Bind me!(オサ蔵/オサム誕)





冷静に考えてみて、オサムちゃんは今日で27やろ。っちゅーことは、俺がハタチで32、三十路で42、還暦迎えるころには72やで。うわー笑えん。タバコも酒もやっとるから長生きせぇへんやろし。


「俺、だいぶひとりぼっちやんか」
「ん〜白石、なんか言ったかぁ〜?」
「いや、なんもないで」



オサムちゃんの誕生日は、毎年ちょっとだけ苛々してまう。大好きなオサムちゃんがこの世のに生まれてきてくれたことはホンマに幸せ。やけど少しだけ溜め息をつきたくなるのもホンマの話。


オサムちゃんちでケーキをつつきながらだらだら過ごす。しょっちゅう酒飲んどるくせにあんまり強くなくて、もう赤い顔してフニャフニャや。かわいい。



「白石〜」
「どしたん、オサムちゃん」
「あんな〜、お前もう高校生なるやんかぁ〜」
「せやね。寂し?」
「ん〜めっちゃ寂し〜。せやからこれ以上かわいくならんといてなぁ〜」
「ふは、オサムちゃん今日酔いすぎやで」
「ええやん誕生日なんやからぁ」
「ふは、せやね」
「なぁ、くらのすけぇ」


どき。
なんやねんこのオッサン。かわいいむかつくいとおしい。くそ、たまらん。



「むーっちゃすきやで」



中身が金ちゃんになってもうたみたいに擦り寄って甘えるオサムちゃん。幼児化しとるわこれ。



「オサムちゃん、どないしたん。今日めちゃあまえんぼ」
「ん。先生はずるい大人やからな〜。白石が高校生になって、俺から離れていかんように、白石に依存しとるんをアピールしとるんや。」
「ずるい大人て…ちょっと渡邉さん、計画筒抜けでっせ」
「白石ぃ〜すっきゃで〜」
「人の話聞けっちゅーの」



実は考え方しっかりしとるとこ。いい意味で教師らしくないとこ。部屋の片付けが出来んとこ。寒がりなとこ。パソコン弱いとこ。笑うと目元がくしゃってなるとこ。何気にくしゃみがかわいらしいとこ。要領悪いとこ。ホンマは俺のこと離したくないくせに余裕ぶっとるとこ。俺は気が付いたらオサムちゃんの全部が大切になっとった。オサムちゃんの全てが大好き!なんて言わへん。もちろん嫌いなところもある。せやけど、その嫌いなところも愛おしいなぁって、そんな風に思えるくらいにオサムちゃんに溺れとったんや。



「オサムちゃん、誕生日おめでとう。」
「ん、おおきにな」
今日は俺のこと好きにしてええで。縛るなり目隠しなり好きにして」
「はは、なんでやねん」
「この前そこの棚でSMモノのAV見つけたから先生好きなんちゃうかな〜って」
「あほ〜。アレ前大掃除のとき部室から出てきたやつやで。多分謙也の」
「え」
「んはは、謙也が泣きそうな顔しとったから俺持って帰ってやった!」
「大人げなっ!謙也不憫やわ…」


「せやから俺は、白石のことは縛ったりとかちゃうくて、優しくしたりたいなぁ〜」



嘘つけ。ホンマは俺のこと縛って隠して独り占めしたいくせに。せやけどそのあとしてくれたキスが想像以上に優しかったから、可愛くないこと言うのはやめた。


どう頑張っても歳の差は埋められへん。せやけど、12年の差を上回るくらいずっとずっと一緒におったらそんなの関係無いもんな。



「オサムちゃん、おめでと。これからもずっと俺が祝うから」
「お、白石〜!えらい可愛いこと言うやんか〜」
「なぁ、もっかいくらのすけって呼んでや」
「くらのすけあいしてる!」
「えらい可愛い27歳やな!」



これからも俺はきっと、オサムちゃんに夢中なんやと思う。ずっと大好きでいるんやと思う。オサムちゃんがいつか他の女がええってなったら、譲ってやろうと思ってた。でもそれもやめた。たとえ離れていったとしても何度でも恋に落ちてもらうから、覚悟してや。

俺は幸せが逃げないように、さっきついた溜め息を思い切り吸い込んだ。





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