怒りを覚えて。


次の日もその次の日も、俺は光との関わりを避けた。朝も迎えに行かんかったし、帰りも別々で帰った。


最近少し視力が落ちたと言ってコンタクトにした、と光は言っとった。せやのに最近なんでか眼鏡かけとる。あー眼鏡光可愛え。何を俺は意地張っとんのやろ。







そんな最悪な俺達のダブルスは、やっぱり最悪やった。動きがちぐはぐで、全っ然楽しない。




「財前!!危ない!!」
その時やった。白石の声が響いて、光は頬をおさえとる。顔面にボール当たったらしい。


「光ちゃん大丈夫?!」
「平気っすわ」
「眼鏡、壊れとるったい」
「別に、家にもう一個あるし気にしとらんです」
「財前、ちょっと冷やしてきなさい。な?」
「……すんません」



俺がぶたれたのなんかより、遥かに痛かったに違いない。それでも俺は動けなくて。
ついに、ユウジがぶちギレた。


「謙也ぁ!!お前ええ加減にせんとぶっ殺すど!!お前財前のこと好きやないんか?!遊びやったんか?!」
「…遊びなわけ、ないやんか……」
「なんでお前財前が最近眼鏡かけとるかお前分かっとんのか!!」



−毎晩毎晩泣きすぎて目ぇパンパンに腫れて、コンタクト入れらへんねんて。

それを聞いたとき、鈍器で殴られたような気持ちやった。


光は俺が告白されとるの何回か目撃してからずっと不安やったらしい。そんでユウジが光に「謙也は萌え系のかわいらしい子が好きやねんでー。巨乳フェチなんやでー」ってからかっとったのも原因やと(ユウジはそれに責任を感じとったみたいや)。そしたら俺の部屋から巨乳特集のエロ本出てきたから光の不安は最高潮になったらしくて。


そういえば。光が「謙也さん、可愛え子が好きなんすか」て言うてきて「なんや光、妬いとんのか?可愛い子?はは、大好きやっちゅーねん!」って返したら殴られたんやった。

俺は最低なことしてしもた。不安で膨れ上がっとった光の心に穴開けてもうた。光の性格はよく分かってるつもりやったのに、深く傷つけてしまった。

俺は光を追い掛けた。








水道のとこに光はおった。ボールが当たったところと瞼が真っ赤に腫れとった。可愛い奥二重も泣きすぎで完璧に一重になっとった。

それでも光は泣くんや。可愛い顔を歪ませて。あぁごめん、ごめん光…


「ひかる…」
「っ!けん、や、しゃ…」

「ごめん」

光があまりにも辛そうで、目を見て謝ることは出来んかった。

「ひかる、ごめんな。本間にごめん。俺、お前だけが好きやねん」

光はおもいっきし俺に抱き着いて来てくれた。

「朝…っ迎え、来てや…」
「うん」
「帰りも、送っ、て」
「うん」
「昼飯、一緒食べたい…」
「うん」
「謙也さんの、ばか。ぎゅーって、してほしぃ…」

俺も光の背中に手回してやっと抱き合えた。わんわん泣きながら「殴ってごめんなさい。死ねなんて、嘘ですわ、絶対に、絶対に謙也さんは死んじゃいかんのです、」言うた光が可愛くて申し訳なくて、自分は本間最低なやつやと思った。
























「光?どしたん?」
「ごめ、なさ…」

無事仲直りして、光が俺んち来て、寂しさ埋めるように求めあって。幸せでいっぱいなはずやのに光は泣いとる。

「謙也さんがおらんかった時期がつらすぎて、今が幸せなのすら、怖いです」そう言われて、光が寝たらすぐさまエロ本を処分しようと思った。

もう絶対に、泣かさん。やから、許してな。




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