gravitation−万有引力には逆らえない−(蔵ユウ)





・白石がマダオです








「でね、本間にだらしないんですわ、謙也さん。あぁーもううざい!」
「でもそのうざくて要領悪くてうるさくてヘタレな謙也が…」
「部長、俺そこまで言うてへんです」
「財前は好きなんやろ?はよ仲直りしなさい」
「………はい」
「ん、ええ子やね」


俺は長年の夢やった薬剤師になれた。そんな今でも中学時代共にテニスで汗を流した仲間達と繋がっていられることを嬉しく思う。

財前は未だに俺によう懐いてくれとるみたいで可愛い。職場も近いでたまに一緒に昼飯食う。財前が相談なんか愚痴なんか惚気なんか分からん謙也の話をしたりして。


「謙也さんも部長くらいしっかりしとってくれればええのになぁ。本間、羨ましいっすわ、ユウジ先輩」
「はは、かわええこと言うなぁ財前は」


…でもなぁ財前。お前の大好きな白石部長は尊敬出来るような人間ちゃうねんで。






「ただいまぁ〜ユウジぃ〜疲れたぁぁ〜〜」
「くら、おかえり」
「なぁユウジ〜もふもふってしてやぁ」
「あーはいはい」

ユウジはもふもふって俺の頭撫でてぎゅーってしてくれた。うわぁぁ生きてて良かったぁ。

中学時代からずっと付き合っとる謙也や光とは違うて、俺とユウジは高校上がってから付き合い始めた。んで、今は一緒に住んどる。えへへ。ちなみにユウジは被服関係に進みました。


俺はみんなが思っとるような完璧人間ちゃう。一人じゃなーんも出来ん。財前、謙也が俺みたいになったらお前絶対困るで。


家のことは全部全部ユウジがやってくれる。まぁ収入は断然俺のが多いから家賃やら水道代やらは俺が払っとるけど。

仕事から帰るとユウジがもふもふってしてくれて、ご飯出してくれて時々あーんで食べさせてくれて一緒にお風呂入って体と頭洗ってもらって、頭乾かしてもらって耳かきしてもらって歯磨いてもらって爪切ってもらって、そんでまたもふもふしてもらってユウジをぎゅうぎゅうに抱きしめて眠る。

朝は起こされて用意してくれた朝飯食べて服の用意と歯磨きと髪の毛セットしてもらって、荷物も準備してもらって弁当も作ってくれて、いってきますのちゅーして家を出る。そこからはスーパー絶頂完璧人間白石蔵ノ介タイムや。んで仕事終わって帰って…って繰り返し。


ユウジは掃除洗濯皿洗いご飯ゴミ出し全部やってくれる。ええ奥さんやーうふふ。

みんな俺のことお洒落やと思っとるかもしれんけどちゃうで。俺家おるときは基本スウェットやしな。お洒落とか分からん。実は俺ダサいんやもん。今までは姉ちゃん、今はユウジにまかせっきりや。

それに趣味とか無いし。昔は趣味も特技もテニスやったけどな!今は家ではひったすらだらだらしとる。休みの日なんて寝とるかユウジとセックスしとるか官能小説書いとるかやし。あれ?ここ笑うとこなんやけど!


それでもユウジはそんな俺を好きやって言うてくれる。

この前大喧嘩してユウジが俺ん家飛び出したとき俺は家のことなんにも出来んかった。部屋もぐちゃぐちゃでろくな飯も食えずにいた俺は薬剤師のくせにぶっ倒れて。ユウジはすごい急いで迎えに来てくれて「白石がおらんようになったら死んでまぅぅ〜!!」って顔真っ赤にして泣いてくれたっけな。


「ユウジ、もふもふってして。あとぎゅーって」
「どしたん?くら今日甘えんぼさんやな」
「うっさい黙ってぎゅーしろ。あと今日はくらちゃんって呼べ」
「あーはいはい、くらちゃーん」
「ユウくーん!」
「ってめ、小春の真似すんな!死なすど!」



今俺の世界からユウジがおらんくなったら、冗談抜きで俺は死ぬと思う。飢え死にもしくは寂し死にで。やからせめてものお礼ってことで、素直になれんユウジの代わりに俺は言いたいこと言ってやろうと思う。持ちつ持たれつってやつ。


「ユウくん」
「なんや」
「好きやで」
「…ふーん」
「あ、照れとる」


磁石のS極とN極が離れられんように、俺とユウジも離れられん。林檎が地面に落ちるように、ユウジは俺に引き寄せられる。
恋って引力みたいやね。


明日からまた完璧な俺で頑張れるように、今夜はおもいっきりもふもふしてもらおう。

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